第36話

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 中学一年生になったとはいえ、オレは少しクラスから浮いた存在であることは変わりない。

 それは七十七歳まで生きた、老人の心をもった中学一年生なのだ。一目おかれるというか、少し周りも遠慮がちであって、友人というものはいない。オレとて、中学一年の同級生が相手だと、やはり会話に困ってしまう。確かに、オレもこの歳の記憶があって、今みると懐メロのような音楽や、テレビ番組を懐かしんで、それを話しのタネにすることはできるけれど、わざわざ中一レベルまで落として話を合わすこともない、と思っていたし、そういう意味で近寄りがたい存在である。

 そして、前の人生では中学生になっても、まだ事故の時のキズの影響で、ブキミと呼ばれていた頃でもあった。当然、トモダチもいなかったし、それがやり直しの人生になっても、トモダチをつくらない理由の一つでもある。前の人生で親しかった人間がいない、オレのことを避けていた連中と、今さら仲良くやれるはずもなかった。


 ただ、その孤高の存在ゆえに、学校では色々と相談をうける立場だ。これは英雄と呼ばれていたことも影響するだろう。今では滅多にそう呼ばれないけれど、幼馴染を事故、事件から救ったオレのことは、頼りがいのある存在……とみなされていることも大きい。

 そして、その中で事件の兆候をつかむこともあった。

「私、家出しようと思うの」

 昼休み、あまり人が来ないグラウンドの隅にあるベンチで、同級生の小平 姫華から、そんな相談をうけた。

「理由があるの?」

「お父さんは、すぐ暴力をふるう人で、あんな家、居たくない……」

 ふつうなら止めるだろう。しかし、オレはそうではない。何しろ、オレは大人ではなく子供なのだから、子供目線で話をしてあげないといけない。

「オレは別に、いいと思うよ。子育てにふさわしくない親なんて、五万といる。子供だけが我慢して、大人の無法に耐えるなんて考えの方が間違いだから……。

 ただ、家出してもきっと大変だと思う。生活力がないオレたちでは、誰かに頼らないといけない。そのとき、変な奴らが近づいてきて、家に泊める代わりに……といって、体を求めてくる。それを回避する術は考えているのかい?」


 小平は黙ってしまう。ストレートのショートの黒髪で、大胆なことをしそうなタイプではない。かわいい子だけれど、だからこそ狙われ易い。

「分かっている。だから、そんな奴らに処女をあげるぐらいなら、富士見君にもらって欲しくて……」

「どうしてオレに?」

「だって富士見君、そういう経験、あるんでしょ?」

 伊丹が話をしてしまったことで、そんな噂が流れているらしい。もっとも、名を出していないので、オレと特定されたわけではなく、ただの噂。ただ日常の立ち居振る舞い方から、オレではないかと疑われている。

「キミがどうしても……というなら、そうしてもいいけれど、もう少しいい解決策をとってみる……というのはどう?」

「そんなこと、できるの?」

「可能性だけの話だけれど、やれることをやってみるだけさ」

 オレはニヤッと笑ったが、小平は不安そうだった。


 オレが何年、大人をやっていたと思っているのか? 大人の知恵……それでその日以来、彼女は暴力をうけることがなくなった。

 簡単なことだ。でも、その手法についてはいずれ語ろう。そして、オレは小平の家に来ている。マンション住まいで、通路に近いところが、彼女の部屋だ。

 制服好きといった趣味はないけれど、中学生相手だと、まず制服を脱がすところからスタートするのが、小学生のころと少し変わった点だ。

「家出せずに済むなら、もうやる必要ないだろ?」

「でも、気持ちがもうそうなったから……」

「やれやれ……。貞操観念が崩れているな」

「貞操よ、私。だって、別に富士見君以外の人と、やろうと思っていないもの」

「そいつはどうも。それは、最初はうまい人にやってもらおう、というだけだろ?」

「それ以外の感情もあるけれど、今はそういうことにしておく♥」

「深くは聞かないよ。でも、そうういことなら、オレもそのつもりでするよ」

 自ら処女といっていたので、優しくその唇に、唇を重ねた。初めてだけれど、彼女は積極的に、むしろ楽しむように、それを受け入れた。


 大人びた子供は、男からみれば近寄りがたいけれど、一部の女の子からは憧憬をうけられるらしい。

 むしろ小学生のときは、それが単純に恋や愛で終わるのかもしれないけれど、中学生になったら、それが肉体関係に直結する。それを肌で感じていた。

 黒髪、ショートの清純で、大人しそうな子が自分のベッドの上で、初めてなのにオレを受け入れるために、手を伸ばしている。

 胸もまだふっくらという感じで、大きい方でもなく、体も成熟しているとは言い難いけれど、心の方はもう大人へと近づいている。そんな少女の裸身だ。

 まだ異性どころか、自分の指でさえ入れたことがなかったそこに、舌をたどらす。恐らく初めての恐怖より、期待や愉悦の方が勝っていて、充血したそこはすでに湿り始めていた。

 ただ、前戯を丁寧にするのも、昔なら恐らくサイズ的にも同級生ぐらいなら、すんなりといったものが、第二次性徴を迎えたオレは、明らかにサイズが大きくなった点だった。多少、自分なりに調整も利くけれど、大人のそれを入れるのに、初体験の女の子では厳しいはずだから。


 最初はキャップをかぶせずに行く。

「いくよ」

 その言葉で、彼女はこくんと頷く。「はうッ!」入ってきたことを感じた彼女が、全身に力を入れて、その痛み、苦しみに耐えようとする。それでも逃げようとしないのは、覚悟のゆえなのか……。オレも腰を支え、優しくねじりこむようにしていく。

「んんんんんんんんんんんん……」

 低音から高音まで、「ん」にも色々あるものだ。きついけれど、その扉を一つ一つ押し広げつつ、奥へとすすむ。そしてその迷宮の最終地点、王の間へと至った。

 しばらくそこで止まり、彼女の具合を確認する時間だ。

「…………動かないの?」

「初めて男を受け入れて、まだ君の中がびっくりしている状態だからね。ここで激しくすると、痛みが生じる。中に入っているのは、気持ち悪いかい?」

「ううん。それが富士見君だから、全然平気」

 強がっていることが分かるけれど、彼女は握っていた手を開いて、腰を支えていたオレの手に重ねてくる。両手で恋人つなぎをすると、「……来て」と決意をこめた表情で訴えてきた。

 ゆっくりと、まるで蒸気機関の機関車がスタートするときのように、大きな律動を開始する。恋人つなぎをしたまま、彼女は目を開けてはいられず、ぎゅっと閉じているけれど、その目をつぶる強さと、手をにぎってくる強さは同じかもしれない。その手がパッと開く。力が抜けていく彼女は、どうやらイッたようだ……。

「やっぱり、富士見君が最初の相手で、よかった……」

「そいつはどうも。でも、セックスだけなら、誰だってこれぐらいは……」

「ううん、私やっぱり、富士見君がいい! 富士見君、好き♥」











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