第69話 穏やかな日々とお風呂回

69.穏やかな日々とお風呂回








「ぐっ.....あぁぁぁぁ~はぁ......今日もいい天気だなぁ。」


サイスさんにお願いされた獣人達の救出劇?から既に2週間ほどが経った。あれから毎日ゆっくりと過ごしていたので精神的な疲れはとれたと思う。


家の外で椅子に座ってのんびりしたり、クスラとティナちゃんと一緒に遊んだり。ティナちゃんに連れられて村の外で薬草採取したり。クスラ用の池っぽい物を作ったり。

まだ全部は出来ていないが、必要なくなった家を解体して畑の位置を移動させたりもした。


村の広さに比べて人が少なくなった、分かっていたことではあったがやっぱりそれでもちょっと寂しい気持ちになる。いっその事外壁壊して狭くするか?


「お兄ちゃん!」


「おはよう、ティナちゃん。」


「おはよう!今日はなにする?」


「どうしようか?ティナちゃんは何かしたい事ある?」


「う~ん、今日は狩りに行きたいかも!」


「わかったよ、それじゃぁ朝ご飯を食べたら行こうか?」


「うん!」


と、まぁこんな感じで毎朝ティナちゃんがやってくるので一緒に行動する事が増えた。そしてどうやら今日は狩りに行くらしい。


ティナちゃんはさすが獣人ともいえばいいのか、まだ子供のはずなのに身体能力がかなり高い。普通にゴブリンとか余裕で狩っちゃうレベル。


見た目的にあんまり危ない事はして欲しくないが、それはエゴってもんだよなぁ。この世界じゃ普通の事なんだろうし。


朝ご飯を食べに行ったティナちゃんの背中を見ながらそんな事を思う。






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「あった!はい、これロロ草。」


「はい。」


現在地は村の外のすぐそこ森の中。ティナちゃんは動きやすい恰好をしていて、俺もいつもの装備を身に着けている。

今ティナちゃんに渡されたのはロロ草、薬草の一瞬でこれを使う事で傷に効く薬を作れる。俺はそんな薬草の事なんて知らなかったがここ数週間でティナちゃん先生に教えてもらって色々知識をつけた。


森の中を歩く時は周りに氷の結界を待機させておいて、何が起きても大丈夫なようにしている。

警戒しすぎかもしれないがティナちゃんの安全を考えると過剰なぐらいでちょうどいい。まぁそうはいっても.......


「あ!ゴブリン!っと。はい、お兄ちゃん。」


「はい。」


あ!ゴブ、の時点でティナちゃんは既にゴブリンを片手剣で倒していた。


とまぁそんな感じでゴブリンぐらいならティナちゃんでも余裕で倒せるみたいだ。しかも動きが早すぎて一瞬見失うほどのスピードで倒していて、下手したら俺より強いんじゃないかと思うほどだ。


「今日はどこまで行くの?」


「ん~、あっちの方に池があったから行ってみたい!」


「了解。」


ティナちゃんに連れられて森の中を進む、どうやらティナちゃんはこの辺の森の事なら何でも知っているようだ。俺が知らないだけで何回も森に来てたんだろうなぁ。


今まではあれやこれやとやる事がいっぱいでまともにみんなと交流してなかったから、これからはもっとゆっくりしたいな。

こういっちゃぁあれだけどルガードは戦争に行っちゃって、サイスさん達は獣人の国に行ったから。

俺から何か用事を作らない限りは今はのんびりと出来るんだよなぁ。


ただまぁこの世界に来てもうどれぐらいだ?数か月?あれ......思ったより経ってないな....?何だかもう1年ぐらいたった気分だったけど実際はそんなにだったな。

この数か月新しい出来事が沢山で時間の感覚がおかしくなっていたようだ。


「お兄ちゃん、池はあそこだよ!」


「お?おぉ、綺麗な所だね。」


ティナちゃんに案内されて着いた場所は直径2~30メートルほどの丸い池だ。これぐらいの池って大きい池なのかな?それとも小さ目なんだろうか?


「ここでお昼ご飯たべよ?」


「そうだね。丁度よさそうだ。」


二人で池の近くに腰を下ろす。足を延ばせば池につま先が入りそうだが、この池は魔物とかいないんだろうか?ティナちゃんの様子を見る限り大丈夫そうだが。


「はい、どうぞ。」


「ありがとう!」


アイテム袋から取り出したのは出かける前に作ったサンドイッチだ。あの何たらとか言う牛のお肉に塩コショウした物にレタスっぽい物を挟んだ物とスクランブルエッグを挟んだだけの二つだ。


欲を言えばマヨネーズとかお肉の味付けも醤油とかみりんが欲しかったが。この世界にあるんだろうか?俺がくる以前よりも前から転生してる人はいるんだしありそうなもんだけど。


異世界テンプレ的な東の国とかあるんだろうか?気になってきたな.......ってだめだめ少なくとももう何週間は村でゆっくりしたいんだし考えないでおこう。


ずっと村で過ごせたら一番いいが、この国はお隣と戦争中だし。生きていくには多少のお金が必要だから魔物を狩ったりしないといけないし。

考えれば考えるほど中々のんびりとはいかない世界だなぁ。貴族とかになればまた変わってくるんだろうか?

