第6話
「わかばの匂い」6
夕焼け小焼けの後に母親が到着した。
母親の顔を見てなんだか凄く安心した。昨日の朝が遠い昔のように思えた。
母親は「健太、一人で来れて偉かったね」と言いながらお寿司を渡してくれた。紙袋の中には三人前入っていた。
「お父さんに言われた門のお寿司屋さんで買ってきたよ」
「そうそう、あそこの寿司は美味いからな幾らだった」
「お金いらないよ」
「そうかぁよし食べよう。健太はたくさん食べろな」
「うん」
「なるほどね芳夫達が居ないから今日来るように言ったのね」
「そうだよ。あいつらうるさいからな、あとで健太連れて競馬場行ってくる」
「競馬場」
「今日は花火大会だよ」
「そうなんだ。健太良かったね」
「うん」
祖父はまたニコニコしている。母親と僕の前ではニコニコしていて弟夫婦と祖母の前では無口に怒ってる顔をしているのが不思議だった。
夜になると母親は留守番してると言い祖父母の家に残った。
祖父と二人で近所の競馬場へ向かった。
競馬場への道には夜店がたくさん出ていたが祖父は見向きもせずに足早に進んでいくのであった。僕は必死に人混みの中の祖父の背中を追い掛けた。競馬場の入り口は人でごった返していた。全く進めない中で祖父のシャツの裾を掴むのがやっとであった。
つづく
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