第10話 魔剣の真価

 「―――面白かったわよ、レント。私はスカッとしたわ。あの様子じゃ、メンタルボロボロでしょう。次の勇者が決まるのが楽しみね。」

 

 ルヴィが満足そうに悪い笑みを浮かべている。以前から、サウザンドの事が気に入らなかったらしい。

 あとワイバーンも残り2体でクエストは完了する。雨脚は強くなっているが、いっこうにワイバーンの数が減る様子は無かった。100体と聞いていたが、実際にはもっと数がいるみたいだ。


 「いい加減、肩も痛くなってきた。」弱音が漏れる。さっきから投げてばっかりだ。

 「あら、じゃあそろそろ私に任せてみる?」

 「・・・そうしようかな。」

 「じゃあ、見せてあげる。――――魔剣グラム術式煌矢発動!」

 

 手短な詠唱を終えると、ルヴィは魔剣を空に掲げた。

 すると、剣先から光が溢れ出す。それが空に待機し、天を覆う円状の光となると、その光が分岐し、地面目掛けて光の矢が降り注いでいく。

 まさに、雨の様に降り注ぐ《煌矢》が、空を飛翔するワイバーン達を、貫いていった。

 

 屍鬼累々が、開けた山の上に広がった。今度は命絶えたワイバーンが地面に降り注ぐ。


 ―――つっよ。え、こいつそんな強かったの?何これ。

今ので何匹死んだ?え、なにその技、ずるっ。お前勇者でいいよ、今日から。


「・・・最初からそれやってくんない?」文句くらい言ってもいいだろう。こんなの。

「そりゃ、低レベル相手には効くけど、魔王軍幹部や幻獣種と戦うには、もっと練度が必要よ。そんなに凄い技じゃないから、これ。」

「嘘つけ、殲滅兵器じゃん。ていうか、何だその魔剣。もう剣じゃないじゃんやってる事。」

「魔剣グラムよ。私はね、勇者に選ばれなかったけど、この剣には選ばれたのよ。試しにこれ、持ってみる?」

「え?いいの?」何が起きるんだろう。

「はい、持ってみて。」


 ―――魔剣が俺の手に渡った瞬間、あまりの重さに耐えられず、すぐに手を離した。

 ズドン!!

 魔剣は、土の地面にめり込んだ。重過ぎるのだ。俺が持ち上げようにも、びくともしない。


 「・・・え、なにこれ。」何が起こったのか分からず、呆気にとられた。

 「アハハハハッ!!これは選ばれた者しか持てない様になってるのよ。」


 ―――そう言って、ルヴィはめり込んでいる魔剣を易々と持ち上げ、鞘に納めた。

 ・・・もしかして、こいつの力が強いだけって可能性は無いよな?


 「・・・でも、私、本当は勇者剣の方を引き抜きたかったわ。」

 「・・そうだったのか。」

 「だから、勇者パーティを抜けてすぐに《リミオン》を倒したルーズの事が気になったのよ。一体どんな凄い奴なんだろう、って。それがまさか、砂利を投げつける事しか能が無いなんて思わなかったけど。」

 「お前口開けば悪口出て来るよな。」

 「悪口じゃないわよ。そんな攻撃しか出来なくても、物は使いようでしょ。《固定ダメージ》ってスキルを活かすも殺すも君次第。なんだかんだ一番いい使い方出来ているんじゃない?」

 「・・・褒めてんだな。ありがとう。」


 一旦勇者たちとの決着も済んだ所で、クエストは無事完了した。

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