第35話

     Yake-Bokkui


 もう一つ変化したこと。それは幣原 真清との関係がもどったことだ。

 そこにはもう一つ、彼女の側に変化が生まれたこともあった。

 中学受験に合格したのだ。前の人生では彼女が自殺をくり返した理由の一つに、中学受験に失敗したこともあった。

 それもそうだろう。小学五年生にして、先生と禁断の関係をつづけていた少女として、一身に好奇の目を向けられつづけ、自殺未遂をくり返していたのだ。まともに勉強できるはずもなかった。そして中学受験に失敗し、地元の公立中学に通うことになって、さらに逃げ場を失った。中学の三年間は、そうした好奇の目をうけつづけなければいけない地獄がつづいた……。


 この時間軸では、彼女は中学受験に成功した。それは傷にならなかったことが大きいだろう。何しろ、直接教師とは関係せず、それを代用したのが一つ下のオレとであって、しかもそれは表沙汰になっていない。さらに、勉強のストレス解消にエッチをしていたほどで、オレをセフレとしていたのだ。

 そんな彼女が、受験勉強に集中するため、オレとの別れを決意して、オレたちは別れた。彼女が初潮を迎え、そうした警戒もあったろう。そのためストレス解消ができなくなり、自殺未遂を起こす。ただ、それは表の理由としては受験勉強が大変で、そうなった……として、むしろ同情の目を向けられることとなった。そして、それが彼女の原動力にもなった。

 同情なんていらない。自分は、自分のために努力する……。

 彼女は常に、自分を高めることを求め、努力することを厭わない性格だ。その効果もあって、有名な進学校へとすすむことができた。するとすぐ、オレのところに連絡があった。

「私の部屋にきて。忍び込んできて」


 間男、パートⅡである。彼女の家は大きく、地元の名士らしくて、庭にさえ侵入できれば、周りの家に気づかれずに壁伝いに、彼女の部屋までいける。

 一つ上の彼女が中学に入るので、オレは小学六年生になろうとする春休みであり、彼女はその春休みを待っていた。

 窓から侵入してきたオレのことを、自ら部屋に招き入れて、幣原はすぐにキスをしてきた。

「また、元の関係にもどりましょ♥」

「止めるんじゃなかったのか?」

 オレはそう意地悪をいった。彼女は少し拗ねたように「中学受験が目標だっただけよ。それが成功したんだもの。もう我慢する必要ないわ」

「我慢していた方が、勉強ができるって……」

「もう!」

 そういって眼鏡を外すと、オレの唇をまた唇でふさいでくる。

「でも、私は離れた中学に行っちゃうし、塾もまだつづけるつもりだから、そうそう会えない。だから、会えるときは滅茶苦茶をしよ♥」


 これが恋人同士だったら、ある意味で怖いかもしれない。ただ、これがエッチの誘いだけなので、好感の方が大きい。彼女は年上と付き合いたいのであって、オレは恋人にふさわしくない……と言われている。彼女に恋人ができても、終わるぐらいの関係であって、その分気が楽だ。でも、その関係はまだまだ当分終われそうもない……そう感じた。

 彼女は服を脱ぐと、すぐにオレをベッドに押し倒してくる。この部屋は、ベッドと小さな机があるだけで、本当に簡素だ。でも、少し変わったこともあった。

 彼女は枕の下に忍ばせておいた、小さな包みをとりだしてきた。

「これ、被せて」

 そう、コンドームである。でも、オレはこのときすでに気づいていた。美潮との関係以来、オレはだせなくなった。あの最高の瞬間に、すべてを出し切ってしまったように、カスカスになった。それでも、立つことはできるので、これまで通りにしてはきたけれど、どこか満たされないものもあった。

 でも、彼女がそれを望むなら、オレも装着するつもりだ。何しろ、オレとて完全にその原因を分かっていない。小学生で、子供をつくるわけにはいかない以上、むしろ積極的に避妊した方がいい、とさえ思っていた。


 それからは、二年前に中断したことと、何も変わらない。オレのことを呼びだしたときから、もう期待だけで濡れてしまうほど、エッチが好きな子だ。

 オレの服を脱がすのももどかしく、下半身だけを露出させ、そこが準備万端であるのを確認すると、すぐに跨ってきた。オレも苦笑しつつ、残りの服を脱ぐ。

「今日、親御さんは?」

「今はいない……。少ししたら……もどる…………はぅッ!」

 二年も我慢していた彼女は、感情が昂ぶり過ぎて、入れてすぐにイッた。ただ、それでも彼女が満足するはずもなく、一度は身震いしたことで止まったけれど、すぐに激しく上下動を再開した。

 本当に好きだな……。

 彼女が動くたび、揺れる胸を見上げつつ、オレもそんな感慨にふけった。最初はそれほどでなかった胸も、みるたび、会うたびに大きくなっていった。そして二年間、会っていなかったけれど、中学一年生になった彼女は、もう大人と言っていいほどの大きさだった。

「はぅ……」

 二度目にイッたことで、彼女はやっと動きを止めると、オレの顔を手ではさむようにして、唇を求めてきた。これも、彼女の特徴だ。オレはその間、片手ではもて余すようになったその胸を、弄ぶ。


「やっぱり、胸が好きね。アナタは」

 唇を離すと、彼女はオレの手の上に自分の手を重ねた。ただ、それは引きはがそうとする動きではなく、むしろもっと気持ちのいいところはここ……と、こちらを促そうとするものだった。

「そんなこともないつもりだけど……」

「うそ……。私に挿入しても、中々イかないくせに、胸をさわるときだけは、恍惚とした表情を浮かべちゃって……」

「そうかな……。キミの胸の触り心地がいいからだろ」

「そういってくれるのは嬉しいけれど、きっとアナタは大きな胸に思い出があるんじゃない? 幼稚園のときの先生とか」

 真清がそういったとき、オレはリアの顔を思い浮かべていた。小学二年生にして、図抜けた身長をもっていたけれど、それ以上に目立ったのは、子供とは思えないほどの彼女の胸だった。

 ただ、触ると痛がって、中々自由にすることもできなかったけれど、バックからするのが好きで、正視することもできなかった。今でもその記憶がこびりついているのだろうか……。


「胸を揉んでもいいから、アナタからしてよ」

 そういって、彼女はこちらの首に手を回しながら、自分はゆっくりと後ろに倒れる。こういうとき、抜いてから体位を変えた方がやりやすいけれど、彼女は常に感じていたいタイプで、オレも彼女の足を抱えながら、ゆっくりと体を起こした。

「やっぱりいいわ……。アナタとのセックス」

「オレとの……って、他の人と試したのかい?」

「こんなエッチができる人、アナタしかいるわけないじゃない。ほら、満足させてよ。久しぶりで私、今日はもうぐちゃぐちゃになりたいんだから」

「そういうことなら、激しくいくよ」

 オレが胸をにぎりこみながら、激しく動かしだすと、彼女は満足そうに眼をつぶって、その到達具合を確認する。

 でも、このときオレも気づいていた。ゴムの中に、何もとびださないことに。オレはやはり、出せなくなったのだ……と。








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