第71話 戦争の結末

71.戦争の結末








日帰りでダンジョンへ行って村へ帰ると数日ゆっくりしてまた日帰りでダンジョンへ行ってを繰り返し2ヵ月ほどが経った。


街へ行くたびに確認しているが戦争はまだ終わりそうにないらしい。攻めて、攻められてを繰り返して中々決定打が無く決着がつかないようだ。

最初の数週間は街もピリピリしていたが1か月が経ち、2ヵ月、3ヵ月が経った今、流石に緊張状態が続かなかったのか戦争前の雰囲気に戻ってきている。


ダンジョンの攻略は最初に20層も一気に行ったので後は楽なもんだなと思っていたがそうでもなかった、20層一気に攻略した日は思ったより疲れていたのか半日ほど寝てしまった。

なので疲れすぎないようにもうちょっとゆっくりダンジョンを攻略するようにした。


2ヵ月ゆっくり進んで今はやっと50階層まで行けた所だ。ルガード達と来たところまでソロで来れたって事だ。


今日はそのダンジョンの続きだ。50階層からどこまで行けるか。




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「グガァッ!」


「っと危ない、もうちょっと距離を取るべきか。」


オーガの右腕の一振りを結界に乗ったまま後ろに下がり躱す、気づかないうちに近づきすぎていたようだ。

下がるのと同時に待機させておいた氷の結界を飛ばして凍らせる。


「ガッガァァ.......」


オーガの体がパキパキと音をたてて凍っていきそのまま光になって消えていった。ドロップ品は角と牙と魔石。

一回体が消えてから出現するドロップ品は倒したやつに直接生えていたやつでは無いとは思うが何となくばっちくおもってしまう。



名前:ケイ   15歳

LV 45


HP110/110 MP216/216


体:85

力:78

魔:160

守:75

速:112



スキル 言語理解  結界術LvMAX  錬金Lv1



いつの間にかレベルが45になっていた。積極的にレベル上げをしていたわけでは無かったが思っていたよりレベルが上がっていてびっくりした。

どこまでレベルが上げれるか分からないが出来る事ならルガード達と同じぐらいのレベルにはしたい。


っていうかレベル上限とかってあるんだろうか?99?100?やっぱそれぐらいなのかな?



「お、またオーガか。」


少し離れた場所にまたオーガを見つけたので今度は近づきすぎないように遠くから氷の結界で倒していく。


凍って消えていくオーガを眺めてから落ちたドロップ品を拾って、再び結界で移動し始める。

今日は55層まで行けたらいいな。




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「クスラー元気かー」


『んぁ?あーケイやんか、どうかしたん?』


「調子はどうかな?って思ってね」


『別に調子は悪くないでー』


「ならよかった。」


最近は一緒に行動することがなくなったクスラだが、今は村に作った大き目のプールみたいな物に浸かって泳いでいる。

元々クスラは水の中で生活する生物らしいからその内村にプールを作るつもりではあったが中々機会がなかったのでここまで伸びてしまっていた。


そんなクスラだが、プールの中にはクスラと同じクラゲスライムが3匹ほど泳いでいる。


そう、3匹だ。プールを作ってから数週間立ったある日突然クスラが分裂して増殖したんだ。


その日は大変だった......突然増殖するクスラに驚きすぎて何かの病気かと思い街まで行ってめちゃくちゃ調べた。

そうして分かったのはクスラの種族であるクラゲスライムは環境が整うとそれぞれが分裂してその数を増やしていくって事だ。どうやら今まではその環境が無かったらしい。


分裂した個体は同一の存在なのか?って所はクスラに効く限り別々の存在らしい。ただし記憶は受け継ぐとのことだ。

受け継がれるのは記憶の中で生きていく上で必要な事だけらしい。どこのどいつの誰々の記憶はないが、何が危険で何が安全かを最初から知っているらしい。


そんなわけでクスラは自分の子供?分身?が出来たのでお出かけに連れて行くことは無くなった。

クスラが希望するなら連れて行くことも考えたがこれからまだまだ分裂して数が増えるそうだし。今んとこはクスラも満足しているようだからこのままにしている。


因みにこのプールたまにティナちゃんが泳いでるのを見かける。まぁ、楽しんでくれているのならいいが......



