11.王妃様の来場

「何事です!」


 リリア様が御来場なされました。

 

 私を含め、会場の全員が臣下の礼をとります。


「セシル、この状況を説明しなさい」

「はい、王妃様。今回の件は全て、第一王子であるアレン・クリスティアが勘違いをし、暴走した結果です」

「勘違いですか」

「はい、婚約者が処刑され、いないにも関わらず、勝手に従姉妹であるアリシア・フォード嬢を婚約者と思い込み、冤罪で婚約破棄をしていました。シシリー・シルバー嬢に対しては、王の嫁にしてやると無理矢理付き合おうとした他、女性に対し、暴力を振ろうとしたところ、返り討ちにあった次第です」

「…そうですか」


 そう言って、リリア様がこちらを向きます。


「あなたがアリシア・フォードですね。王族が迷惑をかけました。申し訳ありません」

「いいえ、王妃様が謝るようなことではございません。それに、私もこのような状況にしてしまった、責任があります。ですが、これは私の問題であり、フォード家にはなにとぞ、温情をお願いしたく申し上げます」

「いえ、今回は王族の不始末が原因です。あなた自身にもお咎めがある事はありません」

「ありがとうございます」


 リリア様はやっぱり素晴らしい。瞬時に状況を判断して、結論を出していただける。これが、あのバカの親の方なら、確実に誰が何を言っても、良くて私が処刑されるだけだったでしょう。悪かったら一族どころか、この会場全員とか言い出しそうです。

 まあ、どちらにせよ、彼らにそんな権限はないのですが、うるさいので迷惑なのです。


「うっ、」


 迷惑な人の一人が起きてしまいました。扇が壊れたために、威力が分散されたようです。もう少し眠っていて欲しかったのですが…


「ここは、そうだ、貴様!」

「アレン、おやめなさい」

「うるさい、誰に向かって…」

「誰に向かってうるさいと、あなたは言ったのですか?」

「も、申し訳ありません。ですが!」

「あなたが勘違いし、彼女たちに八つ当たりした事は聞いています。それに、婚約者の件も。あなたに婚約者はいないでしょう」

「しかし、父上が…」

「あなたの父上にそんな権限はありません」

「ですが、父上はこの国の王です。あなたがそこまで言う資格はない!」


 ここにバカがいます。王族の権力の話は他国にも伝えられているぐらい有名な話です。もう、現国王には何も残っていないのです。あっ、王家の血だけはありました。ですが、今はもうセシル様がいらっしゃるので、残っていないのと同じですね。


 けれど、間違った発言というよりは、無知な発言を堂々と言い張るとは、さすがバカ王子です。それにリリア様、今は公の場なので、王妃様と呼ばないといけないところなのですが、よりにもよって、あなたと呼びますか!どれだけ自分が優位だと思っているのか、恐ろしくなります。

 だけど、どういう教育を受けたらそういう発想になるのか、とても不思議です。教育係はセシル様とは別の方なのでしょうか?セシル様はあんなに立派な方なのに…


 もうあの王子に関しては、何も言えなくなります。

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