第9話 雨降って地固まらず
―――38!38!38!38!38!38!38!38!
俺が投げた土の雨をくらったワイバーンが、力無く倒れる。
「・・・山って砂利無いんだな。ルヴィ、これで何体目だ?」
「68体目。全く、あれだけクエスト受けるの嫌がっていたのに、一番張り切ってんじゃん。」
「いや、思ったより倒せるからさ。経験値もおいしいし、レベルも早くお前に追いつきたいし。天気も悪くなってきたし、早くしないと。あと32体か、もうちょっとだけ頑張るか。・・・あれ、サウザンド・・・。」
―――俺は、放心状態になっているサウザンドを見た。勇者剣を構えて、茫然としている。まさか、こんな所で会う事になるなんて思わなかった。
―――掛ける言葉が見つからなかった。その後ろには、黒焦げになった3人が横たわっていたからだ。
それは、俺のよく知っている3人だった。黒焦げになっていても分かる。
ついこの間まで、一緒に過ごしていた人達。俺を虐げていた人達。
「―――嘘だろ。君は、勇者だろ?守れな・・・かったのか?」
「・・・・・・・・うるせぇよ。」
「・・・ルヴィ、お前の枕元に置いていた回復薬、持ってるだろ?勇者に渡してくれないか。」
「情けはいらねぇ。」
「それは俺が決めるよ。・・・早く助けなきゃ。」
「何が起きてやがる。なんでお前がルヴィといるんだ。」
「勝ったからだよ。今はそんなのどうでもいいだろ。早く助けなきゃ。」
俺が黒焦げの3人の方へ駆け寄とうとすると、勇者サウザンドは剣を俺に向けた。
「・・・・・・俺と勝負しろ。」
雨が、ポツポツと降って来た。
黒い積乱雲が空を覆っている。俺達の行く末を占っているようにも見えた。
「・・・分かったよ。じゃあ、俺が勝ったら素直に受け取ってくれよ、薬。」
―――俺は、すぐ脇にあった木の枝を折り、左手に持って構えた。
「・・・なめんじゃ、ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
斬りかかってきた所を、素早く避ける。このレベル差なら、勇者の攻撃はとても遅く感じた。
そして、背後に回った所で、その木の枝を勇者目掛けて投げた。勇者は籠手ですかさず防御するが、固定ダメージを与える事に成功する。
38!
「いってぇ!!何しやがった!!」
そして、木の枝を投げたと同時に、地面の土塊を掴み、身をよじらせて投げつける。
強く握らなかった土塊は、空気中で分裂し、散弾となって勇者に多段ヒットした。
38!38!38!38!
「ッグッハァッ・・・!!」
――――勇者は、力無く倒れた。
「これが俺の戦闘スタイルなんだ・・・ごめん。俺、行くから。」
俺は、ルヴィから受け取った回復薬を3人に使用し、その場を後にした。
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