12.パーティーの終了と帰宅(願望)

第一王子の言葉に誰も何も言えなくなります。これは第一王子の発言が的を得ていて、誰も反論できない、というわけではなく、ただ単に皆さんが呆れているだけです。 


「はあ、あなたにも何度も説明しましたが、あの書類にサインした時から、最終決定権は全て私が持つことになっています」

「それがおかしいのです。この国の王は父上だ!その発言を軽はずみにすることが、どれだけおかしいことか、あなたにはわからないのですか!」


 その王がお前と同じように婚約破棄をし、問題があったからこそ、リリア様が巻き込まれたんでしょう。それに、その書類にサインしたのは陛下です。おかしいのはあなたの家系であり、あなたも紛れもなくその血を引いております。ご愁傷さまです。

 というか、人の話も一切聞かず、自分の考えしか押し通そうとしない人に権力を持たせてはいけないと、私は思います。

 冤罪が増えるじゃないですか。というか、自ら冤罪を作ったじゃないですか。


「はあ、もういいです。衛兵、これを部屋に連れ戻して、出れないようにしてちょうだい。そしてお集まりいただいた皆さま、本日はこのようなことになってしまいましたが、どうか楽しんでいってください」

「離せ、くそっ、俺を誰だと思っている!」


 リリア様がバカ王子をこれと言っていたことに少し驚きつつも、バカ王子が連れて行かれるのを見送ります。とにかく、何事もなかったたことに、安心しました。

 流石に王族に手を出したので、もしかすると、処刑されていたかもしれないと考えると、胃が痛くなってしまいます。


 いくら、あれがあれだからと言って、感情的に手を出してはいけないということを今回学びました。次回からは気をつけたいと思います。

 次回なんてない?誰ですか?そんなことを言った人は?あのバカ王子ですよ?今回ダメだったのは自分以外の奴が全て悪いと言って、もう一度、全く違う理由で同じことをするに決まっています。


――――――――――――――――――――


 パーティーが終わり、帰宅しようとすると、シシリー様に呼び止められます。


「シアお姉様、今日は一緒に帰りませんか?」


 いいえ、帰りません。今日は家でゆっくりとくつろぎたいのです!

 シシリー様はご婚約者様とご一緒なされるのはどうでしょうか?


 なんて、言えれば良いのですが、私が天使様に言う答えは最初から決まっています。


「ええ、喜んで!」


 そこっ、ヘタレと呼ばないでください!この目を見て欲しいです。私が少し考えている間に、「ダメ…でしょうか」と言いながら、目をうるうるしているんですよ!誰が断れるんですか!


 もう、王城が遠くに見えます。ほんとに、今日はいろんなことがありました。もう、王族には関わりたくないです。これで、家に帰ってからはゆっくりと暖かいお布団でゆっくりと休んで、今日の嫌な気持ちをスッキリさせたいですね。


 はい、現実逃避は終わりにさせていただきます。今、私の隣にはシシリー様が座っておられます。場所の席は私の横以外にあるのに、です。それにシシリー様はずっと笑顔なのに対し、私はドナドナされている気分です。


 何故って?それは、これからジーク様に会うのに、今日の一件をいつシシリー様がジーク様に話されるのかが気になって仕方がないからです。


 こちらに一切の非がないとは言え、バカ王子に婚約者だと思われていたなんて、言ったら、ジーク様がどんなことをなされるのか、想像もつきません。正直怖いです。


「シシリー様。どうして、私の隣に座っておられるのでしょうか?」

「シアお姉様、私のことはシシリーと呼んでくださいと言っていたのに、どうして今日は呼んでくれないのですか?…もしかして、私が迷惑をかけたから嫌いになられたのですか?」

「ち、違います。公のばで呼ばないように気をつけていたです。今日のことで疲れていたんでしょうか。シシリー、今日はやっぱり中止にして、後日にしましょう」

「まあ、シアお姉様はお疲れなのですね。それはそうですわね。あの王子と対峙なさっていたですものね。任せてください。家にはリラックス効果の紅茶があるので、それを用意しましょう」


 何を言っても、シルバー家に行くことは確定のようです。やっぱり、私はドナドナされている気分です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る