第95話
Sneak Away
妹の聖もまた、やり直しの人生を歩み、時間をコントロールする力を得たとすれば、これまでの事柄のいくつかも説明がつく。
聖は未来に起こる出来事も、ある程度は知ることができた。むしろ、すべて知るのかもしれない。オレが誰と付き合って、その相手がどうなるか? それを知っていたのなら、梅木 美潮や上八尾 リアとそういう関係になっても大丈夫、という判断につながっただろう。
聖がサイトを管理し、オレに引き合わせる相手を決めていたのも、未来を知ることができるなら簡単だ。羽沢 葵や野崎 奏美も、聖にとって問題ない相手だった、ということだ。
やっぱり、聖と向き合わなくてはダメだ。オレもそう覚悟を決めた。
「兄さん、ほら♥」
聖は朝から、そういって可愛らしい薄いピンク色のネグリジェで、ターンをしてみせた。夏休みも残り少なくなり、両親が朝でかけると、すぐにオレの部屋にやってきて、朝からセックスしよう、というのだ。
「待ってくれ。オレの疑問に、答えてくれないか?」
「セックスをしながら……ね♥」
聖はオレをベッドに押し倒し、覆いかぶさるようにキスしてきた。オレも体が反応してしまう。彼女を抱きしめると、右手は彼女のお尻へと下がり、その柔らかい尻ほっぺと、割れ目とを交互に握ったり、さすったりする。
聖もそれが気持ちいいのか、できるだけ唇を離したくない……という感じで、自分のネグリジェを脱ぎ放った。下着はつけておらず、ふたたび覆いかぶさってきたので、今度は両手で彼女のお尻を揉みしだく。
気持ちが盛り上がってきたらしく、聖の方からオレのパジャマを下ろしにかかる。その下のパンツは自分で脱いだ。今度は聖がベッドに横たわるので、オレが上から覆いかぶさって、その小さな胸に唇をよせ、すでに興奮してつんと立ったそこを、優しく愛撫する。さらに手は下って、右手は彼女のクレバスを前から、左手は後ろから責めたてる。
彼女も気持ちいいのか、体をくねらせて「ん~……、あ~……」と、声のボリュームを抑えることなく、派手なうめき声を立てる。
「兄さん……、今日は兄さんからして」
そういって、聖はオレの腰のあたりに、まるでタコのように足を絡めてくる。
腰を足でカニばさみのようにされ、オレも動けなくなり「ゴムをつけないと……」と、ベッドの脇にある机の引き出しを指さす。
「大丈夫。兄さんで私を満たして」
聖はいつも、それをすることを赦さない。本当は拒むべきだし、ここは兄として苦言を呈すところだろう。でも、体はそうではなかった。受け入れ態勢を整え、きらきらと輝くそこをめがけて、突き進んでいく。
兄と妹が、ベッドの上で一つになった。そして互いに交じり合い、重ね合う中で、オレは彼女を満たすぐらい、ぶちまけていた。
聖は足でオレの腰をはさんだまま、オレを見上げてきた。
「色々なことが一変に起こって、戸惑っているのでしょうけれど、大丈夫。私がすべて、上手くやるから」
「聖はどこまで知っているんだ?」
「兄さんも、やり直しの人生を歩んで分かったでしょ。すべてよ」
そう、確かに起こることを予期……というより、事前に分かっているから、先回りして防いだり、解決したりできた。
「オレがやり直しの人生を歩むことも……?」
「むしろ、歩ませた……といっていいのかしら」
「聖が、オレにやり直しの人生を歩ませた?」
「そのために、前の人生で私は兄さんに関わらないようにしていたでしょ?」
「もしかして、それがやり直しの条件?」
「人が他者からの悪意により、死ぬほどの苦しみを味わい、それを背負って苦難の人生を歩むこと……かしら?」
「もしかして、聖がオレに関わり、オレが人生に満足するとやり直せないから、我慢していた……と?」
「そういうこと。これまで私は、何度も人生をくり返してきた。その度、兄さんと愛し合ってきた。でも、それではダメだと気づいたの。いつも、兄さんは若くして自殺してしまう……。兄さんをもっと生かさないと……。そのために、兄さんにもやり直しをさせよう。そう思い立って、前の人生からずっと計画していた……」
「待ってくれ。聖は一体、何回人生をやり直しているんだ?」
「さぁ……。もう数えきれないほど、かしらね」
それは聖のセックスが上手いはずだ。オレは前の人生で、ずっと童貞で過ごしたから最初は戸惑ったけれど、彼女は何度もそんな経験をくり返してきた。でも、オレとずっと愛し合っていた……?
「オレたちは……セックスをしていたのか?」
「兄さんは頭に大怪我を負い、また幼馴染を失って、ショックをうけた。私がそんな兄さんを慰め、私たちは体を重ねるようになるの。でも、驚いたわ。兄さんにやり直しの人生を歩ませた途端、幼馴染を救ってしまうのだもの。私もこれは、正直予想外だった。
そして兄さんは、私にとって予想外のことばかりしていた。だから、私は伊丹を兄さんに引き合わせ、伊丹を介して、兄さんの人助け願望を叶えようと画策したの。満足してもらえた?」
まんまとそのことで、オレはやり直しの人生に達成感すらもっていた。しかしそれが聖にコントロールされたものだった、なんて……。
「どうして小平の父親を……?」
「彼女が兄さんに近づき過ぎたから。私にも、彼女の人生がどういうものか? それが分からなかった。だから、日暮に命じて引き離した。いずれそうなるとは思っていたけれど、タイミングを早めたのよ」
「なら、上八尾は?」
「あの子は二十歳ごろに自殺するもの。でも、二周前の時間軸では、転校せずにここからモデルとしてデビューしていたけどね。一つ前の時間軸では、転校したから驚いたわ」
「そういう違いはあるのか?」
「私が動くことで、人生が変わる人もいる。でも、逆に彼女が転校するようになってから、違う子が同じ中学から芸能界にデビューするなど、社会は大きな流れでは似たような傾向をたどるんだって、そう思うわ」
それは柳沢 雛姫のことか? でも、この時間軸ではリアもモデルとしてデビューを果たしている。それにしても、リアが二十歳で自殺……? 確かに、オレが救わないと、父親から強引に肉体関係をむすばれる、という被害に悩んで、そうした可能性はある。
「なぜ、四条はダメなんだ?」
「彼女はセックスに溺れることが分かっているもの。それに、彼女は兄さんを独占しようとする」
そうだろうか……? 聖から話を聞いていて、初めて湧いた疑問だった。それは四条 真杜とセックスをした、オレにしか分からないことかもしれない。確かに、彼女は性衝動によって身を焦がすほどではあったが、だからといってオレ以外の男としようとはしなかった。オレを独占しよう……? でも、これまでも彼女は慰められるぐらいで我慢していたのだ。
小平の父親のこともそうだ。自分がよく分からないから、遠ざける……。
日暮は、聖はオレのことを見ている……、オレしか見ていない、といっていたけれど、むしろ自分のことしか見ていないのでは……? そう感じた。
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