第2話 ほんの数秒で。

 「電話、かけていい?レポート進まなくて」

「もちろん。」

咲のそっけない返信。それがたまらない。

でも、レポートなんて言い訳に過ぎなくて、そんな事はどうでも良くって。

僕はただ繋がっていたかった。気がつけば時計の秒針が2時間を刻んでいた。

無言が続き、夜空が濁り始めた頃、咲は呟いた。

「ねえ、うち来ない?なんか…その…会わない?」

薄月の光が部屋に入り込んだ。

シャツを着て、爪切って、コンビニ寄って、少し早歩き。

「お邪魔します。」

咲の目を見るとわかった。言葉なんていらなくて。

ほんの数秒で彼女の瞳に堕ちていく。

灯りを消して、唇を交わす。咲の指が僕の頬を滑る。首筋にキス。すると少し咲の体が強張った。握られたシーツが彼女の思いを露わにする。

咲はめを合わせない。声は抑えてる。きっと心も。言葉を発さずに。何か答えを求めるように。


 体を起こす。なんだかろう、電話してる時より寂しい。

朝日はまだ登らない。iPhoneの充電は消え失せた。

「わたし、もう一回康平と話してみる。」

目を逸らしていた。でも咲はずっと。

「あっそう。そのために、呼んだの?」

「…」

決意のためか。いや、決定に理由をつけるためなんだ。

はやく帰ろう。朝日は浴びたくないな。きっと火傷の痛みがわかるから。

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