第62話 緊急事態?

62.緊急事態?







「んぁ......あ~朝か...眠い......。」


目が覚めるとすぐに感じる疲労感、野営用のテント内での就寝だが野宿だからかぐっすりとまではいかなかった。


「おはよう。」


「おう、おはよう。」


テントから出るとルガードがいた、もう起きていたのかその手には木の枝に刺したウィンナーが見える、焼いて食べていたみたいだ。


取り合えず朝の準備をしよう。




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「よし、準備できたしいくぞ。」


朝ご飯を食べ終え、テントも片づけて出発の準備が出来たので55層を目指して歩き出す。


「お? あれは......オークか、倒すぞ!」


歩き出してすぐに遠くにオークの姿が見える、オークは5体ぐらいだろうか、まだこちらには気づいていないようだ。


「こっちを見ろォ!」


ルガードが咆哮するとオークの視線が全てそちらへ向く。挑発スキルみたいなものだろうか?

オークがこちらへ走ってきてルガードとぶつかる、その隙を狙ってネレが後ろから攻撃をして、フェイが弓を射る。

俺は雷の結界でオークの動きを一瞬とめる。アキリスとドリスは追加が来ないように周りの警戒をしている。


戦闘が始まって数分とたたずにオークは全て光になって消えていった。


「ふぅ、なかなか連携もいい感じになってきたんじゃないか?」


「そうかな?」


「おう、かなり自然に倒せたんじゃないか?」


「ふむ。」

言われてみれば何も言わずとも連携できてた気がする。


「これなら普通に進んでいけそうだな、一気に行くぞ。」


ルガードはそう言うと再び歩き出したので後を付いていく。





と、言うわけで55層のボス前の扉まで来た。


ここに来るまでの道中でゴブリンやオーク、オーガなどの魔物がそれなりに出たが全て軽く倒してきた。


ルガードが挑発スキルの様な咆哮で盾役をしてくれるのですごく楽に倒せた。

魔物がくるとみんながそれぞれ自分の役割を誰に言われずともこなしていくのが特殊部隊みたいな感じでかっこよくて、静かにテンションがあがってたのは秘密だ。


「ここのボスは何なの?」


「ここはオーガがたしか6体ぐらいと大き目のオーガが1体だったかな?まぁ、今までの戦闘の感じを見るに余裕だな!」


余裕なのか......


「んじゃ、扉あけるぞ~」


ボスがいる扉なのにそんな軽い感じで開けちゃうんだな......


ボス部屋の扉を開けると中にはルガードが言っていた通りにオーガが数体、武器を構えて立っていた。

これってずっとこの体勢でボス部屋の中で待ってるんだろうか......?だとしたら何かちょっとかわいそうかも。


「よっしゃいくぞオラァ!」


「ちょ、速攻!?」


「ケイ、早くしないとおいてくわよ?」


「お先~」


「あはは、しょうがないですね。」


グッ


ボス部屋の扉が開いてルガードが叫んだと思ったらそのまま突っ込んでいった、それに合わせるようにネレとフェイも突っ込んでいき、アキリスも苦笑いしながらいつもの事の様に並んで突撃していきドリスは親指をグッと立てて当然のように突っ込んでいった。


「っしゃおらぁ!」

ドコーン!


武器を構えたルガードが突撃した勢いのまま斧を振り下ろすとボス部屋の床がひび割れて、割れた岩がはじけ飛びオーガにあたって少なくない傷を与えている。

その隙を逃さずフェイとネレとアキリスとドリスが同時に攻撃していくのでもうめちゃくちゃだ。


みんな意外と好戦的でうっぷんが溜まっていたんだろうか......?





