第8話
ずっと考えていた。
どうしてあの時、綾があんなことを言ったのか。
もしかしたら綾も私のことを想ってくれていたのか。
なんて、虫のいいことを考えてしまうけど、違うだろうな。
その数時間前に、好きかどうかわからない。って言われたばかりだったし。
私を守るため?
そのために綾が悪者になった?
きっと、そうなんだろう。
でも
答えは本人に聞かなきゃわからない。
あれから、連絡も取っていない。
携帯番号は変わっているのか。
どこに住んでいるのか。
友人の誰かに聞けばわかるだろうか。
それよりも肝心な問題がある。
連絡先が分かったとして、
綾は、私に会ってくれるだろうか。
そんなことをウダウダ考え続け、3ヵ月が過ぎたある日。
高校時代の友人である一美から連絡があった。
妹の家庭教師をして欲しいって?
一美の妹には何回か会ったことがある。
確か中学3年になったはず。
高校受験かぁ。
高校受験に失敗した私でいいんだろうか。
とりあえず、ご飯でも食べながら話を聞くことになった。
「祥子、久しぶりだねぇ」
「うん、一美は相変わらず元気そうだね」
「元気だけが取り柄だもん、祥子は?元気じゃないの?」
「まぁ、ぼちぼち」
「え、なに?失恋でもしたの?」
「え…」
「え?図星?」
ごめん、そんなつもりじゃなかった。って小さく呟いた。
「ねぇ、お姉ちゃん」
私を紹介してよ。と
隣に座ってた可愛らしい子が主張する。
「あぁ、何回か会ったことあるでしょ?」
「うん、美樹ちゃんでしょ?」
「あ、覚えててくれたんだ」
とびきりの笑顔だ。
「なんだっけ?家庭教師?私なんかでいいの?」
「うん。美樹の希望で。まあ、そんな堅苦しいのじゃなくていいんだけど」
「美樹ちゃんは将来何になりたいとか、どこの高校に行きたいとか、希望はあるの?」
「はっきりとは決めてないんだけど、医療関係に進みたいと思ってます。高校はその選択肢が広がるようなところ、ぶっちゃけ出来るだけ偏差値の高いところがいいです」
「ねぇ一美、ほんとに一美の妹?」
「どういう意味?」
ふふ
二人で笑った。
そっか、医療関係か。
「わかった、私に出来るだけのことはするよ」
その代わり。
と、一美に交換条件を出した。
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