「そっか、まずは友達からか」

 白石さんと別れ、僕は喫茶アカサカに足を運んだ。きっと青山さんが待っていると思ったからだ。案の定、店内で赤坂さんとコーヒーを飲んでいた。僕は二人に先ほどの結末を話すと、青山さんは安心したような表情を浮かべた。

「それにしても、すごい話しだね。おじさんは着いて行けないよ」

 赤坂さんは困ったような表情を浮かべた。

「誰も着いて行けないよ。まあお互いこれから成長すれば良いんじゃない?」

 ぶっきら棒に言う青山さんに、僕は聞きたい事があった。

「青山さんはどうして白石さんの秘密が嘘だって気付いたんですか?」

「ああ、そんなの簡単だよ。まず煙草については三点気になる点があってね。

 一点目はライターを持っていなかった事。煙草を吸う人でライターを持っていないなんて考えにくいからね。

 二点目は煙草が新品だった事。あの日黒田が持ってきた煙草の箱は未開封だったからね。普通は買ったらすぐ開けるもんでしょ。

 三点目は銘柄だね。若い女性でアメスピを選ぶなんてあまり聞かないからさ、きっと父親か兄弟の煙草を持ってきたんだろうなーって思ったわけ。まあ、全部勘だけどさ」

「援助交際については?」

「それはもっと簡単。出てくるのが早すぎたんだよ。私がホテルの前で白石さんを見たのが二十時四十五分頃で、黒田が店を出たのが確か二十一時十分頃だろ? どんなに早くても三十分足らずでホテルを出るなんて考えにくかったからさ。これもまあ勘だよ勘。あとは白石さんの過去の話を黄木から聞いて、これは拗らせ女子の行き過ぎた妄言だなって考えたわけ。このままじゃもっと拗らせそうだから黒田を呼んで私の考えを伝えようとしたんだけど、その前にあの電話だろ? あー遅かったって思ったよ。まさか父親を殺したなんて大それた嘘を言うとは考えもしなかったけどね」

 青山さんの勘には驚かされる。いや、勘ではない。人を観察できているのだ。きっと相手のことを考えたコミュニケーションが取れているんだろう。僕は今までそんな青山さんの表面しか見てなかったのだ。青山さんだけではない。今まで出会った全ての人の表面しか、僕は見ていなかったのだ。これからはもっと他人を知る努力をしよう。そう誓って、ふと窓の外を見ると、そこには綺麗な満月が顔を覗かせていた。

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