第91話

     Quandary


 バスルームで全裸の兄と妹が二人、兄は首元のキスマークがバレ、妹からバスタブに突き飛ばされた。

「イタタタ……」

 手で受け身はとったものの、後頭部をしこたまバスタブに打ち付け、くらくらしながら立ち上がろうとしたけれど、お腹の辺りに重みを感じた。

 ふとみると、聖がオレのお腹の上にのって、まるで蓋をするようにして立ち上がれなくなっていた。

「何、悪ふざけしているんだ……」

 オレも頭の痛みに顔を顰めながら、聖を見上げる。でも、いつもの無表情なまま、彼女は動こうともせず、指でふたたびオレのキスマークをさすってくる。

「兄さんは私のもの……。これだけ待ったんだもの。もう、いいよね」

 聖はオレに対して、反対向きに跨ってきた。オレも顔の前に、聖の陰部を突き付けられる形となり、驚いて声もでない。ただ次の瞬間、「あ⁉」と声がでた。それは聖がオレの陰部を銜えてきたからだ。


 兄と妹で……。そんな困惑は、上手く考えがまとまらない。先ほど、バスタブに頭を打ちつけたことでしているのかと思ったけれど、この頭痛はちがう。はっきりと、そう思った。これはオレがやり直しの人生を歩むようになって身に着けた能力――。犯罪を感知する力だ。

 でも、オレのそこは確実に反応していた。むしろ、これまで感じたことのないほど、先ほどまで四条とあれほど熱く、行為を繰り返していたというのに、まるで初めてそれをするときのように、硬くそそり立っている。

 聖は雄々しき佇立に満足したようにその口を離すと、バスタブの中にいるオレに、前から跨ってきた。

 止める間もない。彼女は自分の手で導くように、オレのそれを自分の中へと導き入れていく。

「あぁ……、待っていた。待っていたのよ!」

 狭いバスルームに、聖の声が響く。オレも妹にゆっくりと入っていくのを感じ、何かとんでもないことが起きている……と感じざるを得なかった。


 聖は「あ……、あ……」と、少し甲高い声をあげながら、オレの上で律動をつづけている。

 オレは茫然としながら、いつも無表情で、冷たい目でオレのことをみてきた妹が、真っ赤な顔で目を閉じ、幸福そうに律動するその姿をみつめていた。

 前の人生でも、聖はオレと関わろうとしなかった。それは兄が突然、事故によってバケモノじみた顔になり、学校ではイジメられる状態となり、自分にもその害を被るようになったのだから、当然だと思っていた。オレみたいな兄は邪魔、むしろいない方がいい……。そう考えていたはずで、だからほとんど会話もなく、大人になってからも会おうとしない……。

 オレもそれでいい、と考えていたし、むしろ迷惑をかけて申し訳なかった、とすら考えていた。

 確かに、このやり直しの人生では事故で負った頭の怪我も大したことなく、むしろ女の子を救った『英雄』と呼ばれ、学校ではもてはやされたほどだ。なので、この人生で、妹がオレを忌避する理由はない。でも、態度が変わらないことを、今まで疑問視もしていなかった。

 そう、でもそれは不自然なのだ。そしてその不自然な状態が、今につづく。

 どうして妹は、急にオレとセックスしているのか? そして、まだ処女だったはずの妹が、まるでそれに慣れ切ったように、長いことし続けてきたように、セックスを愉しんでオレの上で律動する。

 まだ自分でも、何が起きているのか判然としないまま、オレは内から湧き上がってくる衝動を堪えきれず、射精してしまう。でも、当然のことながらキャップはしていない。でも、聖はそれを待っていたかのように、オレのそれを吸い付くすかのように身をぶるっと震わせただけで、動揺することもなく、そこから離れることもしなかった……。


 オレの部屋に移っていた。相変わらず、聖はオレに跨り、激しく動いてくる。オレもその相性のよさにびっくりしていた。まるで、長いこと慣れ親しんでいたかのように、初めてであるはずの彼女とオレのそれは、とてもうまく接合し、そして吸着している。

 でも、オレは自ら動くことはない。色々なことが同時に起こり、またそれを受け入れられず、戸惑ったまま、まだ幼い体をしているのに、まるでセックスに馴れた女性のように動く彼女をじっと見つめる。

 聖もそれに気づいたのだろう。ふと動きを止めた。

「兄さん……。何が起きているか分からない……って顔ね」

「聖……君は…………?」

「いいのよ、今は分からなくても……」

 そういって、唇を重ねてくる。そのまま彼女は自分の胸に、オレの手を押し当ててくる。まだそれほど膨らんでいないけれど、オレの手は止まらず、彼女のそれをゆっくりと、円を描くようにして揉みしだく。

 自分の体が、どうしてそう動いてしまうのかもナゾだった。絡めてくる舌とて、拒めば拒めるはずだ。頭では、兄妹でこんなことを……と拒絶感があるのに、体がそうではない。

 まるで彼女とそうするのを欲するかのように、全身が反応し、舌も手も彼女のそれをまさぐっている。

「今日はたっぷり受け取ったから、ここまでにしておくわ。でも兄さん。四条という子はダメよ。関わっちゃ」

 そういって、聖は自分の下腹部をぽん、ぽんと叩く。彼女の下からは、先ほどオレが満たしたそれが溢れてこぼれ落ち、彼女の太ももを伝っているのが見えた。

 彼女はそのままオレの部屋をでていき、シャワーを浴びる音が聞こえてきた。彼女が去ってもまだ、オレのそれは物足りないように、硬くそそり立っている。そして、先ほどまでしていた頭痛が、ふと治まったのが、自分でも不思議だった。


 妹との……セックス。これまでは、兄に無理やり……というパターンには何度も遭遇してきた。でも、オレは妹から無理やり、関係を結ばされた……。でも、それは無理やり、だったのか?

 オレの体は激しく反応し、妹のそれに応えていた。それはまるで、旧知であるかのように……。

 そして、それからは昼に、夜にと、聖はオレのことを求めてきた。心ではこんなことをしていてはいけない、と思うのに、体がそうではない。でも、これまでとて不自然なことが多かった。色々な女の子とそういう関係になり、体は反応しても、出すことがなかった。

 義務感やら、諸々のことが影響している……とさえ考えていた。でも、今はちがうと感じる。なぜって? 聖を相手にするときは心がついてきていないはずなのに、積極的にオレのそれが溢れてくるからだ。

 聖がキッチンに立っていたオレに近づくと、スッと服をめくり上げて、まだ小さな胸をみせてくる。オレはそれだけで彼女の前にひざまずき、そのまだ膨らみきっていない胸に、唇を当てる。

 その愛撫に満足すると、彼女は自らパンツを下ろし、オレもそれに合わせて彼女に挿入する。心ではこんなことをしていてはいけない……と思いつつ、それでも体が止められない。聖はオレから受け取ると、それで満足したようにパンツを穿いて、それから食事をとるのが、日常になっていた。




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