第68話 レヴィリアント王国

68.レヴィリアント王国








「見えてきました、あそこが村です。」


「ほう、いい所だな。」


「そうですか?」


「あぁ、自然が多くて私達獣人からすると落ち着ける場所だ。」


自然が多くて....っていうか自然しかないからなぁ。結構無理くりつくった村だし。


救出した獣人達をレヴィリアント王国の部隊に預けてから、俺とサイスさんとレインズさんの3人で森の村へ向かい。もう目の前って所まできた。

ここに来るまで結構飛ばしてきたけれどそれでも道中で一泊しないといけなかった。

というか一泊で済んだって言うべきか?もし結界で飛べなかったら何日かかったかわからないぐらいには遠いからな。


途中、ロアナの街の様子を見てみたがまだ復興中だった、何人もの人がガレキの撤去をしているのが遠目から確認できさらには、街の門が大きく崩れているのが見えた。どうやら丘の上で聞いたあの爆発音は街の門を壊した時の物だったようだ。



飛んでいるので森の村の門は通らず上空から村の中へと入る。そのまま村の中央辺りまで飛んで行ってから降りる。


「ワシはみんなを集めてくる。」


「分かりました。ここで待っていますね。」


「私もここで待っていよう。」


「おう。」


サイスさんは早速みんなを集めるために行動し始めたので俺とレインズさんは降りた場所で待機しておく。

近くにいた人達は何事かと既に集まっているのでサイスさんは遠くの人を呼びに行ったようだ。


「あ、村長。ただいまです。」


「ケイ殿、お帰りなさいなのじゃ。所で何事かの?」


「詳しくはみんなが集まってから話しますが......こちらはレヴィリアント王国の第1騎士団、団長のレインズさんです。」


「紹介に預かったレインズだ、よろしく頼む。」


「この村でケイ殿がいない間村長をしております、どうぞよろしくおねがいしますなのじゃ。レヴィリアント王国の騎士団、それも第1の団長様とは、遠い所遠路はるばるようこそお越しくださいました。」


「うむ、ご丁寧に痛み入る。」


村長、そんな丁寧に挨拶できたのか...ある意味驚きなんだが......。っていうかそんなに丁寧に挨拶しないといけないほどの相手って事なのか?第1騎士団、団長って聞いたときに偉いんだろうなぁってのは思っていたけど。これは想像以上にレインズさんって権力のある人物かも?


あ、そうこうしているうちにサイスさんが戻ってきた。


「ケイ殿!レインズ殿!すまぬ、何人か狩りにでかけておるようでな。夜にならないとみな集まらないみたいだ。」


「ふむ、それじゃぁ夜にでも宴会でも開いてみんなを集めますか?」


「それがいいじゃろう。」


「そうするか。」


全員に報告するんだ、どうせだし宴会でもして楽しい雰囲気の中報告したい。幸い?お酒はここにはないし酔って判断力が落ちるという事もないだろう。


「そういうわけでレインズさん、すみませんがもう少しお待ちください。」


「あぁ、構わない。それではどこか休めるところを頼めるか?」


「それならどうかわしの所へおいで下さい。」


「うむ、世話になる。」


村長がレインズさんの相手をしてくれるみたいだ。なら俺は森の村に帰ってきたらルーティーンになってる各所の点検でもいこうかな?

村長がレインズさんを連れて行き、サイスさんは集まっていた人達を解散させているので、俺も点検するために移動し始める。





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ぱちぱちとなる焚火を広場に幾つか作り、作られた焚火を中心にこの森の村にいる全員が集まっている。

村の各所の点検はいつも通り問題なくスムーズに終わった。石で作った部分の数か所はひびが入っていたが問題なさそうだったので特に修復はしていない。


まぁそんな感じで夜まで過ごしある程度飲み食いしてから、今はサイスさんがみんなを集めた理由を話している所だ。


「────と言うわけで希望する者がいれば獣人達の国、レヴィリアント王国へ行ける事になった。王国へ行った場合の詳しい話しはレインズ殿、よろしく頼む。」


「あぁ、任せてくれ。知らない者もいると思うから改めて自己紹介を。私はレヴィリアント王国第1騎士団、団長のレインズだ。我が国では現在ゲルツ帝国との戦争状態にある。戦争が起きるとのうわさ話が起きた頃と同時に王国ではゲルツ帝国にいる獣人達が連れ去られ、奴隷にされるとの情報を掴み、救出のため出動した。」


ゲルツ帝国ってこっちの国だけじゃなくてレヴィリアント王国、獣人達にまで戦争を吹っかけていたのか......大丈夫なのか?2国と戦争なんてどう考えても負けそうなもんだが、それを覆せるだけの何かがあるって事か?ちょっと気になるな。


「そしてゲルツ帝国にいる我が同胞達の救出作戦の内、最後の作戦の折にケイ殿とサイス殿が協力してくれた。二人の協力もあり作戦は無事に終わった。その後サイス殿と話していると。帝国から運よく逃れられた同胞がいると言う話を聞きここまでやってきた。君達が望むのなら王国では受け入れる準備がある。何か質問があれば受け付けるが?」


