第67話 合流
67.合流
「ケイ殿、これを。」
「ありがとうございます。」
レインズさん達が偵察ついでに狩ってきた獲物のお肉が焚火に当てられていて油が落ちてぱちぱちと音を出している。
他にもスープを一緒に作っており、そのスープをレインズさんが持ってきてくれた。
場所は変わらず一度治療するために降りた森の中の広場だ。怪我の治療が意外と時間がかかり、夜も遅くなってしまった。飛んで移動できるとはいえ夜間飛行は危ないので、こちらからここで一泊しようと提案した。
今はみんなそれぞれいくつかの焚火を作り暖をとっている。いくつかテントがたっているが想定よりも人数が多かったのかおさまりきっていない。
捕らえられていた人たちの中でも衰弱のひどい人順にテントで休んでもらっているようだ。
「明日からはどうしますか?」
スープを飲んでほっと一息ついたのでレインズさんに明日からの予定を聞いてみる。どう動くかは彼が決めるんだろうからね。
ちなみにスープは何かの野草に塩味が付いただけの物だ。飲めないことは無いけど毎日は無理だな。もう少しでお肉がいい感じになるだろうしそっちがちょっとキャンプ飯っぽくて楽しみだ。
実は食料は村を出る前にそれなりに貯めた込んだ物がある。救出した人達のためにあらかじめ準備していたものだ。
だけど中々言い出す雰囲気にならずまごまごしている内に料理が出来上がり今に至る。
明日......食事する時があれば食料を渡そう。毎回狩りに行かせるのは忍びない。
「そうだな、ケイ殿さえ良ければこのまま本国まで一緒に来てはくれないだろうか?今回の救出作戦で手伝ってもらった礼がしたい。」
「あー......いえ、お礼なんていいですよ。成り行きでここまで来たので、国に帰るまでは手伝います。だけれど、それ以上はお互いのために関わるのはやめましょう。」
「そうか......わかった。だが、感謝している事だけは理解してほしい。」
「はい、それはもちろん。」
少し冷たく突き離しすぎただろうか?
けど理解してほしい、これも考えた結果なんだ。
サイスさんに手伝いを頼まれたときから考えていた。捕らわれた人達を救出したとして、その後どうするつもりか。
現実的なのは他のみんなと一緒で、あの森の中の村に住む事だ。それが一番丸く収まるしそれがサイスさんの希望だったろう。
けれどレインズさん達の存在が出てきたことによって別の道もできた。本人達の希望によるだろうが、まぁこのままいけば自分達の国に行くだろうしそっちの方がいいんだろうと思う。
問題は.....だ。このまま俺も一緒に獣人達の国であるレヴィリアント王国へいって話しがややこしくなる場合だ。
前世でよくあったようなアニメや漫画、小説などの流れではこういった場合。王国へ行くとそのまま何かしらの騒動があるのは確実だ。
現実的にそんな騒動が起きるのか?って感じだが。現状これだけの騒動に巻き込まれているんだ、この先何かしらの問題が起きる可能性は低くない。
俺のスキルは自分で言うのもなんだが、かなり有用性が高いとおもう。今回しているように大勢を一気に運べるし。水を大量に出せるのも見せちゃったし。他にも何かあるんじゃないか?って。レインズさんが余程のバカじゃなければ俺のスキルの価値に気づくはずだ。
恐らく今回あった事は上司にあたる人物に報告するだろうし、その上司にあたる人物がどう判断するかもわからない。
獣人達の事は別に嫌いでもなんでもないし、本音をいうなら彼らの国で観光とかもしてみたい。
だけれど、今回帝国が獣人達を奴隷にしようと連れて行った事のように。こういった事件が起きている事はそれなりの人が知っているんじゃないか?だとすれば、人族に対していい感情を持ってない人も多いんじゃないだろうか?
そんな時期に現れる獣人達の救出に一役買った人族。俺だったら怪しいと思う。
まぁあーだこーだ御託を並べたが、言ってしまえば不確定要素が多すぎて関わりたくない。
異世界転生物のテンプレで言えばこういった場合は、このまま王国へいって。王様とかに感謝されて、王女様とでも婚約でもして。そのままハーレムでも築けばいいのか?
