第14話 シーフのセレス

 「・・・け、けいじ、ばん・・み、みましたです・・・。ぼく・・シーフです・・。」


 服がボロボロで、白髪の小さな女の子が、ギルド内に入って来た。見るからに浮浪者で、元気が無い。その子がシーフかどうかなんてどうでもよかった。今にも倒れそうな女の子を、助けなければいけないと思った。


 「・・お、なかすいた・・・。」扉を開けて力を使い切ったのか、床に崩れ落ちた。

 「大丈夫か!?取り敢えず俺の肉食え!!」口の中に肉を押し込んだ。瞬間、凄い勢いで食べ始めた。


 ・・・結局、俺の昼食を全部、その子は平らげた。

 追加で注文したご飯も食べて、もうとにかく滅茶苦茶食べた。20人前は軽く超えていた。

 最後のパエリアみたいなやつを食べ終えた瞬間、グラスの水を一気に飲み干し、俺に一礼した。


 「・・・見ず知らずのぼくに、ここまでよくして頂いて有難うございます。命の恩人です。」

 「いや、どうも。全然いいよ。」

 「ぼくは、セレスって言います。」

 「俺はレント。よろしく。」


 「・・・ちょっと待って。セレスって言った?」

 さっきまでつまらなそうにしていたルヴィが、驚きの表情を浮かべる。

 

 「はい。僕はシーフのセレスです。」

 「・・・え、本物?何であのセレスが、そんなみすぼらしい恰好してるの?」

 「訳がありまして・・・とにかくシーフを募集しているんですよね?」

 「ええ・・そうだけど・・・。」

 「それなら、ぼく結構出来ると思いますよ!」

 「そりゃ出来るでしょうけど・・・え、なんで?どういう事なの・・・?」


 ルヴィは、酷く混乱している様子だった。俺は、それがよく理解出来なかった。

 セレスという名を聞いた途端から、調子が狂っているからだ。


 「え?何?どういう事なの?」俺はアホ面でルヴィに訊いた。

 「・・・いい?信じられないかもしれないけど、その子はね、私達より年上よ。」

 「いやまずお前の年齢知らねーし。」

 「私はぴちぴちの19歳よ!」

 「マジで?俺より年上じゃん。俺17。」

 「知っているわよカードに書いてたの見たわよ。シーフ・セレスはね。ギルドトップランカー《開闢》のパーティメンバーだったのよ。」

 「・・・何それ?」

 「じゃあ、知識も教養もある私が教えてあげるわ。」

 「人として大事な要素は欠落してるけどな。」

 「うるさい。つまりね、セレスはSSランクの中でも上澄み、トップ中のトップだって事よ。」

 「すげぇ。」

 「それが、20年前の話ね。」

 「・・・え?」

 「あーもう、頭が混乱してるわ。この子エルフでも無いし、普通の人間なのになんでこんなに幼いの?それで、何でそんなに業績あるのにみすぼらしい恰好なの?で、何で生きているの?文献じゃ、死んだって話じゃない。ちょっと、セレスねぇ、ステータスカード見せてくれる?」

 「はい、どうぞ!」

 俺は、セレスのステータスカードを覗き見る。


 レベル:79 クラス:シーフ Age:36

 HP:783 MP:352 攻撃力:623 防御力:386 魔法力:452 素早さ:847

 保持スキル:《盗賊の極意》《爆発》《変装》《奪取》《毒無効》《麻痺無効》《脱出》《罠見極め》《潜影》《凶悪運》

 

 え、なにこれ。つんよっ。はぁ?え、強過ぎない?スキル持ちすぎじゃない?

 これマジ?この子がこれ全部出来ちゃうの?

 

 「・・・本物のセレスみたいね、これ。」ルヴィがため息をつく。

 「だな。やっぱその道のスペシャリストはすげーわ。で、36歳か・・・。」

 「もしかしたらあたしより強いかも・・・。」

 「マジ?シーフってサポート型なんだろ?」

 「何この《爆発》と《凶悪運》ってスキル、私も見た事無い。何すんの、怖いわ。」

 「いや、《潜影》も見た事無いぞ・・・。」


 なんか、俺達のパーティには勿体ない位の人材が来てしまった。

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