そう言ってレインズさんはみんなを見渡す。


あれって最後の救出作戦だったのか......まぁロアナの街って帝国からすれば辺境っぽい位置にあったもんなぁ。

それに王国では受け入れの準備があるってのも当然か......じゃなけりゃ救出なんてしないもんな。


「では、わしから質問をいいじゃろうか?」


「村長殿か。そうだな、私が答えれることならなんでも答えよう。」


「ありがとうございますじゃ。わしの質問はそうじゃな......。先ほど受け入れる準備があるとの事じゃったが、具体的にはどういった受け入れになるのじゃ?」


確かに、そこは気になるな。連れて行ったはいいけど国についたら解散じゃ困るもんな。


「うむ、そこは気になる所だろう。では具体的に答えたいと思う。───今回救出した者達も同じだが、王国へきてもらった場合まずは住民登録をしてもらう。これは王国のどこに、誰が、何人住んでいるかを国が管理するために必要な事だ。登録が終わった後はそれぞれ職業訓練所へ行ってもらいそこで判明した各自の長所を生かした仕事についてもらうつもりだ。」


ほうほう、かなりしっかりしてるんだな......?前世では普通の事だったが今世では珍しいやり方ではないだろうか?果たしてこれはレヴィリアント王国が独自に考え出したことなのか、それとも......この情報も気に留めておく必要があるな。


「住むところについては共同住宅になるが、全員が住めるだけの場所がある事は約束しよう。今後王国で過ごすにつれてそこから飛び出し独り立ちすることも可能だろう。と言うわけで王国へ来た場合の受け入れる準備はきちんと用意してある安心してくれ。」


住むところと仕事があれば衣食はどうにかなりそうだな。だけどまぁそれでも不安はありそうだなぁ。結局は実際に見てみないとどうにもならない。


「ふむ、丁寧な回答ありがとうございますじゃ。」


「他にも何か気になる事があれば────」


その後も何人からか質問が出たが一番気になる所を村長が最初に聞いたからか後の質問はそれほど気になる内容でもなかった。

どういった仕事があるかとか食事はどんな感じかとか。そういった質問をする人達はもうすでに王国へ行くことに決めているのだろう。質問の仕方からもそういったことがわかった。





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「ふぁ~あ。眠い......」


昨日はそれなりに遅くまでみんな話し合っていた。やっぱり自分達の行く末だからか真剣に話していた印象だ。

俺は途中で眠くなってしまったので退席したが、一体いつまで話してたのか......家を出てすぐに見える広場に数人野ざらしで寝てる所を見ると想像できてしまう。


「村長、おはようございます。」


「おはようなのじゃ、ケイ殿。」


家の前で大きく伸びをしていると村長が隣の家から出てきた。丁度同じタイミングで起きてきたようだ。


「意見はまとまったんですか?」


「うむ。」


「じゃぁ後で、みんな集まってから聞きますね。」


そういって俺は返事も聞かずに歩き出した。畑に水やりに行こうかな?とか。また牛でも狩ってこようかな?とか。色々考えていたけど結局は今、答えを聞きたくなかった。




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「それではまとまった意見を聞かせてもらおう。」


「うむ、皆いいな?それでは分かれよ。」


レインズさんに問われた村長は村人にそういうと移動し始めた。それを合図に他の人もどんどん移動して最終的には2グループに分かれる。


片方には村長にティナちゃんとそのお母さんのティリアさん。その他にも2家族ほどとまだわかめの独身の男性が2人。

もう片方には残りの人全員がいる。


これは......


「わしらはこの村に残る。こちらに分かれた者達をどうかレヴィリアント王国へ連れて行ってもらえるじゃろうか。」


村長.....残るのか。


「あい分かった、恐らくこれを逃すと王国で暮らせる可能性は低くなるとは思うが平気か?」


「うむ、皆できちんと話し合ったのじゃ。」


「わかった、それでは王国へ行く者は移動する準備をしてくれ。ケイ殿が移動を手伝ってはくれるが荷物は最小限にな。」


村長とレインズさんの話しが終わると王国へ行くつもりの人達はそれぞれ動きだした。


「村長......いいんですか?それにティナちゃんやお母さんに皆さんも......」


「ケイ殿には以前話したと思うのじゃが。わしはこの歳になるともう街での暮らしは難しくての。そっちの家族も同じじゃ子供もおらんし今更街では働けないじゃろう。そしてその男どもは街が怖いらしい、そういった理由じゃ。」


確かに以前そういった話を村長に聞いたが......大丈夫だろうか?先の事を考えると少し不安だ。っていうか若い二人は街が怖いって......結局は本人の意思での事だから俺は関係ないがそれでいいんだろうか?


「でもティナちゃんは?街で暮らした方が......」


「いいの!私、お兄ちゃんと一緒に暮らしたいから!」


おおぅ......ドストレートだな...