俺はそんなのは嫌だ。まだダンジョンだってまともに攻略してないし。ルガード達ともっと一緒に遊びたい。
それにハーレムは見ている側でいい、自分がその立場になりたいとは思わない。
この世界に転生して若返りはしたが。これでもおっさんなんだ。愛だの恋だのの人間関係はしんどい。
片手で数えれるぐらいの人数の友人で精一杯だ。
そしてそんな考えも別に相手には伝えるつもりはない。伝えてみないとわからないじゃないかって?やだよ、俺は平穏に暮らしたいんだ。
お姫様を助けたり、ドラゴンを倒したり。そういったテンプレ物は他にも転生している人がいるんだしそっちに任せる。
だから、頭の中でぐらいごちゃごちゃと考え事をしたっていいだろ?それぐらいは許してほしいもんだ。
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「おはようございます。」
「あぁ、おはよう。」
起きてすぐにレインズさんがこちらにやってきた。野ざらしでの野宿だったので疲れが抜けきっていないのだろう、どこか疲れた様子に見える。
昨夜、気まずい空気が流れたが国に帰るまでは手伝うといったんだちゃんとやろう。
「この後、テントを片づけたら準備をして出発をする。ケイ殿はそれまで休んでいてくれ。」
「わかりました。」
「よろしく頼む。」
レインズさんは報告を済ませると離れていった。やっぱり昨日は言いすぎちゃったかな?それとも気のせいだろうか?
あーやだやだ。考えないようにしよう。
「ケイ殿。」
「あぁ、サイスさんおはようございます。」
「うむ、おはよう。」
レインズさんと入れ違いで今度はサイスさんがやってきた、昨日は結局知り合いの人と話し込んでいたのかこちらに戻ってくることは無かったが。
「知り合いがいたようですが、様子はどうですか?」
「うむ、衰弱しているが怪我もないし休めば体力が戻って元気になるだろう。話を聞いてきたんだがどうやらさらわれた人たちは全員いるようだ。ケイ殿、今回のご助力感謝する。」
サイスさんはそういうと頭を下げてお礼をしてくれた。
やっぱりこの世界でも頭を下げてお礼を言うのかって思ったがすぐに切り替える。人にお礼を言われるのは不慣れで少し気恥ずかしいが、二回目だし少し慣れてきたようだ。
「いえ、いいんですよ。みんな無事でよかったです。あ、そういえば少し気になったんですけど。村に残してきた人達はどうしましょう?レインズさんに話して一緒にレヴィリアント王国へ行けるようにしたほうがいいんでしょうか?」
「あーそうじゃな......一度戻って話し合いたいが...一応聞いてこよう。」
「あっ、いっちゃった。」
余計な事言っちゃったかな?けどまぁ気になっていたことだしいいか。こういったことは早い事すませちゃったほうがいいだろう。
救出した人達の中にはサイスさんの知り合いがそれなりの人数がいる。と言う事は森の村に来ていた人たちの中にも知り合いがいるだろう。
あれ?もしかして村長達もレヴィリアント王国へ行きたかったりするんだろうか?でも、前に聞いたときは街へ行っても仕事につけるかどうかもわからないし、街での生活が不安だっていってたな。
けど、今回のこれはある意味では二度とないチャンスではないだろうか?
