第四話 日本研究部の謎<後編>

違う。

そんな違和感を感じ、首吊り死体を観察した。

白いワンピースに、長い髪の毛。顔は前髪で覆われていて見えないが、肌の色は全体的に白い。


「あっ」


暗くてよく見えないので、近づいてみてようやく分かった。

肌が、本来の肌より人工的に見える。


シリコンか。


「はあ…心臓に悪いぞ」


誰だよこんな再現性あふれる人形を用意したのは。

めっちゃリアルじゃないか。売れるかも知れないだろ。

…買う人がいないか。


手探りで電気のスイッチを探し、真っ暗だった部屋に明かりを灯す。

改めて、この部室らしき部屋を眺めてみた。

広さは大体10,15畳くらいの部屋だった。

真ん中にはでかでかと不似合いなソファアと、黒びやかな机があり、右側には膝小僧くらいまでの高さの石段に、畳が敷き詰めてあった。


不気味な死体は、そのソファアの上に吊り下げられていた。

見た所本はおいてないし、ソファアと畳しかない簡素な部屋だ。


立てつけてあった時計で時間を確認し、もう時間がないと悟った。

どうしようか…。


ふと部室を見渡した時、机の上にメモ帳がおいてあったのを、俺は目に留めた。


***

「それでどうだった?」

「どうとは…?」


あの後、ノエルをお姫様抱っこで保健室まで届け、急いで授業に間に合わせた。

ノエルは結構軽かった。後で言っておこう。


二時間眠気と戦い、長く感じた帰りの会も無事済ませ、下駄箱に行くと圭吾は親切にまっていてくれた。


「俺を見捨ててノエルと行った部活だよ」

「見捨ててはないぞ…ノエルさんを優先させただけで」

「隆也はノエルを選ぶのか…。くっ。それで、どうだったんだよ」


なかなか不機嫌そうな問を突きつけられ、俺は考え込んだ。。

あのメモ帳に描いた置き手紙は、ちゃんと読んでもらえたのだろうか。


「ま、なんとかなるでしょ」

「それフラグだぞ」


***

後日。


『入部、可。今日の昼休み、部室に強制』


と端的に書かれたメモ用紙が、俺の机の上にぽつんとおいてあった。

ちなみにノエルは今日は欠席で、少し寂しい。あの笑顔は結構好きだ。


「行けばいい、のか…」


もやもやしたまま、メモを折りたたみ、胸ポケットにしまった。


一体誰がこれを書いたのか。

そもそもあれが日本研究部と言えるものなのか。


「なんか、面白そう」


楽しみな笑顔を浮かべ、俺は席に着いた。


ちなみに。

この後、クラスメイトからは、悪巧みしているように見えたという、朝からショッキングな知らせを聞いた。

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