第147話 ソルとリュザールの結婚式2
広場にはすでに多くの人たちが集まっていた。
父さんを先頭にリュザール、私、そしてバズランさんの順番でみんなの前へと向かい、父さんが高らかに宣言する。
「ただいま、バーシがバズランの息子リュザールとわが娘ソルの婚姻は相成った! 皆の者祝ってくれい!」
大きな歓声が上がり、披露宴が始まる。
私とリュザールは席に着くなり、たくさんの人に囲まれた。
「二人ともおめでとう。ソル、きれいだよ」
「おじさん。ありがとう!」
「リュザールも家族を養わないといけないんだから、これからもしっかりと頑張るんだよ」
「わかりました。セムトさん、ありがとうございます」
ほかにも村長さんたちや隊商の人たち、村の人たちがたくさん来て、私たちを祝ってくれる。
「ソル、リュザール。おめでとう!」
「あ、コルト! 来てくれたんだ。ありがとう」
「お前たちが結婚すると聞いて、カスム隊長と一緒にな。さっき到着したばかりさ」
見てみると、カスム兄さんはセムトおじさんと話しているようだ。
「それでどう? そっちの方はうまくいっている?」
コルトもつい先日、ビントのルーミンの悪友の子と結婚したはずだ。
「思った通り、気が強い子だった。いい子に巡り合えたよ」
ん、気が強い子がよかったの?
「へえ、それじゃあの子はコルトさんのご希望に叶う子だったんですね。ずっと見つからないって言っていましたもんね」
あれ、リュザールは知っていたんだ。
「ああ、俺もそんな子はいないと思って諦めていたんだけどさー。収穫祭の時に初めて見てピンと来たね。この子なら間違いないって」
「猫被っていたんじゃ……」
「ああ、そんなことは分かっていたよ。それでも時折俺を見る目は隠せてないからさ、ゾクゾクしてたもん」
「よかったですね。コルトさん」
好みは人それぞれって言うけど……
「ああ、それよりもリュザール、本当にソルでいいのか? 俺も自分の趣味はどうかと思うけどお前も大概だぜ」
ゴン!
「ソルの魅力をわかるのはボクだけで十分です!」
「いてて、それじゃ、お前たちお幸せに!」
どうしてテラの男たちは私からゲンコツもらいたがるかな。でも、ありがとうコルト。
披露宴も終盤に差し掛かった頃、いつものように手伝いを終えた女性たちが集まってきた。
「皆さん、今日はありがとうございました」
「何言ってんの。ソルのおかげで楽させてもらっているんだから、これくらいなんてことないわよ」
「いやそれは、私だけじゃなくて、ユーリルだって、リュザールだって、パルフィだって頑張ってくれているからなので……」
「それくらいわかっているわよ。でもね、ユーリルもリュザールもパルフィも、ソルがいるからこそ一緒にやってくれていると思うの」
「そうだぜ、あたいもソルがいなかったらここに来ていなかったからな。そしたらこいつらとも会えてねえからよ。ソルには感謝してもしきれねえぜ」
パルフィの横には乳母車に乗せられたラザルとラミル、それにルフィナも一緒にいた。
「あたしだって、ソルがアラルクを連れて来てくれたからルフィナを産めたんだからね。気にしないで幸せだけ噛みしめていたらいいのよ」
「それと、リュザール。おめえは女の事わかっていると思うけど、ソルは初めてなんだからよ。優しくしてやれよな」
しー、しー! パルフィ! リュザールが女の子の事知っているとか、他の人が聞いたら勘違いされるよ。
ん、あれ? 何か大事なことを忘れていたような…………あ!!!
「ソルさん温かい食べ物お持ちしましたよ。……どうしたんですか? 顔が青いですよ」
「大丈夫? ソル」
「大丈夫だよ。ルーミンもリュザールもありがとう」
「さあさあ、皆さん。ソルさんたちに食事をしてもらいますので、席にお戻りください。時間はまだまだありますからね。あとでゆっくりと話してくださいね」
みんなが離れていって、ここには私とリュザールとルーミンの三人になった。
「ありがとう、ルーミン。あまり食べられなかったんだ」
「そうでしょう。私の時もそうでしたからね」
「あ、ボク今のうちにトイレに行ってくるね」
「はーい。いってらっしゃーい。…………それでソルさんどうしました」
「思い出した……」
「……ずいぶんと余裕かましているなって思っていたら、もしかして忘れていたんですか」
「うん」
「覚悟はできているんですよね」
「たぶん……」
「逃げ出さないでくださいよ。リュザールさん女の子の気持ちが分かるとはいえ、もう4年以上待っていますからね。ショックで寝込みますよ」
「……うん」
「まあ、いつものように
うっ、なんかばれてる……
「それに、私と違って一度はあれを見ているんでしょう。それならああなったところも想像できるでしょうから、あとは受け入れるだけですよ」
あ、あのときがあれくらいだったから、たぶんあれくらい……だよね。
「が、がんばる」
「それに、赤ちゃんできたら毎日の変化が楽しいですからね」
ふふ、赤ちゃんか。ルーミンは毎日を楽しんでいるようだもんね。あっ!
「そういえば、ルーミン。体の方はどうなの? つわりとか無かったの?」
忙しくて聞きそびれていた。海渡の時にそんな話をしないから大丈夫だと思うけど、無理していたらいけない。
「あー、ソルさんたちが旅に行っているときにありましたけど、ユティさんに話したら薬を出してくれましたよ。そしたらだいぶん楽になりましたね」
うんうん、うちの薬は先祖伝来のものだからね、よく効くんだ。辛くなかったのならよかったよ。
「……もう大丈夫なようですね。それじゃ、早く食べてくださいね。みんなが話をしたがっていますから」
「ありがとう、ルーミン」
そうだった、別に怖がることは無かった。好きな人と一緒になる、ただそれだけのことだ。
「ソル、お待たせ。あ、顔色よくなったね」
「心配かけてごめんね。さあ、今のうちに食べよう。みんな待っているよ」
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あとがきです。
「ソルです」
「リュザールです」
「「いつもご覧いただきありがとうございます!」」
「ようやく結婚式ができた。長かったね」
「うん、最初に会った時はすぐにでも一緒になるつもりだったから、待ち遠しかったよ」
「ははは、あの時は私の心の準備ができてなかったから、一緒になっても逃げだしていたかもね」
「今日は大丈夫?」
「……うん」
「それじゃ、家に行こうか……」
「あ、その前にユーリルから頼まれていることがあるよ」
「ああ、そうか、僕もセムトさんと一緒に出ないといけなかった」
「あはは、早く終わらせて家に帰ろうね」
「それでは皆さん次回もお楽しみに―」
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