「でも、俺毎日村にはいないよ?これからも街に行って冒険者として活動するだろうし。そうするとティナちゃん寂しくないかな?」


「ううん。いいの、私ここでお兄ちゃんが帰ってくるの待ってるから.......帰って...くるよね?」


うぐっ......そりゃもちろん帰ってくるつもりではいるけど、そうやって真正面から面と向かって言われると言葉に詰まるな。


「もちろん、帰ってくるよ......でもいいの?」


「うんっ!」


チラッとティリアさんの方を見てみるがティナちゃんの意思が強いのか仕方ないって感じだ。


「わかったよ。今度からもっと頻繁に帰ってこれるようにするね。」


「うん!ありがとうお兄ちゃん!」


俺の返答に満足したのかティナちゃんはお母さんの所に行ってしまった。


あーぁ。これは覚悟を決めないとなぁ。俺がこの人達を養っていくんだ、たとえ相手に養われる気が無くともね。

これは俺の我儘だ。ここまで好意を寄せてくれいる相手を不幸になんてできない。この村に残ってくれるって決めてくれたんだ。俺も決めよう。


「ケイ殿。みんな準備出来たようだ。」


俺が覚悟を決めているとみんなの準備が出来たのか振り返ると荷物をもった人達が集まっていた。


「はい、それじゃぁ行きましょうか。」


「うむ、よろしく頼む。」


「それじゃぁ行ってきます、またすぐに戻ってくるので。」


「行ってらっしゃいなのじゃ。」


「お兄ちゃん行ってらっしゃい!」


サクッといってササっと帰ってこよう。俺が帰る場所はここなんだ。





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「あ、もしかしてあれですか?」


「そうだ。あれがレヴィリアント王国の首都、ジスリアだ。」


森の村を移住する人達を連れて飛ぶこと5日。思ったより遠くて時間がかかったが遠目にかなり大きい街が見えてきた。これまで何個か街や村を通り過ぎてきたが、今までみた中で一番大きい街だ。っていうか奥におっきな城が見える。


ジスリアの街は首都だけあってでかい。端の方なんてここからじゃ霞んで見えるほどだ。

獣人達の国の首都だからかその街模様はすごいの一言に尽きる。家と木が絡まりあって建っている。水路の設備もばっちりなのか、街には綺麗に水路がひかれているのが分かる。


すごい、ファンタジーな街並みだ......。物凄く観光したい。何があるのか隅々まで見てみたい。水も綺麗だし、家と木の融合が美しい。


「すごく綺麗な街ですね......」


「あぁ、ありがとう。そう言ってもらえると嬉しい。」


ジスリアの街並みを眺めながら自然と飛ぶスピードが落ちてしまう。もっとゆっくり見たくなってしまっている。


「ケイ殿。あそこに兵士がいるのが見えるだろうか?あそこへ降りてほしい。」


「ん? あぁ、わかりました。あそこですね。」


街が随分と近くなってレインズさんに言われた所を見ると旗をもった兵士が街の門の外に立っているのが見えた。

どうやら事前の報告はきちんといっているようだ。


「レインズ様!お帰りなさいませ。準備のほう、整っております!」


「うむ、ケイ殿。貴殿とはここでお別れだ、それでいいんだな?今ならまだ間に合うが......」


「レインズさん.....いいんですキチンと考えた上での事ですから。短い間でしたが楽しかったです。ありがとうございました。」


「こちらこそ、世話になった。これを、何かあればコレを持って来てくれ。話しは通しておく。」


「これは.....わかりました。受け取っておきます。」


「うむ。」


レインズさんは最後まで渋っていたがここで別れる事に納得したようだ。ただ、最後に家紋の様な物が彫ってあるメダルを渡してきた。恐らくこれがあればレインズさんと連絡が取れるんだろう。そういった類の物のはずだ。


「ケイ殿。ワシの我儘に付き合わせてすまなかった。そして、ここまで連れてきてくれてありがとう。この恩は一生忘れん!」


「サイスさん。最初お願いされたときはどうなるかさっぱりわかりませんでしたが、結果こうなってよかったです。結果良ければすべてよし!」


「結果良ければ全てよし......か。ははっその通りだの!それではいつかまた......。」


「えぇ、またいつか会いましょう。」


サイスさんとは最後に固く握手して別れる。その後も続く村人達と別れの挨拶をしていった。

サイスさんと一緒に逃げてきた人は関わり合いがすくなかったが感謝してくれているようで何回もお礼を言われてしまった。


村長と元々いた人達はそれなりに交流があったので少し別れるのがつらかった。だが彼ら彼女らはここで新しく人生を歩むんだ。笑顔で送り出そう。


「それじゃぁ、俺は行きますね。皆さん、お元気で!そして、またどこかで!」


「あぁ、ケイもな!また会おう!」


みんなに最後の挨拶をして結界で飛びあがる。サイスさんから始まったこのお願いには決着がついたが、まだまだ戦争は行われている。油断しないようにしないとな。


帰ってから何しようかな?クスラと遊べてなかったしティナちゃんも加えて一緒に遊ぼうかな?それとも街へいってダンジョンへ行ってみるか。


う~ん。やりたい事まだまだいっぱいあるなぁ。






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