『ファブラ』創世神話Ⅱ
世界の果ての神の社。
そこには老人がいた。
生前は”右大臣殿”と呼ばれた男の今の呼び名は”天神様”である。
梅の園で歌に耽っていた彼は
不意に近づく神気に気が付いた。
社に近づく船。
「はて、とうに忘れ去られたと思っていたこの社に奉納者がまだ残っていたのであろうか。それにしても、この神気は...。」
近づけば近づくほど大きくなる神気に彼は驚愕する。
「まさか、三種の神器でも送ってきたというのか!?」
船に入る老人
甲板に倒れている二人。そばに立てられた絵。
神気はそこから来ているようだ。
「にしても、なぜこのような絵から神気が...」
流れる血、二つの躯から流れる血は合わさって、紙へと吸い込まれていた。
色鮮やかなの絵。
黒墨と白墨。
二つの署名。
合わさった男女の血液。
「・・・まさか、偶然で天地創造の儀が行われるとは...。」
「天照さまに上奏しなければ・・・。」
二人の遺体を社に置き、高天原へと向かう老人。
恭しく持った名もなき絵。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
高天原。
伝説の後、神々の謁見場へと変えられた天の岩戸
声を上げる手力男命。
「菅原道真公が謁見を求めています。」
姿勢を正す女神・天照
「よい。通せ。」
「はっ。」
「菅原道真が天照大御神に上奏します。」
「面を上げよ。要件を述べよ。」
「はっ。
果ての社にて、新たな神器の誕生を確認いたしました。」
お目をお通しください。」
「なんと、かなりの高位の神器ではないか。」
「いったい誰が...。」
「それが名も無き浮世の者のようです。」
「遭難した画家と作家によって、偶然ながらも完璧な天地創造の儀式が行われてしまったようです。」
「この世界に新たな天地を作る余裕はなさそうだな。」
「よかろう。根源の神・天之御中主に話をつけて、五番目の地球の衛星世界を作ることとする。」
「我、主神・天照大神が菅原道真公に命を下す。
他の衛星世界の主神・ゼウス、オーディン、ヤハウェ、天帝の協力も得ながら
その神具・世界樹の書画を基とする世界を設立せよ。
手伝いとして戦国最強の将・武田信玄を遣わす。甲州の社まで使いを出せ。
彼は不滅の世界システムを作るのに最適な元日本人の神でろう、頼りにするがよい」
「ご命令、承知つかつりました。」
社にて出立の支度をする老人。梅の木に触れて
「これを詠むのは二回目だな。」
〝 東風吹かば にほいおこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ"
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〇天地創造の儀〇
①東西南北中央を表す色(青白赤黒黄=絵の色)
②命を表す物(動植物=世界樹)
③陰と陽を表すもの(太陽と月=黄金色・白銀色)
④二つの性格を持つ者の交わり(性交=男と女の血)
*東風吹かば・・・の歌
最後は「春を忘るな」もありますが
私は「春な忘れそ」のほうが好きなのでこっちにしました。
ちなみに、甲州弁の「ちょ」は、古文の「な・・・そ」の派生だよ。」
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