いや、貴族は貴族で大変そうだな。礼儀作法にお茶会?にパーティーの出席とか?後は派閥もあるんだろうか?


うーん、どうにか不労所得でのんびり暮らせないものか......


「お兄ちゃん!美味しいね!」


「美味しいねぇー」


味付けはシンプルだが普通にうまい。


風で木々の葉っぱが揺れて心地よい音が聞こえる。池の水のおかげかこの辺は村よりも涼しいし。大き目の結界を周囲にはっているので魔物の心配もない。


今日はもうここで昼寝でもしようかなぁ?




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「これで最後っと。」


家だった物が分解されて崩れていくガラガラと言う音が聞こえてくる。今やっている作業は残っていた最後の家の解体だ。サイスさん達が出て行って必要無くなったので解体していたんだが、こうやって無くなると空き地が広くて寂しい気持ちが湧き上がってくる。


畑の規模も人がいなくなったので、ちょっとしかない。何故か知らないが、この世界での特性なのだろうか?野菜の収穫がやたらと早いんだよなぁここ。

最初は数種類しかなかった野菜も、いつの間にか知らない見た目の野菜まで栽培していた。

ほぼ村長に任せていたからまぁいいんだけど、野菜の種はここにくるって噂の行商人から買ったのかな?そのうち来ている所をみてみたいな。



家の解体を済ませてそのまま各所の点検をしていく。氷室に水の結界の所にそのまま水路、そして外壁に異常が無いかを見ていく。

暇がある時は毎日確認しているが。大きな問題はなさそうだ。ちょっと外壁にひびが入ってるのが気になるが、補修か作り直しかしたほうがいいんだろうか?

相当な重量があるだろうし、崩れるって事はなさそうだが......まぁその内でいいか。


「お兄ちゃん!おはようー!」


「おはよう、ティナちゃん」


今日も今日とて元気で可愛らしいティナちゃんがやってきた。今日はワンピースか、いいね。


「ん?ティナちゃん肌が赤くなっているけど、どうかしたの?」


「これ?えへへ、ちょっとかゆかったからかいてたら赤くなっちゃった。」


肌が痒い......か。真っ先に思い付くのは何かしらのアレルギー反応かって所だが、何か原因になるような物は思い付かない。っていうかこの世界の住人はアレルギーとかあるんだろうか?前世と同じような姿形をしているがその中身まで一緒だとは考えない方がいいだろうし。


後は思い付くのは清潔面?ちゃんとお風呂に.........あっ!そっか......そうだ。今まで考え付かなかったけどみんな水浴びで済ませててお風呂なんて入ってないんだよな。


やっべぇこれはかなりのやらかしかもしれない。俺自身は神様が用意してくれた家のお風呂があったけど、ティナちゃん達は水汲み場の水で体を拭いたりしてたんだよな.......

これまで水浴びで生活してたんだからお風呂の存在を知らなくて気にしてはいなかっただろうけど。俺はお風呂の存在を知っている、そしてその気持ちよさも。


今日はお風呂場を作るか。そうと決まれば早速行動だ。


「お兄ちゃんどこに行くの?」


「お風呂を作ろうかと思ってね。」


「お風呂って何?」


「ん~あったかいお湯の池?」


「なぁにそれ?」


「説明が難しいな......まぁすぐにできるから完成したら見せるよ。」


「は~い。」


幸い場所はいっぱいあいている、どこに建てようかな?後ろについてくるティナちゃんを連れて浴場を作る場所を適当にきめる。


「ここでいいか。」


まずは結界で地面を押し固めてある程度整地する。次にアイテム袋からいつか使うかもと取っていた石の塊を取り出す。この石は錬金スキルで構築するときに使えるかもと暇なときに集めておいたのだ、早速役に立ったな。


石の塊を錬金スキルで再構築してお風呂場の床にする。一応それっぽく大理石みたいな感じにして色は黒くして排水口も作りあふれたお湯がここに溜まらないようにしていく。流れたお湯は水汲み場の水路につなげてそのまま川へ行くようにしていく。