「うし、こんなもんだな。」


「こんなもんだなって......俺何もしてないんだけど......」


「まぁそんなこともあるある!気にすんな!」


「はぁ......」


そんなめっちゃいい笑顔で言われても......。


「それで?今回はここまで何だっけ?後は帰るだけ?」


「おう、そうだな.........お?ちょっと待ってくれ。」


ルガードと話していると何かあったのか手を耳に当てている。あれは......通信がきたのかな?指輪がかすかに光っているのが見えるので多分そうだろう。

手持ち無沙汰になったのでクスラを両手で持ってもちもちする。


「ここでのんびりしてていいのかな?」


今いるのはボス部屋だ、気になったので横にいたフェイに聞いてみる。


「大丈夫だけど......なにか気になるの?」


「いや、なんて言うか......ここで待ってたらボスまた湧いたりしない?とか、気になって。」


「それなら大丈夫よ、中に人がいる間は魔物が湧かないようになっているから。」


「ほー。」

親切設計なんだなぁ。


「おう、待たせたな。」


フェイと話していると通信が終わったのかルガードがやってきた。


「うい、何の連絡だったのか聞いてもいい感じ?」


「あぁ、さっきの連絡はあれだな。始まるって連絡だな。」


「始まる.........?何が?」


「戦争だよ。」


戦争......?えっ?





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「おう、じゃぁこれが今回の戦利品の売却額を分けたやつだ。一人当たり白金貨5枚だな、まぁまぁいいんじゃないか?」


「白金貨5枚でまぁまぁなのか......。」


「今回は鬼の籠手ドロップしたからねぇ、結構よかったんじゃない?」


「そうねぇ、悪くないと思うわよ?」


「ふむ......いつもはもっと稼げるって事?」


「依頼料次第かな?今回は何も受けてないからな、それにしては稼げた方じゃねぇかな?って感じだな。」


エリアボスのドロップがあって、オーガ何百体ってドロップ品があって6人で白金貨30枚。これでまぁまぁなのか。金銭感覚がよくわからなくなってきそうだな。


「それで......ここに来るまであえて聞かなかったけど。戦争が始まるの?」


55層のボス部屋内でルガードが言っていた、戦争が始まるって言葉。どういうことなのかが気になる。

冒険者ギルドでドロップ品を売り払って、今現在いるのはそこそこ高級そうな雰囲気のあるレストランの個室だ。

食事と飲み物を注文して、運び終わってから軽く雑談をして、今って感じだ。


ルガードが話しをするならこっちのがいいだろって、個室を選んでくれた。


「あ~、ケイは知らなかったか......。この間、ケイがドラゴンを倒した時の事だ。クラリエと一緒に話して聞いただろ?隣のゲルツ帝国が原因かもって話し。」


「うん。」

クラリエさんにドラゴン買い取って貰ったときの話しだな、人族至上主義の隣国、ゲルツ帝国がこっちの国にちょっかい出してきてるって話し。


「実はその前からもちょくちょく怪しいいざこざが結構あったんだよ、んで前々から戦争になるんじゃないかーとか言われててな。小さいことがどんどん積み重なっていって、んで今回ついに戦争になったって感じだな。」


「はー......突然ってわけじゃなくて前々から戦争が起きるかもって傾向があったってことか。」


「そりゃな、ちょっと手を出されたぐらいですぐ戦争してたら国が持たねぇよ。ただまぁゲルツ帝国の場合は前々からのがあったからな。ついに堪忍袋の緒が切れたって事だろ。」


「ふむ。」

戦争かぁ......前世では一応平和な日本人だったわけだし。ニュースとかでそういうのは見る事はあるが...なんて言うか、今ルガードと戦争の話をしていても実感がない。


起きるんだ......戦争.........そっかぁーって感じしかない。


「戦争が起きるのは確定なの?」


「確定だな、確実に戦争になる。」


「はぁ......どう...すればいいんだろう?食料とか買い込むべき?このままこの街にいて平気なんだろうか?」

どうすればいいんだろう?戦争が起きて、これからどう動いていくんだろう。


「あー、俺も別に戦争に詳しいわけじゃねぇからな。何とも言えねぇが、この街が戦場になる事はないんじゃないか?王都からずいぶん離れてるからな。」


「ふむ......」

家に戻るべきかなぁ?


「ルガード達はどうするんだ?どこか安全な所に行ったりするの?」


「俺達か?俺らは戦争に参加するぞ。」


「えっ!?」

まじ!?


