第61話 ダンジョン内の探索 #3

61.ダンジョン内の探索 #3








ダンジョン内の森の中を進む、出来るだけ足音を立てないように歩くがルガード達と比べて自分の足音のほうが大きく聞こえる。


こういう細かい所で冒険者としての差を感じる。

いっその事、結界で飛ぼうかな?そしたら足音も消せる。


「そろそろだよ、これ以上進むと相手に気づかれる可能性があるから私が先に見てくるよ。」


エリアボスがいると思われる方向へ進む事5分ぐらいだろうか?ネレの索敵によると群れが近い様だ。


「分かった、ここで待ってる。」


ルガードがそう言うとネレの姿が消える、ネレが偵察に行くとアキリスが前にでて何かの薬品を振り撒き、続いてドリスが何かの道具を出すと起動した。


道具はキャンプでテントを固定するのに使うぐらいの長さの杭みたいだ、ドリスはそれを4つ、みんなを囲む様に広めに地面に刺していく。


「ねぇ、アキリスその薬品は?」


「これですか?これは匂いを消す薬ですよ。」


はい、どうぞ。とアキリスが振り撒いていた薬品の瓶を渡してきたので受け取る。


ふんふん、匂いはしないな......。理科の実験で使うようなイメージのある細長い瓶、名前は知らないけど見たことはある感じだな...。


こんな少量で効果を発揮するなんて不思議だな。


「そっちの杭は?」


アキリスに瓶を返しつつ他にも気になった事を聞く。


「こっちは簡易の防御壁ですよ。対になる道具を持っていると出入りが出来るんです。」


そう言いつつアキリスはコインを見せてくれた、コインには何かの文字のような模様が描かれている。


「はい、これはケイさんの分です。」


見せてくれたコインとは別の同じ模様の書かれたコインをアキリスが渡してきた。


「これはアイテム袋に入れておけばいいの?」


「いえ、腰のベルトの裏に入れておくところがあるでしょう?そこへ入れるんです。」


ベルトにそんなポケットみたいなのあったか?

そう思ってベルトの裏を見てみると小さな切れ込みが入っているのを見つけた。


「これ?」

そう言ってアキリスにベルトの裏を見せる。


「えぇ、そこです。」


アキリスに確認をとったのでベルト裏の切れ込みにコインを押し込むとスッと入っていった。

ベルトにこんなポケットがあったとはな......


「それで何でこんなところに防御壁なんて作るんだ?」


「何かあった時にここに戻ってくるようにするんだよ。簡易拠点だな。」


アキリスと話していると準備が終わったのかルガードが話しに混ざってきた。


「簡易拠点?必要なのか?」


「必要ないかもな、それでも最悪を考えて色んな手を打っておくのが冒険者だ。」


ふむ......色々あるんだなぁ。


「ただいま、見てきたよー。」


ちょうどいいタイミングでネレが帰ってきた。


「おう、相手は何だった?」


「いたのはオーガだったよー、数は200ぐらいかな?」


「オーガか...どうする?ケイ。」


「どうするって......オーガって強いのか?」


「俺達なら余裕だな。」


「余裕なのか...なら行ってみよう。」


「んじゃ、作戦をたてるぞ。」


ルガードの一言でみんなが集まり作戦を考え始める。作戦を考えるといってもルガードは俺以外の事なら何が出来るかは知っているのでほとんど俺がどう動けるかの話し合いだった。


