第14話 夜更け
周囲に外灯のないキャンプ場は日が暮れると漆黒の闇に包まれる。飲み過ぎたマスターのテントから、盛大なイビキが聞こえてくる。眠れないのはイビキのせい?絶対に違うけど、そう言う事にしておこう。テントを出て、クーラーボックスからハイボールの缶とビーフジャーキーを出し、夜風にあたりながら星を眺める。自宅から一時間程離れただけで、まぶしいくらいの星が見られるとは知らなかった。
「星に願いを」なんて歌があるけれど、願ったら叶うんだろうか。もし叶うとしても、僕は一体何をお願いしたらいいんだろう。缶を開けるプシュっという音がやたら大きく感じて、誰かを起こしやしないかと周囲を見回すと、ちょうどエリさんがテントから出てくるところだった。僕を見つけると、マスターのテントを指さし、小さな声で「うるさい!」と笑った。
スパークリングワインを持って、僕の隣に座る。「寝てられないじゃない。誘わなきゃよかったか。」そう言いながら、僕と同じように、瓶を開けた音の大きさに驚いている。平日の夜中のキャンプ場は静か過ぎて、瓶をテーブルに置く音さえ響く。「楽しんでる?」エリさんのとてつもなくシンプルな問いでビーフジャーキーともどかしさが胸につかえた。
「もちろんです。ただ、朝早くに鳥を観ようと思っていたんですけど、こんな時間に起こされちゃって、多分明日は寝坊です。」
「男女の友情がありますように。」星に願った。ふむふむ、ホウホウ。どこかでフクロウが鳴く。
「裕太君、またキャンプしようよ。」エリさんの誘いに、
「そうですね。他の常連さんも誘ってみましょうか。もう少し道具を揃えたくなっちゃいました。」音を立てないように乾杯すると、もう一度ホホゥとフクロウが鳴いた。
帰宅した夜、僕も少しだけホホゥと泣いた。イワシだけが黙って見ていた。
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