挑戦

第1話

　挑戦をするのは難しい。

　なぜ戦いに挑まなければならないのか。

　平和国家の一員として断固ノーを突きつけたい。

　とは言え。とは言えだ。挑戦しない者には今以上のものは得られないのも事実だ。

　金がほしい。名誉がほしい。人間は欲まみれだ。

　しかし、しかしだ。一度立ち止まって考えてもらいたい。

　その欲望のを叶えた時、面倒な仕事がもれなくついてこないだろうか。

　ハンバーガーにおもちゃが付いてくるならハッピーセットだが、金や名誉に面倒な仕事がついてくるのはアンハッピーセットに違いない。

　つまりは挑戦して得られるものなど不幸なのだと僕は言いたいのだ。

　ここで僕は挑戦という言葉のイメージを変えたい。

　戦いに挑むから凄惨な末路に至るわけなのだから、もっと明るいイメージのあるものに挑めばいい。例えば遠足などはどうだろうか。

　たしかに出不精の僕にとって歩くのは辛い。だが、仲のいいクラスメイトと駄弁りながら目的地を目指すのは楽しいはずだ。目的地で弁当を広げておかずの交換をしたり、お菓子を交換したりとドキドキワクワクだ。

　挑戦は楽しい遠足なんだ。そう思えばイメージアップになる。みんなで歩む遠足なんだ。

「でも俺って1人じゃね？」

　赤本を前に今までの妄想から我に返る。現実なんて残酷なものだ。

　大学浪人8年目。社会から取り残された僕に明日は見えない。