第61話
Front
上八尾 リアと久しぶりにオレの部屋で会った。あのスタジオでカメラマンが陰部を切りとられる事件以来……だから、四か月ぶりだ。
「あのときの話がお母さんに伝わっちゃって、もう監視が厳しくて……。春休みに会おうと思ったら、目いっぱい仕事を入れてくるし……」
それは恋人のふりをして、カメラマンの邪な誘いから逃れようとした、という話だった。
事務所からOKをもらっていた、とはいっても、母には伝えていなかったのだ。それが事件となってしまい、話が大きくなったので母親にも恋人と一緒だった、と伝わる。その彼氏は誰なのか? という問いがリアにはあったはずで、恐らく何も説明をしていないのだろう。
リアが小学生のとき、彼女が父親の性的な興味から逃れるために、オレが恋人のふりをしていたことを母は知っている。ふり……かどうかは別にしても、オレと二人きりで自分の部屋に籠ってしまう娘が、そこで何をしていたか……。母なら気づかないはずはあるまい。中学生となって、モデルの仕事をはじめ、有名になりつつある今となっては、オレは厄介者にちがいなかった。
「お母さんって、何の仕事をしているの?」
「通訳、翻訳……。英語、フランス語、ドイツ語が話せるのよ。依頼が合ったら、仕事をするって感じね。だから私の仕事にもついてきたり、口をだしたりすることが多くて……。私は英語しか話せないけれど、海外のカメラマンの人だと、母が主にやりとりしているわ」
父親がアイルランド系で、家では英語でも話したのだろう。もしかしたら、母親のそうした仕事が、父親との出会いにつながるのかもしれないが、彼女は父親のことを思い出したくもないだろうから、この話は深く掘り下げないことにする。
リアはモデルの仕事をしているけれど、それ以前からスタイルがよかった。小学二年生のときから、大人並みに胸が大きかったのであり、その胸は中学二年生になった今では、巨乳モデルをも凌駕するほどとなっていた。しかも、脂肪の重みで垂れ下がるのではなく、つんと上向きで、某漫画、アニメの女盗賊のキャラを想起させるほどに成長している。
彼女が語っていた通り、ティーンズモデルとしてはかなりの人気を誇るようだ。逆に、その胸に嫉妬したモデル仲間、敵も多いようだけれど、洋風の顔立ちと相まって単独の写真集の話もくるほど、突出した人気があるそうだ。
「高城さんは、ドラマデビューしたようだね」
「あの人は元々、そっちに行きたかった人だからね」
「リアは興味ない?」
「私はこの顔だもの。演技をするにしても、役が限られるからね。それをメインで考えても、うまくいかないわよ」
確かにタレントなら、洋風の顔立ちでもいいけれど、そういう点では、この国では難しいのかもしれない。
「それに、演技は下手だし……」
「そうなの?」
「郁君なら、分かるでしょ?」
そういって怪しい瞳でみつめてくるリアに、オレも最初にエッチをしたときのことを思い出していた。
「じゃあ、本気でしようか」
そういって、オレたちは唇をかわす。
リアは後ろからするのが好きだ。でも、最初にエッチをしたときは、そんなことを知らないし、オレもまだ経験が浅くて、そんな気も回せなかった。ただ、互いに正常位でしても、何となくちがう気がした。そこで追い込まれ、選択したのがバックからすることだった。そして、彼女はあまりのその良さに、何度も何度も求めてきたことを、昨日のことのように憶えている。
オレの枕を胸にかき抱き、ベッドに突っ伏したままで、床に膝をついてお尻をこちらに向けてくる。ゆっくりとオレも前進すると、彼女もそのすすみ具合を感じて「あぁ……♥」と淡い吐息を漏らす。
奥までしっかりとたどり着いたことを感じ、オレは改めて「いくよ」と声をかけると、彼女は無言のまま、小さく頷く。
「はぁ~……」
枕に顔を押し付けながら、律動にそうため息のようなものをつく。オレもあまりの吸い付きに、吐息が漏れそうになりながら、イッた。
ただ今日は、その後がすこしちがう。
「ねぇ……、前からして」
「いいのかい?」
「うん……。いつまでもバックからだけだと、この先も大変だと思って……」
そういうと、リアはベッドに仰向けになった。
すぐに二つの大きな胸が目に飛び込んできて、感動を覚えてしまう。バックが好きだと気づいてからは、いつもバックか、彼女が跨ってきても後ろ向きで、その胸は後ろから触るしかなかったからだ。
オレも挿入する前に、しっかりと胸を愉しむことにして、両手でその胸を回すように揉み、その先端を銜える。サイズの割に乳首は小さくて、それもまたかわいいところだ。リアは優しく頭を抱えるようにしながら、乳首を舌先で転がすのを、じっと目を閉じている。
「痛い?」そう尋ねたのも、昔は痛がったからでもある。
「ううん、大丈夫。むしろ気持ちいいの……」
そんなことを言われると、オレもさらに責めたくなってしまう。でも、前からしたい、という彼女の気持ちが変わらないよう、そちらを優先することにした。
ベッドの上で前進を開始すると、ふわふわのマシュマロのようなそれが、振動に波打つゼリーのようにゆらゆら、ぶるぶると揺れ、それを見ているだけでも絵になってしまう。ぐっと奥までいくと、その胸がぷるんと動いて、収まるべきところに収まったようになった。
「…………あれ?」
リアも驚いた様子だけれど、オレも少し驚いた。前とは何か違う……。すぐにそう思った。
収まりが……いい。バックからしたときと、変わりなくいい感じだ。
オレたちはつながったまま、思わず顔を見合わせて笑ってしまった。
バックがいい、という五年前のことを今でも引きずっていて、それに固執していたため、この前もそれしかしなかったけれど、オレたちも成長していた。
むしろあの頃は、互いに未成熟ながらいいところを探した結果として、バックが良かっただけなのだ。成長した今、互いにエッチをできる体になり、フィットの仕方も変わった……。
オレが動くと、リアの胸もそれに少し遅れて、同じ動きをする。それを眺めているだけで、オレも気持ちよくなってきて、彼女の「くぅッ♥」という声とともにイッてしまった。
数ヶ月ぶりのエッチを愉しみ、オレとリアは部屋をでた。でもこのとき、オレは完全に失念していたのだ。何でリアとしか、この部屋でエッチしないのか? これまで色々な子とエッチをしたけれど、この部屋でしなかったのか……。それは、この家にはオレ以外にも家族がいる。両親は仕事が忙しくて、中々家にはいない人だけれど、もう一人の家族がいる。
だからオレは、この家でエッチをしなかったのだ。でも、リアと会えるのが楽しみで、ついつい彼女を家に誘ってしまう。
オレたちが家から出ていったとき、二階からオレたちを見下ろす目があることに、オレも気づいていなかった。……否、ここで気づいたとしても、もう遅かったのかもしれない……。
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