ルガードの言葉にびっくりしてみんなの顔を見渡すが、みんなそれぞれ頷いてる。


「な、何で戦争に参加するの......?」


「何でって......そりゃ、俺がこの国で暮らしてて生きてるからだろ?」


「暮らして...生きてるから......」


「おう、俺がこの国で暮らして28年ぐらいか?そんだけ暮らしてたら十分、国に対して愛着はあるし。それに、顔なじみだってそれなりにいる。守りたいものがあるんだよ。」


「守りたいもの......みんなそういう理由なのか?」


「そうだねー」


「そうねぇ。」


「えぇ。」


コクッ


ネレにフェイにアキリスにドリス。みんなそれぞれちゃんと意思があって戦争に参加するって事か.........。


「俺は......どうしよう。」


「さぁ......戦争だからな、自分で決めるしかねぇ。ケイには悪いが俺達はずっと前から決めてたからな。」


そうだよなぁ。ルガード達の事は好ましく思っている。けど一緒に戦争に参加するか?って言われるとわからない。


俺がこの世界に転生してきてからまだまだ日が浅い。正直、この街でも顔見知りなのはルガード達を除けば。クラリエさんといつも泊る宿の女将と看板娘の子ぐらいだ。

もし、家に戻る前にこの街が戦争に巻き込まれてどうしようもなければ一緒に戦うんだろうが。今はこれから戦争が始まるって事だし......余裕がある分いろいろ考えてしまう。


「まぁ、もしこれから一緒に戦争に参加するって言うなら。まだ時間はあるしゆっくり考えるといいさ。」


考える.........どうなんだろう...あれ?ていうか。

「冒険者って......戦争に参加してもいいのか?」

こういう時、冒険者って国に縛られない組織でーとか何かしら理由があって戦争に参加できないとかないのか?


「あ?どういう意味だ?」


「いや、冒険者ってさ。国をまたいで依頼で動く事もあるんだろう?そんな組織に属していて、国同士の戦争に参加したら不都合がないのかな?って......」


「あ~、そりゃまぁ。あるだろうな。国同士の戦争に参加するんだ。相手の国に二度と入れなくなるとかはあるだろうな。」


「あるのか......平気なのか?」


「構わねぇよ。そもそもあんな国になんか行くことなんてねぇし。考え方が嫌いなんだよな、人族至上主義ってバカじゃねぇのって思ってるしな。」


「なるほど.........」

まぁ考えてみればそうなのかな?国だって別に他にもあるんだし。一ついけなくなるぐらい考え方次第では結構どうでもいい感じかも?


「まぁそんな感じだな。この後クラリエんとこに行かなくちゃいけねぇから悪いが今回はここまでだな。」


「お、おう。」

クラリエさんとこいくのか......戦争の話し...何だろうなぁ。






「んじゃ、また生きてたら今度は俺達が攻略してる階層に行こうぜ。」


「またね~」


「ケイ、あなたが思うように行動すればいいと思うわ。また会いましょう。」


「ケイさん。短い間でしたが楽しかったです。また一緒に冒険しましょう。」


グッ


レストランを出て、道端で別れの挨拶をする。みんなそれぞれ一言をくれる。2名ほど軽い感じだが.........。


フェイとアキリスはやはり常識人枠なのか。まともな挨拶だったけど......。ドリスとはグッと握手した。


そんな感じでルガード達とは店の前で別れた。


戦争かぁ......そう思って周りとみてもみんな普段通りの生活をしているように見える。

慌ててバタバタと動いてる人なんて見えない。


何だかなぁ、実感が無さ過ぎて何ともモヤモヤするので心を落ち着けるためにクスラを両手に持ってもちもちもちもちする。


『なぁ、クスラ。』


『ん?なんや?』


『戦争が起きるんだって。』


『ふ~ん、戦争ってなんなん?』


『なんなん......何なんだろうね、俺にもよくわからないや。』


『ふ~ん。』


クスラに話してもわからないよね......そりゃ...。


取り合えず一旦、家に帰るかぁ......ちょっと落ち着いて考えよう。




戦争かぁ。







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