第51話 護衛依頼 #2

51.護衛依頼 #2








「あそこのお店に行くわよ!」

ルーレリアさん......いや、ルーが服飾を取り扱っていそうなお店に突撃していく。


ルー。屋敷から出た後すぐに改めて自己紹介をしようとして挨拶をしたところ「私の呼び方はルーでいいわ!」と言われたのでそう呼ぶようにした。

護衛騎士の女性に目配せしたところ頷かれたので、無礼打ちとはいかないようだ。


今は3人+1匹で行動している、ルーに護衛騎士の女性に俺とクスラだ。

クスラは街に着いたときは起きていたが。クラリエさんと依頼内容を話している途中からなのか、気づけば寝ていたのでそのままにして今は外套のフードの中で寝ている。


それにしても...屋敷を出て、大通りに入ってすぐに露店に突撃して串焼きを食べたかと思ったらすぐに次の露店へ突撃して今度はアクセサリーを見てた。

慌てて後をついていったが街の人はルーを避ける用に道を開けていた。


見た目からして完全にどこかの貴族のお嬢様だしな......それに後からきらきらした鎧をきた如何にもな護衛騎士がついてきていればそりゃ道も開けるか...。


俺はこの間買ったブラックワイバーンの全身革鎧に外套を羽織ってるので見た目は普通の冒険者だ。ちゃんとルーと一緒にいないと同行者とは気づいてもらえないレベルでこの中では存在が薄い...。



ルーが入っていったお店に入ると中は棚がいくつかあってそこに服が畳んで置いてあったりアクセサリーというよりジュエリーかな?が並べてある。

お店には片手で数えれるほどしか入ってないが、今までの中では間違いなく一番の高級店だな...。


ルーは早速物色しているようだが、見た所女性服ばかりなので大人しく待っておこう...。

入ってすぐの入り口の横に出窓みたいになっている場所に長椅子が置いてあるのでそこに座る。

こんなところに椅子があるなんて...さすが高級店なのか?それか多分付き添いの男性が毎回ここで休憩するんだろうな...。

護衛騎士の女性はルーにピッタリ張り付いてる。

そういえば彼女の名前を聞き逃したな...後で機会をうかがって聞かないとな...。



長椅子に座りながら考える。

今回護衛依頼を受けたが、どんな風に護衛すればいいのかさっぱりわからないので何となく自分が思う護衛をしようと思う。

護衛対象は常に視界に入れておく。視界には入れておくけどできるだけ周囲にも注意を払う。あとは気を緩めず張りすぎず平常心を保つ。


後はこの護衛依頼の話しを聞いたときから考えていた事を試している。

手の平の上に透明の5センチ四方の結界を作る。しかもただの結界じゃない、何もはじかない結界だ...。


何もはじかない結界と聞くと結界の意味ないじゃんって思うかもしれないがこれは結界を作る前の結界を作っている。


普段結界を作るときは作る場所、大きさ、結界の効果など発動するまでに決める事がそこそこある。

いつも使っている氷の結界などは毎回使う大きさや効果などは決めてしまっているので発動が早い。ほぼ一瞬だ。


問題だったのは普通の結界だった。作るまでに少なくとも30秒から1分くらいはかかる。

そこで今回作った結界だ。


結界を作る前の、場所、大きさ、効果を決めておいた結界が発動する結界を作る。

後は結界を作るという意思だけで発動する段階までもっていっておく感じだ。

そうすることで咄嗟の時にすぐに結界を発動できるようにする。


護衛する時に襲撃が起こってから結界を作り始めるのと、あらかじめ発動する直前まで結界を準備しておく事の差はかなりでかい気がする。ので思い付くままに作ったら出来たので今回使うつもりだ。