お風呂場の壁も同じように作っていく。広さは前世にあるような銭湯ぐらいの広さにするつもりだ、大きすぎる気もするが小さいよりかはいいだろう。それにせっかくのお風呂場なんだ広いほうが楽しい。


石の塊が分解されてどんどんと銭湯が出来上がっていくのをみると改めてスキルの偉大さを感じる。

熱気対策に上のほうに少し空いた場所を作りそのまま天井まで作っていく。

そしてそのまま男湯と女湯を分けていく。


「わぁ~すごいすごい!」


ティナちゃんが後ろで喜んでいる声が聞こえる。何を作っているかはわからないようだが、どんどんと出来上がる様子が楽しいようだ。


がわは出来たので中に入って浴槽を作る。本当なら檜風呂みたいに木のお風呂にしたいが今持っている木が水に強くていい香りがするかどうかなんてわからないから残念だけど石造りにするしかない。


「ちょっと暗いな。」


上のほうが窓みたいになって開いているがお風呂場内は暗い、結界で明かりを作って等間隔に設置していく。お風呂場なので明るすぎないように、だけど暗すぎないように丁度いい塩梅を探って調整していく。

明かりの結界も水の結界と一緒で消すまでずっと残り続けるのでこういったときに便利だ。


追加で石の塊を出し分解、構築で浴槽を作っていく。大きさはティナちゃんが泳げるぐらいだ。水の量が凄いことになるが結界を使えば無限なので気にしない。


あれ?そういえば水の結界は出せるけどお湯を結界で出せるんだろうか?試してなかったな。


慌ててお湯が出るようにイメージした結界を作り出す、想像する温度は前世でよく入っていたお風呂の熱さだ。

作り出した結界から湯気の出た水が出てきたので試しに触ってみる。


「いい感じだな。」


そして相変わらず結界術の万能性が怖い。いくら何でも便利すぎないだろうか?もしかしたらこの世界にある結界術のスキルとは別物かもしれない。

そう思えるほど神様にもらった結界術のスキルは有能だ。


お湯が出る事がわかったので浴槽を完成させていく。男湯、女湯両方同じ大きさにしておく、大きさが違っても不満は出ないだろうけど気になるしな。


そうしているうちに両方の浴槽が完成したのでそれぞれお湯がでる結界を作っておいて流れていくように設置していく。

これで後は時間が経てばお風呂が出来上がるだろう。


お風呂場から外にでて次は脱衣所を作る、こっちは形を作るだけだから一瞬だ。新しい石の塊を出して前世でよくあったような服を脱ぐ場所と棚を作っていく。

入口を二つ作り、男湯と女湯で分けていく。後は布か何かでどっちがどっちかわかるようにすればいいだろう。

あ、番台は......流石に要らないか。


銭湯から外に出て外壁を新しい石の塊で作っていく。このままだと壁が薄すぎるからね、それに覆うだけだから一瞬で出来る。


「ケイ殿。これは一体なんじゃ?」


丁度銭湯が完成した瞬間村長がやってきた。見知らぬ建物が出来上がって気になったんだろう。それにしてもタイミングがいい。


「あ、村長。丁度良かった、ここにお風呂場を作りました。暖かいお湯に入って体を洗う所です。」


「お風呂場.....?暖かいお湯でのう?ふむ、よくわからんがどうやってつかうんじゃ?」


「そうですね......一緒に入ってみましょうか。」


村長を連れて銭湯に入る。


「ここで服を脱いでください。」


村長にそういいつつ俺も服を脱いでいく。


まだ扉も何もないお風呂場に入っていき浴槽を見てみるがまだ完全にいっぱいにはなっていないようだがつかるぐらいなら大丈夫そうだ。


「あ、桶が無いな......ちょっと待っててください」


お湯を体にかけようとして桶が無い事に気づいた、慌てて脱衣所に戻りアイテム袋から木を出して錬金で桶を作る。


「これでお湯をすくってまずは体を一回洗い流します。」


村長にお手本を見せるように桶でお湯をすくって体にかけていく。自分にかけ終わったら村長にもお湯をかけて流していく。


「そして、このお湯につかります。」


あぁぁぁぁ~気持ちいぃ~やっぱりお風呂はいいな......。横を見てみると村長も同じ様に浸かって気持ちのよさそうな顔をしている。


「こうやってお湯につかって体の疲れをとったりするんですよ。それがお風呂です、どうですか?」


「うむ、これは気持ちいいのう。」


「お兄ちゃん!これ凄いね!」


はい、気づかないふりをしていたが当然一緒にティナちゃんもいましたとも。できるだけそっちに視線を向けないようにはするがティナちゃんには羞恥心ってものがないんだろうか......。






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