そして決まった作戦がこうだ。


まずアキリスがみんなに強化魔法をかけていって、次に俺が空から結界でオーガを囲む。

そこにフェイがドリスの魔道具で力を増幅した魔法で先制攻撃をする。その後ルガードとネレが突撃して、あとはいつもの流れだ。

前線を張ってくれている間にフェイと俺で数を減らしていく。エリアボスが前に出てきた場合はルガードが盾をしている間に周りを先に倒す。

理想はボスが来る前に周りを倒しきる事だが、どこまでうまくいくかはわからない。


「各自やる事は大丈夫か?なら行くぞ。」


ルガードの号令で防御壁を越えて森の中を進んでいく。ここからは足音をできるだけ立てたくないから俺は既に結界で少し浮いている状態だ。


進み始めて3分ほどで自分達以外の何かの気配を感じた、なんていうか漠然とした感じだが何かを感じる。


ルガードが一度こちらを振り返って俺に対して上を指さすように合図する。それを受けて俺は結界で空へと上がっていく。


木より上に上がると少し先に森が開けた広場が見える、そこにオーガらしき者がいっぱいいる。

オーガの見た目は赤銅色の肌に無駄にならない程度の筋肉、頭には角が生えていて見た感じは完全に鬼だ。

服装も、上半身は裸で下半身は動物の革て作ったであろうズボンを履いている。


そんなオーガ達は木々と葉っぱを組み合わせて作ったであろう住処に、何か焼いている焚火。何かしらの動物のお肉を吊るしているのを見る所ちゃんとした生活基盤があるようだ。


ダンジョン内なのに生活がしっかりしているんだな......。


そんな事を考えつつも広場を囲む結界を自分がいる上空よりさらにはるか上のほうに作っていく、万が一にもオーガ達にばれないようにだ。


今回オーガ達を囲む結界は目に見えてわかるように氷の柱を何個もつくってそれをつなげて囲むつもりだ。ルガード達が入れるように一か所だけ開けて残りはぴっちりと隙間なく作らないといけない。


高さは5メートル、幅は2メートルほど厚さは1メートルもあれば十分だろう。

それを上からドンっと落とすつもりだ。


その後フェイによる先制攻撃だが、どんな魔法を使うのか楽しみだ......。他の人が使う魔法をみる機会はなかなかないので今からどきどきだ。


オーガは上空にいる俺の存在にはまだ気づいておらず、下を見るとルガード達が広場のかなり近い所まで来ているのが見える。


オーガを囲む結界も完成したのでルガードの合図を待つ。


『ケイ、こっちは準備完了だ。いつでもいいぞ。』


『了解、それじゃぁいくぞ!』


ふんっと気合を入れて上空で待機していた氷の柱の結界を落とす。


ドンッドドドンッ!


結界が落ちる衝撃で地響きが起きる。突然空から降ってきた氷の壁にオーガ達が慌てふためいている。

そのまま少し待つと結界に囲まれた広場の丁度中心当たりに薄緑色の球体が飛んでいくのが見える、あれがフェイの魔法かな?


オーガ達も立て続けに起こる事に驚いてうまく動けていない。

薄緑色の玉が広場の中心にたどり着くと玉がはじけて中からフェイが普段使うような魔法の矢が無数に飛び出していく。


飛び出した魔法の矢は広場を中心に渦を巻くように広がっていく、射線上にいたオーガ達が次々に矢に貫かれて倒れていく。


魔法が終わる頃にはオーガ達はかなりの数が既に死んで光になっていき、残ったオーガも少なからず傷をつけているので満足に動けなさそうだ。


ただ、その中に一体だけ無傷で立っているオーガがいる、周りのオーガの数が減ったから目につくようになったのか明らかに他のオーガとは風格の違うオーガがいる。あれがエリアボスのオーガなのかな?


