第3話 ランク上がるの早くない?
――――冒険者が集う街・ピレス。
そこに俺、レントも在住している。
鍛冶屋を一人で営むブライドさんは、強面だが気のいい人で、俺の顔を見るなり作業の手を止めて、すぐに話し掛けて来た。
「おおっ!坊主聞いたぜおい!勇者パーティから抜けてすぐに結果残したらしいじゃねぇか!」
「・・ああ、実感まだ無いんですけどね・・・。」
「・・・で、防具を作って欲しい、と。金、たんまり貰ったんだろ?好きにいいな、オーダーメイドで作ってやるからよ。」
「話が早くて助かります。全身合わせて10万Gでどうでしょう?」
「おう!そのくらいありゃあ、上位ギルドランカーくらいの装備にはなるだろう。なんてったって幻獣種を素材に出来るなんてな、久方ぶりだぜ、腕がならァ‼
・・・で、武器はどうするんだ?」
「武器はいいです。何持っても一緒なんで。」
「噂の男はやる事が違うねぇ!じゃあ、出来たら連絡するから、まいど‼」
10万Gを渡し、鍛冶屋を後にする。
武器を作った所で仕方が無い。どうやら自分は、他の人とは違う戦い方をしなくてはならないからだ。
《固定ダメージ》は、どんな攻撃でも決まったダメージしか与えられないという特性を持つ。そして、そのダメージの数値は、レベルの数値を参照にするらしい。
《リミオン》を倒した時、一度につき3ダメージしか与えられなかったのは、あの時レベルが3しか無かった事によるもので、今現在レベルが34なので、一度につき34のダメージが叩き出せる事になる。
・・・それでも、正直しょぼい気は否めない。
普通、幻獣種を相手する時は、HPが1万を超えている事はざらにある。
たまたま、《リミオン》との相性が良すぎただけで、本当は幻獣種というのはそれだけ厄介な敵なのだ。
―――なので、俺の戦闘スタイルはもう既に決まっている。
地面に落ちている砂利や砂を投げつけ、多段ダメージを狙うというせこい戦法だ。
どんな貧弱そうに見える攻撃でも、ダメージ量は固定されているので、どれだけ相手に当てるか、それだけが重要になってくる。
だから、せめて防御だけはしっかりしとかなければいけない。
駆け出しの冒険者が纏うにしては贅沢過ぎる位の装備になるが、それくらいしないと強くなる事は難しいだろう。
それと、レベルアップと同時に、他にも色んなスキルを獲得した。
ステータスカードを開く。
レベル:34 クラス:アンノウン Age:17
HP:342 MP:282 攻撃力:178 防御力:163 魔法力:98 素早さ:206
保持スキル:《状態異常無効》《固定ダメージ》《急所見極め》《超連打》《羅刹》
《急所見極め》は分かる。《超連打》も分かる。
ただ、《羅刹》て何だよ。名前から何も連想出来ないんだけど。
「レントさんにですね、やってもらいたいクエストがありまして・・・。」
受付嬢のアンヴィルが、明るく俺に笑顔で言って来た。食事をしていると、酒屋のテーブルに座って来たのだ。
「えぇ・・・昨日の今日だよ?幻獣種依頼やったの。」
「ここで頑張ってランクを上げるんですよ!」
「ランク・・・か。今どうなってるの?」
冒険者ギルドには、ランク制度が存在する。
通常、冒険者はEランクからスタートする。当然、俺も最初はそうだったのだが、一応勇者一行に付き添っていた為、その時のランクを引き継いでBランクだった。
このランクは、クエストに記されているランクより一つ上までの依頼までなら受注が可能で、この前の《リミオン》討伐はA~SSまでと幅が広いクエストとなっていた。
これは、幻獣種が極めて討伐の難しいモンスターである為、ランクに関わらず、出来るだけ参入者を増やしたいという意図があった。そこにギリギリ引っかかっていた為、俺はクエストを受注する事が出来たのである。
・・・というか、実際このランク制度、もはや破綻している。
Eランクのクエストを受けるだけで、簡単にCランクまで到達出来たりするのだ。
それは、魔王軍が暴れている影響で冒険者が傭兵として借り出され、慢性的な人手不足になっている事が原因だった。
「・・・で、今回ので俺、何ランクに上がったの?」何となく訊いた。
「Sランクです。」
俺は、飲んでいたお茶を噴き出した。
「ごほっごぼぉっ・・・。は?」
「いやだって、幻獣種を倒したのですよ?しかも難攻不落の《リミオン》を。」
「・・・いや、いきなりSランクは、他の冒険者から何か言われるんじゃ・・・。」
「いや流石に幻獣種を倒した人に難癖付けて来る人はいないと思いますよ。」
「だからって、いきなりSランクは無いだろ。だって本来はSランク相当のレベルが60レベルとかだって話じゃん。俺、まだ34レベルとかなんだけど。」
「将来性を買っているんじゃないですか?ギルド長の決定だって聞きましたよ。」
「・・・何か、2日で色んな事が起こり過ぎているな・・・。で、話って何だっけ。今お金欲しいから話だけなら聞かせて。やるかどうかは分かんないけど。」面倒だし。
「ええと、そうでした。このクエストですね・・・。」
「ねぇ、探したわ。貴方がレント?」
背後から声がしたので、振り返る。また飲みかけのお茶を噴いてしまった。
何故なら、その声の主は、ギルド内では有名な女騎士だったからだ。
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