10.犯人の発見と確保
さて、惨めな王子を見ることができ、先程までの怒りが収まってきました。嘘です。もっと徹底的にやってやりたいです。しかし本当のことを言われ、こっぴどく振られた王子様は怒りまっしぐらのようです。
「どいつも、こいつも俺様を馬鹿にしやがって!」
とうとう本性を出してきました。みなさん、聞きましたか。俺様ですって、俺様。馬鹿にしやがってって、馬鹿じゃないですか。自分のことくらい知っておいて欲しいものです。まったく。
誰も何も言わなかったことが余計に気に障ったようです。誰かに、そんなことはありませんと言って欲しかったのでしょうか?
「この、ふざけやがって」
そう言って、第一王子はシシリー様に殴りかかりに行きます。その際にガチャガチャと音がなっています。あの足音は騎士の人ではないかと思っていたのですが、違ったようです。反省します。
けれども、王子自らシシリー様を突き落として、私に冤罪をふっかけに来たとか、人として終わっていると思うのは、私だけでしょうか?せめて、自作自演でも、押すのは誰かにやらせるでしょう、普通。そこまで考えが回らなかったんでしょうか?たぶん、そうなんでしょう。
おそらく、パーティーよりも私を断罪することを優先していたんでしょう。どこまで、馬鹿なのでしょうか。
…それに、私ではなく、初めにシシリー様に目掛けて殴りに行くなんて、好きと嫌いは紙一重とはよく言ったものです。
?みなさんどうしたのですか?ああ、バカ王子がシシリー様に手を出そうとしているのに、私が何もせず、呑気に考え事をしているのが不思議ですか?
みなさん、お忘れかもしれませんが、シシリー様の婚約者様は第二王子殿下の近衛騎士様です。つまり、私よりも強いお方なのです。それに、シシリー様の側には第二王子殿下もいらっしゃり、優秀な騎士様が多くいらっしゃいます。私が何かをする必要はありません。だって、
「ぐはっ」
あのように、無様に騎士様に囚われてしまいますから。今バカ王子は、シシリー様の婚約者様によって、地面に叩きつけられています。
「くそ、俺は第一王子だぞ、貴様らそんなことをしていいと思っているのか!」
「兄上こそ、僕の騎士の婚約者に手を出そうとし、その義姉の方に冤罪をかけようとしたこと、何もないと本当に思っているのですか?」
「うるさい、うるさい!離せ!」
騎士様も王子の体を傷つけるわけにはいきません。拘束は本来より緩かったのでしょう。そのまま抜け出してきた王子はこちらに向かってきます。なぜ今度はこちらなのでしょうか?理解に苦しむのですが。
「お前さえいなければ」
「そいっ」
「ぐはっ」
私は王子の体を傷つけないとか知ったことではありませんので、力一杯に扇で殴ります。だって、むかつくんですもん。ワタシ、ワルクナイ。
そうです、私、殴られそうだったんです。正当防衛です。せ・い・と・う・ぼ・う・え・い。過剰?いいえ、男が!、か弱い少女を殴ろうとしたんですよ?過剰なわけないじゃないですか。むしろ、さっきので扇が壊れたので、弁償して欲しいぐらいです。
ほらそこ、か弱いに疑問を持たない!私は令嬢ですよ。か弱いに決まっているじゃないですか!なんなんですか、何か言いたいことでも?
普通ならびっくりする?私は三日間ですがスラムにいたんですよ?あそこは王子以上に怖い人がいっぱいいるんです!王子にびっくりしてる間に3回ぐらいは殺されてしまいます!
私はあそこで、ご飯は食べられませんでしたが、逃げることはできていたんです。
「何事です!」
ここで、王妃であるリリア様が御来場されました。私の足元ではバカが一人転がっています。これだけでも問題なのですが、これは一応王族なのです。大問題です。
どうしたらいいのでしょう!
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