第90話

     Allusion


 四条 真杜の部屋――。神社の娘で、いつもは白い直垂に赤い長袴、でも今日はちがう。彼女は全裸で、オレの太もものところに後ろ向きですわり、オレが後ろから彼女のまだ毛も生えそろっていないその先に指を這わせ、愛撫し、そして激しく身悶えしている。

 時おり、こうして彼女のことを慰めてあげないと、爆発してしまいそうなほどに情熱を迸らせる。それが〝時の強制力〟という、前の人生では悪い大人たちによって誘拐、監禁されて、性奴隷として奉仕させられていた彼女に影響する力によってもたらされたものだと、オレは知っている。そして、その運命から救ったオレが、彼女を慰めてあげている。

「ん~……、ごめんなさい。ごめんなさい」

 彼女は深く、甘い口づけから唇を離すと、そう謝ってくる。自分がこんな淫らな様子になるのを恥ずかしく、そして申し訳なく思っているのだ。

 まだ膨らみかけた胸も、大人になるには遠く、それでも無理に大人にされたことを示す。

 オレはそこに舌を這わせ、その先の突起を唇で優しくこすりつける。


 でも、もう彼女のそうした疼きを止めることは難しい……と感じていた。彼女は数年に跨り、そうした恥辱を与えられた。

 まだ一年も経たないうち、彼女はここまで性欲に身を焦がし、両目から大粒の涙をこぼしながらも、オレを求めてくる。

 イッた……。オレの指をぎゅっと締め付けてくる。こうして指で慰めてあげるだけで、果たして彼女は満足するのだろうか? 多分、満足できないからこうして時おり爆発しそうになり、オレに救いを求めてくる。今日は偶々、彼女の両親が昼の間は出かけていることもあり、こうして彼女の部屋の中で慰めてあげられるけれど、このままでは、彼女はずっとこのどうしようもなく溢れる熱情に、苦しめられることになるだろう。

 オレが彼女に、エッチをしてあげないのも、恋人だった梅木 美潮の従妹という理由だから……。そうした拘りだけだ。

 それで、彼女の願いを叶えてあげないことこそ、罪ではないか?

 絶頂を越えたはずなのに、またすぐオレにキスを求めてくる彼女に、オレもこう話しかけることにした。

「エッチ……しようか?」

 少し驚いた顔をしたけれど、彼女はすぐに大きく二度、頷く。

 布団の上に横たわり、オレが彼女の上にのる。四条は目をつぶり、胸の前で手を組むと、震える体を隠すことさえできない、無垢な姿でそこにいる。

「いくよ」

 もう指で、何度も愛撫してきたそこはトロトロだけれど、まだ男のそれを受け入れたことはない。

 静かに、優しくそこにオレを埋める。

「はぁ~……あぁ~……」

 オレたちは一つになった。


 挿入しただけで、四条は大きく首を仰け反らせ、イッたようだ。まだ成熟していない体は、中もまだ未成熟であるけれど、激しくオレを締め付けてくる。

 しばらくオレはそのまま、彼女を見下ろす。初めて女となり、その興奮と喜びでオレを見上げてくるその顔に、オレは美潮の面影をみていた。あまり似ていないと思っていたけれど、その上気した頬や、涙ぐんでいるのに嬉しそうな目をした、彼女の顔は美潮とそっくりだ。

 止められるはずもなかった。オレは美潮とエッチをして、初めて絶頂というものを体験した。たった一度、一日だけのことだったけれど、それは今でも昨日のことのように思い出される。

 四年間、ずっとそれを思い描いていた、といってもいいのかもしれない。

 オレは四年経ったけれど、美潮が四年前のそのまま……否、四条 真杜はその美潮が亡くなったのと同じ、中学一年生。まさにそのままの姿で帰ってきてくれた……、そう思えた。

 オレは何度も四条をもとめ、彼女もオレを求めてきた。夕方、両親が帰ってくるまで……。そんなことなんて、もう脳裏から消えていた。さっきまで処女だった四条は、もう女としてオレを激しく求め、自慰などでは得られない興奮と満足に、さらにそれをくり返すことを愉しむ。

 オレは何度も、何度も、何度も彼女の中で達した。これまで、何十人の相手と一度にしたこともあるけれど、オレは疲労しなかった。

 なぜなら、出さなかったから。オレはただ佇立するだけで、達することがなかったから。

 でも、彼女とはちがう。オレは美潮、そして上八尾 リアと、そして三人目の相手をみつけたのだ。

 そして、互いに体すら燃焼し尽して、互いに布団の上に仰向けに横たわった。


 四条は最後の力をふり絞り、オレの上に乗ってきて、うつ伏せでオレに抱きついてくる。オレもそんな四条を優しく抱き留め、そのぬくもりを感じていた。

 汗ばんだ体は、解けてくっつきそうなほどに粘着性を増しており、彼女の胸が小さいこともあって、体がぴったりとくっつく。

「私……うれしいです」

 四条はそういって、脱力した体をあずけてくる。

「オレも……だよ」

 そういって、優しく頭を撫でてあげる。ただ、オレは複雑な感情も抱いていた。彼女のことを、美潮の代用にしたのではないか……と。でも、彼女はそんなことを知る由もなく、オレの首に唇を寄せ、まるで赤ん坊が指しゃぶりをするように、オレの首を吸ってくる。

 キスマーク? 多分、彼女にそうした認識はないだろう。これまでずっと性衝動により、精神にまで負担がかかっていたものが、すっかり抜けきって安心しきっているのだ。それで幼児期にもどり、オレの胸の中で首に吸い付くのも、母親の乳首に吸い付くのと同じ感情なのかもしれない。

 でも、これで彼女も落ち着いてくれるだろう。四~五年は監禁されていたので、まだしばらくかかるかもしれないが、時間はかかっても彼女がこうして幸せな時間を増やしていけたら、きっとよい未来が開けるはずだ。


 オレは自分の家にもどり、シャワーを浴びる。いつもはそれほど気にしていないけれど、四条 真杜とのそれは、かなり濃密でどろどろに溶け合うようなそれだった。 さすがに匂いとか、色々と気になったのだ。

 そのとき、ガチャリと扉のひらく音がした。オレも驚いてふり返ると、そこには全裸の妹、聖がいた。

 家にいても、滅多に顔を合わせることはないし、昔は一緒にお風呂にも入っていたので、全裸といっても気にするようなことはない。小学六年生になり、聖も大きくなるところは大きくなった。胸は一般的な小学六年生に比べると、割と大きい方かもしれない。

 それこそ、同世代である伊丹や志倉と比べると……というだけで、大きいと感じる伊丹よりはやや小さめだけれど、形よく膨らみ、そして下の毛もだいぶ生えそろってきていた。

「ごめん、まだオレが入っているんだ」

 オレがそういったけれど、彼女は出ていくこともなければ、前を隠そうともせず、じっとオレを見つめている。

「えっと……」

 オレが戸惑っていると、つかつかとバスルームに入ってきて、首元にふれてきた。そこは四条に吸われたところであり、キスマークがついている。

 さすがにオレもマズイと思って、隠そうと手をもっていくけれど、彼女はその手を掴んできた。

「四条……、あの女はダメ。あの女は赦さない」

 彼女はオレを、水も入っていないバスタブへと突き飛ばした。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る