第13話 想像

 エリさんと友達になりたい、そう告げたあの日、彼女は僕の気持ちを察してくれたんじゃないだろうか。傷つけないためにキャンプをセッティングしてくれた。そして多分、僕の想いをマスターに内緒にしてくれている。そんな想像をすると胸が締め付けられる思いがした。


「年の離れた奴から誘われるのは嬉しいもんだ。」と、すでにマスターはご機嫌で缶ビールを何本か空けている。


 エリさん・・・エリさん・・・エリさん・・・。結婚していると言われた方がましだった。温かい気遣いならば、逆に心に浸みて痛い。澄み渡った青空の下、彼女が僕の隣で笑えば笑う程、心の中には黒雲が立ち込め、今にも雨が降り出しそうだ。それでも僕は何とかキャンプをした。最初で最後のデート。始まる前に終わった恋。いつか笑い話に出来る日がきっと来る。今日一日だけ全力で片思いをしよう。料理を囲んで三人でいろいろな話をした。


「裕太、彼女いないのか?」酔ったマスターの不躾な問いに

「いないんじゃなくて、作らないんだよね。」とエリさんが続ける。

「モテないわけないでしょ。こんないい人が。」

「いや、マジでモテないです。一人でいるのに慣れちゃって。」と答えると二人が揃って「分かる!」と賛同してくる。はずむ会話は全て意味のないガラクタだった。

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