第80話 パルフィの想い

 何とか風花からの圧力をかわし、いい時間になったので風花の家を後にすることにした。


「よかったですね。竹下先輩、年上の美人さんを恋人にできそうですよ」


「え、うん、まあな」


「でも、パルフィさんの子供ができるこのタイミングでですか?」


 凪は納得いかないのかな。


「て、テラと地球は違うから。パルフィを好きなのは変わりないし」


「私、そんなに器用にできるかなあ……」


 凪の気持ちもわからなくはない。僕は風花とリュザールと同じ人格の子を好きになったから問題ないけど、いくら違う世界だからと言って、違う相手を同じように好きになれるかと言われたらそれは自信がない。


「あのさ、ちょっと聞いてほしいんだけど」


 少しでも竹下の助けになるかもと思い、あのことを話してみる。





「それでは樹先輩は、穂乃花さんはパルフィさんと同じ人格ではないかと思っているんですね」


「うん、考え方とか、雰囲気とかよく似ている」


「僕にはよくわかりませんでしたけど、そういわれたらそんな気がします」


「竹下先輩はどう思われます?」


「ほかの人よりもずっと惹かれるのは確か。樹からそういわれたらそうかもしれないって思う」


「それでどうするんです? 穂乃花さんを私たちの仲間にするんですか?」


「凪と海渡みたいに本人が望むのならそうしないといけないと思うけど、無理矢理につなげるのはどうかと思う」


「私たちは先輩たちの劇をしたことで少し繋がっちゃったから、樹先輩に助けてもらいました。穂乃花さんも私たちと一緒にいてその可能性はないでしょうか」


 凪と海渡は僕たちの劇をすることによって繋がりかけていた。このままでは精神に異常をきたしそうだということで、自ら繋がりを求めたのだ。


「わからないけど、その可能性があるからと言って、竹下に穂乃花さんと付き合うなとは言えないと思うよ」


「そうですよね……竹下先輩はどう思われます」


「実はパルフィがうすうす感づいているみたいなんだ」


 どういうこと?