「あ......」


指輪が光っている、どうやら誰かから連絡が来た用だ。ルガードだろうか?戦争終わったのかな?


『はい、ケイですけど。』


『久しぶりね?元気にしているかしら?』


クラリエさんか......前回連絡が来た時は妹さんの護衛依頼だったけど、今回は何だろう?っていうか戦争はどうなったんだ?


『元気ですよ、クラリエさんの方も変わりないですか?』


『えぇ、私も変わりないわ。それで、早速で悪いのだけれど屋敷にこれるかしら?直接会って話したい事があるの。』


『分かりました、お伺いします。』


『えぇ、待ってるわ。』


相変わらずハイ以外無い感じの会話だが、やっぱり戦争に関わる事なのかなぁ?できればそれ関連じゃなければいいけど。

取り合えず出かける事を村長に行っておくか、話の内容によっては数日帰れないかもしれないしな。




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「どうぞ、お通り下さい。」


街に着いてすぐに屋敷へ行くと、前回とは違い丁寧に門番に通された。扱いの変化に戸惑ったが気にしてもしょうがないので出来るだけ顔に出さないようにして通っていく。

門の先にはメイドさんが待機しており、そのまま屋敷内へと案内された。


通されたのはいつもの部屋だ、ルガードみたいな大きい種族でも部屋に入る事のできる。多分この屋敷の中でも特殊な造りになっている応接間。


「お?ルガー....どうしたんだそれ!?それにフェイも!」


部屋の中に入ると右にクラリエさん、そして左にルガードとフェイがいた......が、ルガードの左腕が無かった。それにフェイも体に包帯が巻かれていて怪我をしているのが分かる。


「おう、落ち着けケイ。大丈夫だ、たいしたことない。」


「たいしたことないって......ルガード、腕が無いんだぞ?それにフェイも、ひどい怪我じゃないか。」


治療はしなかったのだろうか?この世界に来てからあいにく回復魔法にお目にかかったことは無いが回復薬があるのは知っている。等級の高い回復薬を使えば怪我を治せるんじゃないのか?


「落ち着けって、今はこんなんだが腕についてはあてがある。それにフェイの怪我についてもだ。だからまずは落ち着け。」


「私も大丈夫よ、見た目ほどひどくないわ。」


「はぁ......ふぅ、取り合えずは分かった。戦争でそうなったのか?」


「あぁ、そうだ。」


ルガードの近くのソファへどかっと座り大きくため息を吐く。それにしても戦争か、やっぱりやだな.......


「話しをしてもいいかしら?」


「あ、はい。ごめんなさい。」


存在を無視されていたクラリエさんが少し怒ったような目つきで見てくるので反射的に謝ってしまった。

改めて彼女を見てみると戦争で疲弊しているのか少しやつれているようにも見える。


「ケイを呼んだのは頼みたい事があるからよ、そのためにまずは戦争の話すをするわ。いいわね?」


「はい。」


やっぱり戦争の事で何かあったのか。


「まずは事の起こりから話すわ、戦争をする相手になったのはお隣のゲルツ帝国。戦争に至った理由としては今までにあった積み重ねが、ついこの間あったドラゴンの件で堪忍袋の緒が切れたって所よ。」


ふむ、ドラゴンをクラリエさんに買い取って貰ったときにも教えてもらっていたがゲルツ帝国は本当に何度もこの国に対してちょっかいをかけてるんだな......そしてついに我慢できなくなって戦争か。


「そうして始まった戦争は長引いたわ、最初はあれだけ意気揚々と戦争になる原因を起こしていたのだからよっぽどの策があるのかと思っていたのだけれど。どうやら考えていた作戦はうまくいかなかったみたいでね膠着状態になったのよ。」


