第5章
第67話 温泉合宿1
ここから数話地球でのお話になります。
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「おはよう、竹下。忘れ物ないよね」
「おはよう、樹。多分大丈夫じゃないかな。忘れていたら貸してね」
「え、まあ、貸せるやつならね」
「ところで風花は?」
「直接駅に行くって」
「そうか、風花の家からなら駅の方が近いか。ならもう出発していいの?」
うんと頷き、僕たちは駅に向かって歩き出す。
今日はゴールデンウィーク後半の5連休の初日。
僕、竹下、風花の三人は武術研究会(通称武研)の一泊二日の合宿に参加することになっている。
え、もう中学校卒業したんじゃないかって。
そう、僕ら三人はこの春に晴れて同じ高校に入学していて、本来なら中学の部活動に参加する必要はない。ただ、武研には今年も新入部員が入っており、由紀ちゃん一人では指導ができないということなので、普段から僕たちが交代でヘルプに入ったりしている。今回もその一環で、コーチ兼付き添いとして参加することになった。本来なら風花一人でいいのかもしれないけど、せっかくならお前たち来いと由紀ちゃんが言ってくれたので、お言葉に甘えることにしたんだ。息抜きは必要だからね。
駅前の歩道橋の広場には、すでに数人の武研部員が集まっていた。
「あ、樹先輩、竹下先輩。おはようございます!」
今年の新入生が駆け寄ってきた。ついこの間まで小学生だったから、体に比べ大きなリュックを背負っている姿は大変そうに見える。
「おはよう。大丈夫、リュック重くない?」
「はい! 先輩たちの指導のおかげでこれくらい何でもないです」
新入生はまだ掴む訓練しかしてないけど、この訓練は相手を見るだけでなく、自分の重心の位置をいつも気にかけておく必要がある。そしてそれが意識できるようになったら、どうやら多少重たいものでも難なく運べるようになるようで、一年生はそのことを言っているのだ。
「海渡たちはまだなの?」
あたりを見回しても、3年の海渡と凪の姿が見当たらない。
「海渡先輩はトイレに行っています」
海渡は来ているのか、いつも一緒の凪ちゃんはどこだろう。と思っていると、集合場所の広場の階段を上って来る風花と凪の姿が見えた。
「おはようございます樹先輩」
「おはよう凪ちゃん。おはよう、風花」
「おはよう、樹君」
「二人は一緒だったの?」
「海渡がトイレ行きたいって先に走って行っちゃたので、一人で歩いていたらそこで一緒になりました」
なるほどそういうわけね。
「みんな揃っているか。出発時間までもう少し時間まであるからトイレとか先に済ましておけよ! バスはよほどのことが無いと途中で止まらないからな。あと、行った先にはコンビニとか無いからな必要な物はここで買っておくように」
「「「はーい」」」
ジャージ姿で現れた由紀ちゃんの言葉で、数人がトイレやコンビニに向かって歩いていく。
「樹、風花、竹下、すまんな。今日からよろしく頼む」
「由紀ちゃん先生、僕たちもこの合宿楽しみにしていましたから」
由紀ちゃんは何とも言えない顔をしている。この春から男の戸部先生が新たに赴任してきて、その結果、この部活での呼び方が由紀ちゃん先生で定着してしまったのだ。
時間がきて全員揃ったので、由紀ちゃんを含め武研のみんな15人は宿泊施設が用意したバスに乗り、目的地に向かって出発した。これから約二時間のバスの旅。目的地には道場もついていて、夏休みとかには高校の柔道部の合宿とかもやっているらしい。
ふふふ、僕たちが楽しみにしている理由は他にある。なんとこの施設、本来の姿は温泉宿で、その温泉も清掃と入れ替わりの時間を除いたほぼ24時間入れる源泉かけ流し! これは期待せずにはいられまい。
バスの中では由紀ちゃんが一番前に、僕達三人が一番後ろに座ることになった。
「お前たちー、あまりはしゃぎすぎるなよ」
「「「はーい」」」
由紀ちゃんからの注意に返事をしたにもかかわらず、僕達の前の方の席では武研のみんなが騒いでいる。まあ、こんな時に静かにしている方が無理な話だから、ある程度までは目をつぶらないといけないんだろう。
「そうそう、昨日バーシまで荷馬車で行ったんでしょう。どうだった?」
風花が僕と竹下に聞いてきた。
昨日はソル、ユーリル、アラルクの三人で、出来上がった荷馬車を納めに日帰りでバーシ村まで行っていたのだ。
「思いのほかお尻が痛かった。風花が言った通り綿の座布団が必須だったよ。いつもあんな思いして乗っているの?」
「草原を移動するときは、まあ何とか我慢できるんだけど、河原とかのときは結構来るね」
「板バネつけたらだいぶん違うんだろうけど、普通の荷馬車には付けないんだよなあ。乗合馬車を走らせるのなら必要なのだろうけどね。一応、どれくらい費用が高くなるかパルフィに聞いてみるよ」
竹下は解決策を知っているようだ。
「それじゃあお願い。竹下に任せた」
その後僕たちは、テラのことや高校のことなど話していたんだけど、赤信号で止まった時に海渡と凪の二人が、僕たちのすぐ前の空いている席まで移動してきた。
「お願いがあります。僕たちも先輩方のお手伝いをさせてください」
「合宿で下級生の面倒を見ること? それなら是非にでもお願いしたいけど」
「いえ、そうではなくて、あちらの世界でのことです」
凪の思いも寄らない言葉に、僕達三人はお互いの顔を見合わせることになった。
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あとがきです。
「樹です」
「竹下です」
「「いつもお読みいただきありがとうございます」」
「僕たちは武研の合宿に参加することになりました」
「なあ、その合宿。サブタイトルでは温泉がついてるよな」
「そうみたいだね」
「それならお約束はあるのかな」
「お約束って?」
「決まってるじゃん、温泉と言えばポロリだよ、ポ・ロ・リ!」
「そんなに強調しなくても……」
「で、どうなの?」
「知らないよ。あってもレイティング的に軽いものじゃないの」
「……レイティングが憎い」
「それでは、次回のご案内です」
「合宿の話がしばらく続きますので、皆さんお付き合いください」
「「次回もお楽しみに―」」
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