昨夜俺が断っちゃったが。レインズさんは俺に感謝していて何かしらの礼がしたいと言っていた。
そのお礼の権利?報酬?を使って村長達にレヴィリアント王国で暮らしていけるだけの支援を頼むというのはどうだろう?彼らと同じ獣人族だし少なくとも無下に扱いはしないだろうし。
もし今回の手伝いの報酬にお願いが見合わない感じなら、全然追加で何かしら手伝うし......?っていくらなんでもこれは上から目線すぎるだろうか?自重しないとな。
まぁもし村長達が王国へ行ってしまったら寂しいと感じるぐらいには情が湧いているが......。
結局は本人達が決める事だ。一度話す事だけしてみよう。
「ケイ殿。」
「サイスさんにレインズさん。どうかしましたか?」
サイスさんが話しにいってから、暫く上の空で考え事をしているとサイスさんとレインズさんがやってきた。
どうかしましたか?とは聞いたが何の話かは分かっている。サイスさんが話しにいった王国へ移住できるかどうかの話しだろう。
「あぁ、サイス殿から聞いたのだが。ケイ殿の村には避難している獣人達がいるとか?この後本隊に合流してからになるが、話によっては一緒に王国へ連れて行くのは構わないと思っている。その場合またケイ殿に頼る事になるが平気だろうか?」
ふむ、この後本隊に合流してから......か。この人達だけでどうやってここまで来てどうやって帰るんだろうと思ってはいたが、やっぱり別で部隊がいたか。
「構わないですよ、どんどん頼ってください。」
「了解した、あともう少しで準備ができる。それまで待っていてくれ。」
「はい。」
レインズさんはそれだけ言うと戻っていった。どうやら準備の途中、忙しい時に来てくれたようだ。
「サイスさん、決めたんですね?」
「あぁ、一度戻って話す必要があるだろうが。ワシらはレヴィリアント王国へ行った方がいいだろう。」
「そうですか。」
まぁ、そうねぇ。何とも言えないが、サイスさん達は突然やってきてそのまま救出劇になったので交友関係を深める時間もなかった。
だからと言うわけでもないが森の村から出て行っても、そんなに何とも思わない。ただちょっと村に立ち寄っただけの関係な感じだ。
「ケイ殿、準備が出来た。頼めるだろうか?」
「はい。」
どうやら移動の準備が出来たようだ。獣人達はそれぞれ整列するように並び、まだ一人では歩けない人もいる様で肩を貸しているようにもみえる。
「では、行きます!出来るだけゆっくり行くので慌てないようにお願いします!」
一度大きく声をかけてから結界を作り出す。足元は黒くして安心できるようにしておく。
結界を作り終わると出来るだけゆっくり飛びあがっていく。それでも何人からか驚く声があがる、二回目だけどそんなすぐには慣れないか。
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「あれですか?」
「あれだ。」
まぁどう見てもあれだよな.......
飛ぶこと数時間。正確な時間はわからないが途中で休憩を挟むぐらいには長く飛んでいた。すると、遠目に見えてきたのは映画でしか見たことないような鎧を付け、恐らくレヴィリアント王国の旗であろう柄を付けた物がいくつものぼり。テントがいっぱいたっているのが見える。あれが別の部隊か。
見えるだけで数千人はいる様に見える。
「着いたぞ!旗を上げろ!ケイ殿、あそこへ降りてくれ。」
「了解。」
こちらに気づいたのかレヴィリアント王国の部隊がざわざわし始めたのでレインズさんの合図で旗を上げる。
降りるときの事を全然考えてなかったが、そうだよな......どう見ても空から近づいてくる集団なんて怪しい、何かしらわかる合図がないと危なかったな。
降りてからはすぐにレインズさんが報告へ行ってしまったので手持ち無沙汰になってしまった。
下手に動くわけにもいかないのでちょっと離れた所で大人しくしておく。ちらちらとこちらを見てくる獣人達がいて居心地がわるいが気にしない。視線から嫌な感じはしないので襲われる事はないだろう。
まぁそれでも心細いので早く来てくれないかなぁレインズさん。
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「ケイ殿!待たせてしまって申し訳ない。」
「大丈夫ですよ、話しはどうなりましたか?」
「あぁ、部下たちに後は任せて私が一緒についていく事になった。一応これでもこの部隊の中で一番の上官だからな。それなりの権限もある。」
「分かりました、すぐに行きますか?」
「私は大丈夫だ。ここの部隊はこのまま国へ帰るよう指示しておいた。」
「サイスさんも大丈夫ですか?」
「ワシも大丈夫だ。知り合いには話しておいた。」
「了解、それじゃぁ行きましょうか。」
結界で二人を包み飛びあがる。
もうすぐこの騒動に決着がつくかな?これ以上なにも起きずスムーズにいくといいけd......ってこんな風に言っちゃったらフラグになっちゃうな.......
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