第11話 キャンプ
マスターとは店の前で待ち合わせをした。エリさんはマイカーで現地集合。いつか、二人で出かけてみたい。焦る自分を落ち着かせるため、道中はマスターとの会話に集中した。マスターとは親子ほど年が離れている。そんなの気にせず、他の常連さん達ともよく遊びに行くらしい。
「誘ってくれてありがとな。飲み会も楽しいんだけど、キャンプが一番。先週も一人で行って来たんだけど、一生飽きない自信がある。」何の自慢だ。マスターのお喋りが少し緊張をほぐしてくれた。車の後ろには無骨なキャンプ道具達がきっちりと積まれている。二人で途中食材を買い、昼食を済ませ、昼過ぎに目的地に到着した。川沿いの林間キャンプ場。水鳥も山鳥も観られると思って、一応一眼レフを持って来たけど、きっとそれどころじゃないんだろうな。既に自分の鼓動が聞こえる。ペグを打つ手が心臓の音に合わせてリズミカルですらある。
「結構慣れてるな。」褒めるマスターに
「野鳥が観たくて揃えただけです。朝方が一番狙えるから。」と答えながら、野鳥に関心を持った自分に心から感謝した。何も準備が出来ずにオタオタしていたら、エリさんに恰好悪いと思われてしまうかも知れない。
二人分のテントが完成して、マスターが焚火を始めた所にエリさんが到着した。ミニクーパーが良く似合う。涼しげな目元、ハンドルを操りながらこちらに手を振る仕草。待ちわびたこの日。キャンプの約束をしたあの日エリさんが言った
「人違いかな?」の意味がやっと分かった。
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