作戦ねぇ。


「その作戦って何だったか分かってるんですか?」


「えぇ、分かっているわ。ゲルツ帝国は奴隷をつかい魔法生物を作り出していた。それを戦争で使うつもりだったらしいけれど、レヴィリアント王国が奴隷達を解放していったせいで出来なくなったみたいでね。作戦がとん挫したのよ。」


おぉ......奴隷達を集めていたのはそのためだったのか...何とか救うのが間に合ってホントよかったな。っていうか以前に人体実験してるって話しを聞いてはいたが奴隷をつかってやっていたのか。


「使うはずだった作戦が使えず、かといってこれと言った策もない。そうやってどんどん戦争が長引いていったのよ。そして気づけば3ヵ月、ついに痺れを切らしたゲルツ帝国は自国の兵士をキメラにし始めたのよ。」


「うわぁ......」


流石にドン引きだ。彼らからすれば奴隷も兵士も変わらないって事なのか。


「それでも私達は戦ったわ。そして負けなかった。そうしたら出てきたのよ、帝国にいるって話しだった転生者が。」


「あー、いるって言うのは聞いたことがあるけど本当にいたんだ.....」


確かこの国にもいるんだよな?


「えぇ、なぜか戦場に出てきた転生者は何かわけのわからない事をわめくと自分をキメラにしてしまったのよ。そうして現れたキメラはこれまでとは比較にならないほどでかく強かった、戦争に参加した冒険者が次々とやられていったわ。」


「そこで俺の登場ってわけだな。」


後ろで一緒に話しを聞いていたルガードが会話に入ってきた。いつの間にかまたステーキを食べているがあれが通常運転なんだろう......


「転生者が元になったキメラはオーガのような体躯に角が生えて、ドラゴンのような尻尾が生えていて、腕は6本もあった。目は正気じゃなく明らかに暴走しているのがわかった。そいつが暴れまわったんだ、そりゃもうえげつない戦いだったぞ?」


自分自身でキメラになった転生者か、何を思って自分でキメラになったんだろう。

オーガの様な見た目に尻尾に腕が6本か......想像できないな。


「キメラは強かった、俺の左腕を持っていきやがったんだからな。でも何とか倒した、倒したんだがそこでさらに問題が起こった。倒したやつからマナがあふれ出し戦場が魔境になっちまったんだ。」


「魔境?」


「魔境とはマナが異常に溢れている場所で、そこではまともに人が生きていけない環境になるのよ。放っておくと人には到底倒せない魔物が現れる事になるわ。」


「なるほど?恐ろしい場所なんだな。」


「そこで、あなたにお願いしたいのよ。ケイ、結界スキルを持っているわね?」


流石になんのスキルを持っているか情報は共有されているか。きっとルガード達から聞いたんだろうな。


「あぁ、持っているけど。結界で何かするって事か?」


「えぇ、そうよ。結界スキルでは封滅の効果をもった結界を作り出す事が出来るの。ケイにはそれを作り出してもらって魔境になっている場所を元の状態に戻してほしいの。」


「封滅の結界......それってどんな効果があるんだ?」


「封滅とはマナを消し去ることよ、それを使う事で魔境に満ちたマナを無くすことが出来るの。」


「それってかなり危ない効果では?」


マナなんてこの世界に必要な要素だ、地球で言うなら酸素を消し去るようなもんだ。そんな効果のある結界を作って大丈夫なんだろうか?


「えぇ、危険よ。封滅の効果を知っているのは一部の貴族だけ。庶民が知っていてもし悪用すれば即死刑よ。」


「え~.....」


そんな恐ろしい事教えないで欲しい。


「私が知っている結界持ちはあなただけなのだから我慢しなさい。」


「はい......」


「私の用はそれだけよ、構わないかしら?」


「わかった、俺に出来る事ならするよ。」


「えぇ、まかせたわよ。」


そう言ってクラリエさんは紅茶を飲み、休憩タイムに入った。もう話しはないって事だろう。


後は現場に行って封滅の結界を使うだけだ。その前にルガードと話しをしよう、腕の事とかフェイの怪我、ここに居ない3人の事も気になるしな。


戦争か、やっぱり嫌なもんだな誰かと争うなんて。




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