ボスオーガと思われる個体はこちらをチラッと見た後ルガード達の方へ視線を向けた。

周りのオーガと比べて一回り以上体の大きさも違うし頭から生えている角も明らかに長い。


ボスオーガを眺めているとルガード達がいつの間にか結界内に踏み込んでいく。

ルガードとネレはまだ立っているオーガ達を倒していき。フェイとドリスで死んではいないが倒れているオーガのとどめをさしていってる。


このまま終わるのを眺めている訳にもいかないので少し高度を下げて離れて倒れているオーガにいつもの氷の結界を飛ばして倒していく。


次々にオーガを倒していくき、残りはもはやボスオーガ残すばかりとなったころボスオーガに動きがあった。

今までずっと腕を組み仁王立ちしていたのが、身の丈ほどもある棍棒を持ちルガード達の方へ歩き出した。


「ルガード!」


「あぁ、わかってる!来るぞ!」


慌てて高度を下げルガードに呼びかけるが、ルガードも気づいていたようだ。


「グルァァァァァァァァ!」


「くっ」


ボスオーガの咆哮が衝撃波となって伝わってくる。咆哮で結界がぶるぶる震えてこのまま続くと結界が壊されそうだ。


「ガァッ!」


咆哮終わりに気合を入れるように一鳴きしてボスオーガがルガードに突っ込んでいく。


「よっしゃぁ!こいやぁ!」


ルガードが気合を入れるように武器を構えると体が薄く赤く光る。


「おらぁ!」


「ガッ!」


ルガードの両手斧とボスオーガの棍棒が打ち合いその衝撃で地面がひび割れる。

ネレがボスオーガの背後から攻撃を仕掛け、フェイが弓で射る。アキリスは何か呪文を唱えていてドリスも魔道具を使って攻撃を仕掛けている。


俺も合わせて氷の結界を飛ばしてみるがあまり効果がないのか、凍った傍から破壊されて効いてない。別ので試してみるか?


雷ならどうだ?


バチッ!

「グッガァ!」


「っしゃあああ!」


「グルァ!」


「お?」


ボスオーガに雷の結界を当てると死にはしないがそこそこダメージが入ったのか一瞬動きが止まった。その隙を逃さずルガードが切り込み片腕を切り飛ばした。


「畳み掛けるぞ!」


ルガードの号令でそれぞれ一気に攻撃を仕掛ける。俺も雷の結界をいくつも飛ばしてボスオーガの動きを阻害する。


俺の雷の結界で動きを止めて、ルガードが切り込み、フェイとネレが追撃をしてアキリスとドリスでフォローする。

片腕を失ったボスオーガはなすすべもなくあっという間に倒れた。


「グ、グッガァ......」


ボスオーガが光になって消えていく。


「終わったか......。」


「おう、戦利品を拾うぞ。」


休憩は無しか......。




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「結構いい感じに集まったな?」


「まぁあんだけ数いればねぇ。」


目の前には山になったオーガのドロップ品とその横に別で置かれたボスオーガのドロップ品。

普通のオーガのドロップ品は赤銅色の革に角、ボスオーガのドロップは同じく革に角、そこからさらに装備品のドロップだ。


「これは......籠手か?しかも片手だけ?」


「あぁ、鬼の籠手だな。」


「鬼の籠手...知ってるのか?」


「おう、エリアボスのオーガが落とす装備品の中でもオーガ固有のドロップ品だな。効果はたしか......怪力だったか?」


固有ドロップとかあるのか......ちょっと気になるな、他にどんな装備が出るのか周回したくなる。


「怪力かー、微妙?」


「いやいや、これは大当たりだぞ?デメリット無しに力が上がるんだからな俺みたいなやつからしたら是非ほしい一品だな。」


「んじゃルガードが使う?」


「俺はいらねぇな、自分で強化できるから必要ねぇ。それにこれは売ればそこそこいい値段するからな。今回は売る方向でいこう。」


「了解。」


「んじゃドロップ品アイテム袋に詰めろー。ここから離れて今日は野営するぞ。」


「はーい。」


数を数えるのも億劫になるほどの革と牙をアイテム袋に詰めていく。これをギルドに持っていくのか......数える人が可哀想になってきた。


数分かけてドロップ品を全部アイテム袋に入れ終わるとそのまま移動して野営地を決める。テントを取り出し設営していく。


今日はここまでか、まぁマナも結構使ったしって判断なのかな?

進み具合的にダンジョンは明日が最終日なのかな?この先に何があるのか楽しみだ。






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