頭の中で作る結界を準備しておいてもいいかも?と思ったが少し考えて辞めた。

常に作る結界を考えておくのは辛いんだ...。頭も痛くなりそうだし、護衛に集中できそうになかったので別の案を考えた所、できたのが結界を作る結界だ。


手のひらの上で試してみたが、普通に使えたのでさっそくルーの周りに結界を作る、ための結界を作る......ややこしいなこれ。



「次行くわよ!」


買い物が終わったのか長椅子に座ってる俺の方へルーが来た。

結界は......ちゃんとルーの動きに合わせて動いてるな...。目には見えないが感覚でわかる。


「わかったよ。」


長椅子から立ち上がりルーの後を付いていく。


これじゃ護衛ってより買い物に付き合ってるだけだけど......まぁそれでもいいか...。




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ドサッ

「はぁ......。」


屋敷に着いて、今日の護衛はおしまいかな?と思っているとルーは「それじゃぁね!」と言って速攻で屋敷に帰っていった。

あまりの素早さに唖然と見ているとメイドさんがやってきてお疲れ様でした。と労いの言葉をもらった......。

夕暮れの日差しが差し込む、案内された部屋。高そうな調度品にソファに机にベッドがあり、その中でも特に高そうな天蓋付きベッドに疲れて凝り固まった体から力を抜いて少し勢いをつけて寝転がる。

頭の上にいたクスラがその勢いでベッドの上を跳ねていった。


『あいたっ、もー何すんねんー。』


「おっと、ごめんごめん。」

そういってクスラを持ち上げて、もちもち撫でる。


うむ......高そうなベッドなだけあって体全体を包み込むように重さをベッドが吸収してくれる。

家でいつも寝ている普通の一般的なベッドもいいが、こうゆうところでしか使えない特別感のあるベッドもいいな......。少しいい所のホテルのベッドみたいな非日常感がある。



それにしても疲れた......。服飾のお店を出た後も雑貨屋に行ったり本屋にいったり。また露店でアクセサリーみたり串焼き食べたり。景色のいい所を見に行ったり。

途中でクスラの目が覚めたと思ったらルーがクスラに気づき「それは何!?」と聞いてきたのでクスラの自己紹介をしたりと色々あった。


『なぁ。』


「ん?」


『明日はどないすんの?』


「明日も護衛依頼だよ。後二日間はね。」


『ふーん。』


「明日から収穫祭だから、珍しい物が見れるかもね?」


『収穫祭ってなんなん?』


あー......クスラにはお祭りが何かわからないのか......。普通に会話してるから忘れてしまうがクスラって魔物なんだよな......。魔物にはお祭りはないのかー。


「収穫祭ってゆうのはお祭り......食べ物が沢山出来たことを祝うお祭りだよ。人がいっぱい集まって普段は無いようなお店が出たりしていて楽しいと思うよ。」


『へー!楽しみやなぁ。』


クスラは明日が楽しみなのか、触腕をうにょうにょして不思議な踊りをしている。

MPを吸われそうな踊りだな......。



リーン


ん?何だこのホテルの受付にある呼び出すやつみたいな音は......。


「お休み中の所失礼します。お嬢様が夕飯のお食事をご一緒にとの事です、いかがいたしますか?」


扉の外からメイドさんらしき人の声が聞こえる。

一緒に食事か......テーブルマナーとか全然知らないんだけどいいんだろうか...。けどまぁ俺が平民だってことは知ってるわけだしある程度は目をつむってくれるってことかな?


取り合えず待たせるのも悪いので撫でていたクスラをベッドの上に乗せて、部屋の入り口の扉を開ける。

扉の前にいたのは予想通りメイドさんだ。


「お休みの所すいません。」


「いえ、構わないですよ。食事は今からですか?」


「はい、準備がよろしければご案内します。」


準備......クスラはどうしよう?


一度部屋の中へ振り返る。


『クスラ、食事行ってくるけどどうする?』


『んー?待ってるわー。』


『はいよ。』



「じゃぁ案内してもらえますか?」


「はい、こちらへどうぞ。」


貴族の食事かぁちょっと楽しみだな。美味しいお肉とかでないかなー?





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