第70話 ダンジョン再び
70.ダンジョン再び
「ふぁ~っあー眠い。」
眼下に広がるのは見渡す限りの森、結界で空を飛び町へと向かっている最中だ。
毎日のんびりと過ごしていたが流石にずっと動かないでいるのも逆にしんどくなったので、たまにはダンジョンへでも行こうと思い立ちダンジョンのあるレントの町へと向かっている。
ダンジョンへ行くと言っても日帰りのつもりなので町にはとどまらないつもりだ。こういったときに空を飛んで移動できるのは便利だとつくづく思う。
村に銭湯が出来上がった日から1週間ほどが経ちルガード達が戦争に行ってからそろそろ一か月が経つ。
あったかいお湯に入れる銭湯は受け入れられみんな毎日入っているようだ。あれからティナちゃんが肌をかいているのを見なくなった。
村長なんかは余程気に入ったのか一日に2~3回は銭湯に入っているようだ。そんなに入って逆に大丈夫か?って思うがまぁ、今の所平気っぽいし何か問題が起きれば止めればいいかと思い何も言ってない。
レヴィリアント王国へサイスさん達と行かなかった若い独身男性二人、彼らは普段森で狩りをしており返り血はつかないものの多少は土などで汚れる。それをあたたかいお湯で流せるからと喜んでいた。先日出会ったときにお礼を言われたほどだ。
思ったより銭湯の影響はでかくてもっと早く作っておけばよかったなって若干後悔してた。けど、それはお風呂の存在とその効果をちゃんと知っている俺だったから気づいた後悔なんだろうなって思う事にしておく。知らなければできない後悔、そういった物もあるんだな。
今日これからダンジョンへ向かうのはのんびりしすぎて動かなかった体をほぐすために行くってのもあるが銭湯で仕える石鹸などを街で買うのも目的にしている。
多分売ってるはずだ......売ってるよな?
売ってなければ自分で作るしかないんだが......錬金があれば作れそうではある。だけど、だけれども。
考えてみて欲しい、異世界と言えば色々と知識チートがある、石鹸や美容品などのそういった物を扱った作品がいくつもある。
だけど考えて欲しい。普段みんな石鹸やシャンプー、そういった物の成分や作り方を考えて過ごすだろうか?
興味があればそれは調べたりしてみるだろう。成分を気にする人なんかはそういったところを見るだろう。だけど石鹸だったら何でもいいや、シャンプー?髪洗えたらそれでいいよっていう感じだった俺は気にしたことが無かった。
一応?幸い?にも石鹸はなんか油と灰を混ぜればできるって事は漫画や小説で読んで知っている。だけどそれだけの知識じゃぁちゃんとした物は作れないだろう。
そんなわけで街で買いたい。お金ならドラゴンをクラリエさんに買い取って貰ったときのがまだ残ってるし、足りなければ牛でも狩って買取してもらえばいけるだろう。
そうこうしている間にレントの町が見えてきた。門の手前で結界から降りて歩く、本音を言えばずっと飛んでいたいが流石にそこまで非常識ではない。ちゃんと歩くさ。
門番にギルドカードを見せ町へと入る、レントの町の冒険者ギルドへ向かいそのままダンジョン内へ。
周りには同じ様にこれからダンジョンへ入るであろう冒険者達がいる、その流れに合わせるように俺も歩いていく。
0階にある転移装置に手をあてマナを流し5階へ。相変わらず転移する瞬間はこのまま消えてしまわないか不安になる。
視界が光でいっぱいになり数秒もするとそれもおさまり視界が晴れる、間違ってなければここは5層のはずだ。
転移した瞬間結界で安全を確保して周りを見渡す、どうやら問題なさそうだ。そのまま進み6階へと行く。
6階へと降りてすぐ、ここで新しく作った結界の使い道を披露したいと思う。
最近気づいたんだが自分が作った結界はその存在がどこにあるのか脳内で分かるという事だ。今も村にある水の結界などは脳内でその存在を知ろうと思えばちゃんと確認できる。
普段は脳裏にちらつくのであえて無視しているがその気になれば結界がどこにあるか見れるって事だ。
この特性?能力?を生かして考え付いたのが結界の索敵だ。
