4.お家を返してもらいましょう

 私はお爺さまの家に一緒に帰ることになった。お爺さまは一度、お父様に爵位を譲渡しているので、立場的には貴族ではない。そのため、しっかりと伯父から返してもらわないといけない。

 家に着くと、お婆さまやメイドたちに抱きつかれる。家にいたメイドもいたので、しっかりと避難できたようでよかった。


「お嬢様、申し訳ありません。私たちがあの時、あの者たちを入れなければ…」

「あなたたちのせいでは無いわ。気にしないで、それよりも他のみんなは?」

「半分はあちらを辞職し、こちらに雇ってもらっています。半分はお嬢様の家を壊されるわけにはいかないと、今も奮闘しています」

「それは危険ではないの?」

「心配入りません。全員から報告が届いているので、内部状況もバッチリです。あとは訴える準備と、当主を置くだけです」


 なんて準備がいいのだろうか?驚いてお爺さまを見ると、優しい顔をしてうなずいている。


「父上、お話があるとお聞きしたのですが?」


 父に似た顔の人が現れる。


「もしかして、ジン叔父様?」


 ジン叔父様はこちらを振り向き、驚いた顔をすると、抱きついてきた。


「アリシア!よかった。生きていたんだな。よかった」

「あなた、そんなに強く抱きしめていては、アリシアが潰れてしまいますよ」

「ぷはっ、アン叔母様もお久しぶりです。お身体は大丈夫ですか?」

「ええ、久しぶりね、私は大丈夫よ。あなたの方が大変な目に遭っているのだから、気にしないで」


 アン叔母様は今、妊婦さんなのである。それなのに私を気遣ってくれる。みなさん、わかりますか。これが三男とそのお嫁さんです。どうして、長男はあんな風になってしまったのでしょうか?私にはわかりません。


「呼んだのは、あれに現実を見せる準備ができ、アリシアに家を返してもらう算段がついたからだ。そして、当主をお前に任せようと思う。その代わり、アリシアを養女として貰いたい」

「それは…けれど、アリシアは…」

「私は当主になりたいとは思っていません。それに私には嫁ぎたい方がいます。なので、ジン叔父様さえよければ、お父様の後を次いでください」


 自分で嫁ぎたい方がいると言うのは恥ずかしくなるが、仕方ない。ここはジン叔父様に次いでもらった方が丸く収まるのです。それにジーク様はシルバー家の嫡男ですから。何も問題はありません。


「…わかった。アリシアもそれで良いのか?」


 叔父様が聞いているのは、私に別のお父様ができることだと思うのですが、それは違います。いくら、ジン叔父様がお義父様になったとしても、お父様はお父様であり、同一人物ではありません。なので、そんな心配をする必要はありません。

 なので、少し、茶化してみようと思います。


「はい、それにジン叔父様なら、勝手に私の婚約者もつくらないでしょう?」

「ああ、わかったよ。やる。アン、すまないが、迷惑をかける」

「いいえ、私はあなたについていくだけですから」


 私もあんな風にジーク様と一緒に、ジーク様を信じ、支えていけるような存在になれるかな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そうと決まれば行動は早かった。


 私たちは今、私の家の前にいる。数日帰って来れなかっただけで、とても懐かしく感じる。


「入るぞ」

「なっ、なんで、親父やジンがここにいる!」

「この家はジンに譲ろうかと思ってな。お前たちには、相応の罰を受けてもらう」

「ふざけるな、俺は長男であり、ここは俺の家だ。お前たちに何も言われる所以はない!」

「お前では、野心が強すぎて領主をやっていくことはできない。だから、お前ではなく、次男のシリウスに継がせたのだ。それに、今でもお前はフォード家の当主ではない」

「う、嘘だ!出鱈目だ!」

「嘘じゃねーよ。フォード家には当主は亡くなったままで、まだ誰も次いではいなかったんだよ、さっきまでは、な。今は俺が当主になっている」

「ふ、ふざけるな!俺は陛下に確認をしてもらって当主になったんだぞ!それを、どういうことだ!」

「今の国王にはそんな権限はない。あるのは国母である、王妃様、ただお一人だ」


 叔父さんとお爺さまの話は、少し難しくてわからない。王妃様の方が王様よりも権限がある?女王様ではないのに?だけど、そのおかげで、伯父さんが当主になっているわけではないらしい。そのことにホッとする。


 そのあとは、伯父さんが盗賊団を手配した証拠や、領主と偽った証拠などを国に提出し、そのおかげで、伯父は無事に死刑。ざまぁみろ!コホン、失礼しました。叔父一家は皆、刑罰に処され、私は三男の養子となり、貴族に復帰し、ジーク様との正式な婚約が決まりました。


「わしは長男だぞ!それをお前の父が、あいつが奪ったのだ!だから殺してやったのに!お前!お前も一緒に死んでおけば、いつもいつもお前らはわしの邪魔をしやがってー」

「嫌よ、嫌!どうして私も。あなたね。全部あなたが生きていたから」

「お前、いつも私を下に見て!許せない、許せない!」


 もう一度、上から順に、伯父、伯母、従姉妹の姉になります。全員が私のせいにしてきます。学習能力はないのでしょうか?

 あったらこうはなってはいませんね。失礼しました。

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