「俺らが会っていないはずなのに話し合いが済んでいたり、だれも知らない知識を知っていたりしていて、何隠してんだって言われている」


 もしかしたら急に穂乃花さんがこちらに帰ってきて竹下と会うようになったのは、パルフィの意識がそうさせたのかもしれない。

 ただ、それでも無理矢理繋げるのは違う気がするので、


「一度パルフィに僕たちのこと話してみる? その上で判断してもらおうよ。もちろん穂乃花さんではない可能性もあるけどさ」




 翌朝パルフィのところへ説明に行くことにした。

 もし、パルフィと穂乃花さんが繋がるのなら、穂乃花さんが風花のところにいるときが都合がいい。



「なんでえ。みんな雁首揃えてどうしたんだい」


「あのねパルフィ。この前、僕に隠し事してるんじゃないかって聞いたじゃない。それについて話そうと思うんだけど、いいかな?」


「みんなでか?」


「うん」


「わかった聞いてやるから話してみな。その前にお茶入れるからよ、立ってないで座ってな」


「あ、パルフィ。私も手伝う」


「まだまだ、大丈夫だからよ。気にするな」


 そういうわけにもいかないので、私とルーミンと一緒にお茶の用意をする。


「やっぱりソルも絡んでいるのか。それにルーミンもというのは驚きだな」


「ごめんねパルフィ。本当は話すつもりはなかったんだけど、そういうわけにもいかなくなっちゃって」


「いいって、困ってんだろう。なんでもあたいを頼りな」


 やっぱりパルフィは頼りになる。一緒に手伝ってくれたら心強いかもしれない。



 ユーリルたちの家の居間で車座になった私たちの前には、パルフィと一緒に入れたお茶が並べられている。


「えーと、私から話していいかな」


 私はこれまでのことをパルフィに余すことなく話した。






「へえ、なるほどな。ソルとユーリルが何かやっていることは知っていたけど、そういうわけかい」


「信じてくれるの?」


「まあ、信じる信じないでいうとよくわかんねえってのが本音だな。でも、聞いてみたら納得できることもあるから、そうなんだろうな」


「それで、パルフィはどう思う」


「あっちのあたいの事か。確かにむかし見た夢に風花という妹がいたような気がする」


「それじゃあ、やっぱり!」


「ち、ちょっと待ってくれ、あっちのあたいは、あっちのユーリルに出会って一緒になるって決めたんだろう。なら、それでいいじゃねえか」


「え、それってこのままでいいっていうこと?」


「そうだな、そうなるな」


「どうして?」


「あっちの世界はものすごく進んでいるんだろ。もし、自らその知識を持っちまったら……あたいは自分の力で鍛冶を極めてえんだ」


 そうだ、パルフィは鍛冶をしたいがためにコルカを離れてカインまで来てるんだ。生半可な気持ちではないことはよく知っている。


「そっか、わかった。パルフィが決めたことだもんね」


「済まねえな。でもお前たちの手伝いはするからよ。なんでも言ってくれ」


「でも、パルフィさん。私たちみたいに夢を見続けてどうしようもなくなったらどうしますか」


「確かにな、あたいもあっちのあたいも大丈夫だと思うけど、周りから見てダメそうならその時はそうしてくれ。自分では意固地になることもあるからよ。それと、ユーリル。あっちのあたいを幸せにしろよ!」


 ユーリルは黙って頷く。


「それにしてもあちらのあたいの妹が風花で、それがこのリュザールか。リュザールは本当にあたいの弟かもしれねえな」


「!!!」


 一同、パルフィの言葉に声を失う。


「ど、どういうこと?」


 のんきにお茶をすすっているパルフィに、必死の思いで声を絞り出した。


「ああ、コルカにあたいの母ちゃんいるだろう。あの母ちゃんは本当の母ちゃんじゃねえんだ」


 く、詳しく!


「なんでもあたいと兄ちゃんの本当の母ちゃんは、あたいが一つぐらいの時に出て行ったらしいんだ。今いる母ちゃんはそのあとに来た人だな」


 えーと、パルフィの本当のお母さんは、リュザールを妊娠しているときに家から出て行って、リュザールを生んだけど事情があってバーシの橋のところに捨てたということだろうか。

 そういえば、リュザールとパルフィは二人ともこちらではあまり見かけない黒い髪している。パルフィのお兄さんも確かそうだった。


「お、お姉ちゃん?」


「おう、リュザール。よろしくな」


「でも、リュザールってファームさんとは似てないね」


「ああ、たぶん父ちゃんが違うんじゃないか」


「!」


「たぶんだけどな。あたいも親父の子供ではないと思う。目の色が違うだろう。兄貴も親父も茶色だ」


「!!」


確かにパルフィもリュザールも目の色は黒。


「でも、そんなの関係ねえ。あたいの親父はファームただ一人だ。これは変わんねえ。まあ、リュザールはうちの親父のことを気にする必要はないからな。きっと、あたいとリュザールの本当の父ちゃんはもっとかっこよかったはずだぜ」


情報量が多すぎて、いろいろと処理しきれないよー。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

あとがきです。

「ソルです」

「ユーリルです」

「「いつもご覧いただきありがとうございます」」


「パルフィからとんでも発言が出ました。ユーリル感想は?」

「僕とパルフィって結婚してるよね」

「うん、そうだね」

「ソルとリュザールは今度結婚するよね」

「う、うん」

「パルフィとリュザールが姉弟なら、僕はソルのお義兄さんだよね」

「え、まあそうなるのかな」

「ふふん。やっぱり僕がお兄ちゃんじゃないか。これからはいつでもお兄ちゃん助けてって頼ってくれていいからね」

「! もしかしてこの前のこと根に持ってんの?」

「なんのことかわからないけど。さあ、お兄ちゃんって呼んでいいよ」

「お、お兄ちゃん?」

「!! なんかゾクってするね」

「やっぱなし、気持ち悪い。それではユーリル次回予告の案内お願いします」

「気持ち悪いって……ずっと、お兄ちゃんって呼んでもいいのに。えっと、次回は年が明けた後のお話になります」

「皆さん次回もお楽しみにー」

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