前回ルガード達とダンジョンに来た時にフェイが魔法で索敵しているのを見て俺もそういった物が欲しいと考えていた、そこで自分が使える中でどうにかしたいと思い思い付いたのが結界でどうにかする事だ。
また結界かーと思われるかもしれないがこれしかないのだからどうしようもない。
普段結界を使う時はどれだけ小さく作ったとしても5センチまでだった。そこでふと思ったのが結界ってどれだけ小さく作れるんだ?って事だ。
試しに小さく作って見ると1センチのキューブはできた。そこからさらに小さく、さらに小さくしていって最終的にパッと見、埃にしか見えないほど小さい結界が出来た。
埃の結界......何かやだな、何かそれらしい名前を付けたいが......今度でいいか。
結界はそのまま作るとなぜかわずかに発光するので極小の結界をそのまま作ると蛍みたいに光って綺麗だ。
だけど今回使う結界は光っていると困るので光らないように闇に溶け込むようにその存在を薄くしていく。
この極小の結界をいくつも、いくつも作り。それを風に流れるように飛ばしていく。
飛んで行った結界は壁に当たると跳ね返りまた壁に当たると跳ね返り、何回も跳ね返りながらダンジョンの通路を飛んで行く。
脳内では飛んで行った結界の軌跡で6階層の地図が出来上がっていく。途中で魔物にもあたったのか人型に空白が出来るところもある。この、索敵結界術?とも言えばいいのか。これを本番で使ってみるまで知らなかったがどうやら魔物はこの索敵に気づいていないようだ。
この階層はまだまだ弱い魔物だから気づかなかったのか、強い魔物になれば気づかれるのか要検証だな。
脳内に6階層にマップがおおよそ完成したので歩き出す。
歩きながらも追加で極小の結界を飛ばし続ける、幸いにもこの索敵結界は消費マナが自動回復を下回っているので無限に使える。
一応索敵結界で魔物の位置が分かっているので突然出会う事はないとは思うが用心のためにいつもの氷の結界をいくつかつくって待機させておく。
「お、早速近いな。」
すぐ目の前の曲がり角を曲がった先にどうやら魔物がいるようだ。できるだけ足音を立てないように近づきそっと覗く。
曲がり角の先、10メートルほど先にはコボルトが3匹まとまって歩いていた。
先手必勝で待機させていた氷の結界を3つ飛ばし倒す。コボルトの体がパキパキと音をたてて凍っていきそのまま光になって消えていく。
ドロップ品を拾い再び歩き始める。
「何だか余裕だな......一気に行っちゃうか?」
慢心しているわけではないが正直50層までは余裕な気がする。何ていっても結界は強い、チートだ。少なくとも氷の結界の一撃で倒せない程の敵が出るまで一気に進んでもいいんじゃないだろうか?
そうと決まれば一気に行ってみよー!
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あ、ほいっと。それっとあいつもっと。
「ふぅー、結構な数がいたな。」
倒した魔物から落ちたドロップ品をせっせと拾う。階層を重ねるごとにどんどん同時に出てくる魔物の数が多くなってきて、今倒した数はオークが10匹同時に出てきていた。
今いるのは23層、オークがいっぱい出てくるが前回ルガード達と来た時に倒したオークとは似ても似つかない。
分かりやすいのはまず装備、ルガード達と倒したオークは武器や防具を装備していたが今倒したオークは腰布しか身に着けていなくて素手だった。
次に体格。ルガード達と倒したオークはルガードと同じような大きさのオークだったが、今倒したオークはそれに比べたらかなり華奢にみえる。
同じ魔物でも随分と違うんだなぁ。
ここに来るまで1階層だいたい10分くらいで攻略してきた。結界で飛んで、結界で索敵して、氷の結界飛ばして魔物見つけるたびに倒して。
かなりハイスペースでここまできたので多分、後3日ぐらいかければ50階層まで余裕で行ける感じだ。
今の所コボルトとゴブリンとオークしか魔物が出てこないが。果たしてこの先見たことのない魔物は出るんだろうか?
