5.第一王子との会話は疲れます

 まあ、そういう訳で、長々とお話ししましたが、私、アリシア・フォードは前世の記憶を持った子爵令嬢なのですが、普通の令嬢なのです。何か日本の知識を披露したわけでも、階級が高いわけでもないのです。

 それなのに、なんでこんなに波瀾万丈な人生を歩んでいるんでしょうか?誰か教えていただきたいものです。


 まあ、第一王子様(笑)のお話に戻りましょうか。残念ですが、ええ、誠に残念ですが、大事なので2回言わせていただきました。

 皆さん、覚えておられるでしょうか。ここはお城の中なのです。そして学園の卒業パーティーの真っ最中なのです。私たちの周りに人がいます。それも子息、令嬢だけではありません。そのご両親も来ています。


 そんな中、王子が子爵令嬢に対し、婚約破棄をしたのです。皆さん、私の家柄が遭っていないことはご存知かつ、殿下に婚約者はいないことは周知の事実なのです。

 なので、みなさん、ヒソヒソと殿下に声が聞こえないように話し合っています。聞こえるように言ってあげてください。せめて言わなくてもいいので、お願いですから助けてください。

 わかっていたことですが、誰も助けてくれません。ぐすん。知ってましたが!私が対処するしかないようです。


 「…お言葉ですが殿下、私が彼女に対して、何をしたのか、もう一度教えてもらってもよろしいでしょうか」


 引き攣った顔が見られないように、扇で口元を隠しながら、説明をお願いする。バカが権力を持つのは本当に面倒くさい。あっ、バカが誰かは言いませんよ。考えるのではなく、感じてください。ヒントは私の目の前にいる人物です。


「チッ、私の話を聞いていないとは、まあいい。よく聞け!お前はシシリー嬢に対し、階段から突き落としたり、校内の池に突き落としたりしたそうだな」


 私はそんなに暴力を振るように見えるのだろうか。突き落としてばかりではないですか。


「…そのように突き落としてばかりなら、誰かに見られているはずですが、証人は誰かいらっしゃるのでしょうか?」

「俺だ!」

「…殿下以外に、証言をしてくれる方はいらっしゃるのでしょうか?」

「俺が見たのだ!他に誰も必要ないだろう?お前はバカなのか?」


 頭が痛くなってくる。なぜ、私がこんなことに巻き込まれないといけないのか。そんなに都合よくお前が見れるわけないだろう。


 そもそも、第一王子にはあくまでも婚約者候補だけしかいません。なぜ、第一王子に婚約者が候補しかいないのか。それは、ほとんどの御令嬢は第一王子を拒否し、辞退した上で、第二王子であるセシル様を望んでいるからです。


 現国王陛下は前国王陛下が急死されたために、即座に国王の地位になりました。その時には婚約者様がいらっしゃったのですが、悪役令嬢に仕立て上げ、婚約破棄をし、男爵令嬢と結婚しました。その子供が、皆さんご想像通りの第一王子です。

 しかし、男爵令嬢ではまともに王妃が務まるわけがなかったので、急遽、当時侯爵令嬢であるリリア様を王妃にし、男爵令嬢を第二夫人にしました。そのリリア様の御子息がセシル第二王子殿下なのです。

 男爵令嬢の名前?さて、面白いことに興味を持ちますね。私は知らないですし、興味ないです。だから2度と聞かないでください。

 

 陛下は男爵令嬢を今でも愛しており、第一王子を溺愛されておりますが、誰も第一王子を婚約者には望まず、第二王子殿下の候補しか集まっていないと聞いてます。普通、陛下の命令などは断れないのですが、リリア様が王妃になる際に、全ての命令権は最終的にリリア様を通すことと言う書類にサインをなされたため、陛下の価値は地に伏せました。価値があるのは王家の血のみです。

 そのことを陛下が理解しているかと言われれば、皆様は叔父の一件で知っていると思いますが、たぶん、よくわかっておられないのでしょう。私はそう思います。

 

 なので、第一王子にも全くもって価値はないのです。しかし、それを理解しているとは思えないのです。


 ちなみに、陛下が婚約破棄された公爵令嬢様はジーク様のお母様です。世界って狭いですね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る