途中で採取ポイントにいくつか出会ったので見かけるたびに一応採取しておいた。どれだけたまったかは分からないが少なくない数が溜まったはずだ。
ドロップ品も売れて、採取した薬草と鉱石も売れて。ダンジョンってお金稼ぎにちょうどいいんだな。
外じゃ狙った魔物と出会えるほうが少ないし。そう考えると階層で出てくる魔物が分かるダンジョンは狙って稼ぎやすい。
このまま生きていくだけなら今のままで十分だけど......俺は何をしたいんだろうなぁ。ダンジョンで魔物を倒すのも、色んな見たことない場所に行くのも。毎日が刺激的で楽しいが。
やりたい事がないんだよなぁー。漫画の主人公や小説の主人公、そういった物語の主人公は何かしら目的をもって生きている。
王道で言えば魔王を倒して元の世界に帰ったり?これって今はもう古いのかな?
「はぁーやめやめ。考えすぎるのは俺の悪い癖だなー」
その内やりたい事が見つかるだろう、そう思いたい。それまでは何となく生きて行こう。
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「石鹸ってここにあるので種類は全部ですか?」
「そうだよ、この辺じゃそれが一般的だね。」
「ふ~ん。」
手に取った石鹸を嗅いでみるとほのかに花の匂いがするが、何の花かはさっぱりだった。前世でも花の匂いなんて嗅いだところで種類が分からなかったし、異世界にきて聞いたこともない花も多いだろうし余計にわかるわけなかった。
「これって体洗う用?」
「髪の毛もいけるよ。」
全身いけるのか、じゃぁこれでいいか。
「じゃぁこれを......50個ほどください。」
「50個かい!?買えるんだろうね?」
「ちゃんとお金は持っていますよ。」
そう言って雑貨屋の店主である女性に金貨の入った袋を掲げる。
「わかったよ、じゃぁちょっと待ってな今計算するから。」
「はい。」
店主が石鹸の値段を数え始めたので何となく他の商品を見渡す、ここは雑貨屋なのでその名にふさわしく色んな物が雑多に置かれている。
スコップやピッケル、回復薬に他の何かのポーションっぽい何か。お皿からコップなどまで。
初めて入ったけどなんて言うか、こういうところは凄く異世界感がある。
木製のカウンターに、木製の棚。並べられた商品は地球では見ないような物ばかり。
明かりは恐らく魔道具か何かなのか。ロウソクとかの火の感じじゃない。
いいなぁ~こういうとこテンションあがる。
ダンジョンとかもっとファンタジー感強めの所に行っているのに、意外とこういった場所に異世界感を感じる。
「待たせたね、全部で金貨15枚だよ。」
「はい、じゃぁこれで。」
店主が腕を乗せているカウンターにアイテム袋から金貨を取り出して重ねていく。
「あいよ、まいどあり。またよろしくね。」
「はい、またなくなったら来ます。それじゃぁ。」
店主に挨拶して雑貨屋を出る、これで後は帰るだけだ。今はちょうど少し日が落ちてきたぐらいの時間。今から帰れば晩御飯をみんなで食べるぐらいの時間には間に合うはずだ。
その後は石鹸を渡して銭湯に入ろう。
明日は、何をしようかなぁ。
☆ステータス更新☆
名前:ケイ 15歳
LV 42
HP106/106 MP210/210
体:82
力:75
魔:154
守:72
速:108
スキル 言語理解 結界術LvMAX 錬金Lv1
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