第50話 護衛依頼。

50.護衛依頼








「妹さん......?」


「えぇ、そうよ。私の妹なんだけれど......はぁ...。」


ため息をついてどうしたんだろう......。何か疲れてるのか物憂げな感じだ。

クラリエさんがため息をついてから紅茶を飲んで一息ついていると廊下から誰かを呼ぶ声とどたどたと走る音が聞こえる。


「ここにいるのね!」


部屋の扉を勢いよく開けて入ってきたのは小学生低学年ほどの歳の女の子。

明るい金髪に綺麗な緑色の目、ふわふわひらひらのドレスをきた幼女だ。


幼女の後ろからは護衛と思われる女性の騎士にメイドさんが数人遅れて入ってきた。


「あなたが護衛の冒険者ね!さぁ、はやくいくわよ!」


「ちょ、ちょっとまって!」

幼女が俺の手を引っ張って連れて行こうとする。


「待ちなさい、ルーレリア。」

クラリエさんが静かでだけれども強く圧がある声を出した、威厳のある声だ...。


「座りなさい。」

クラリエさんが声を出すと、幼女の肩が少しビクッとして大人しくなる。


「はい、お姉様。」

ルーレリアと呼ばれた幼女は少し、しゅんとしてクラリエさんの隣に座った。護衛の女性はそのままソファの後ろに立ち、メイドさんはお辞儀をしてから退出していった。

それと同時に部屋の中にいるメイドが追加のお茶の用意をし始めた。


お茶を用意する食器の擦れる音が聞こえるだけの静寂の中気まずい雰囲気が流れる......俺だけかもしれないが...。



「まずは挨拶を。」

クラリエさんがそうゆうとルーレリアと呼ばれた幼女が立ち上がった。


「ルーレリア・イオーンですわ、よろしくお願いいたしますわ。」

ルーレリアさんが名乗るとふわっと風が流れていい匂いがした気がした、小さくてもやっぱり雰囲気で分かるな......貴族なんだなぁって。

挨拶を終えたルーレリアさんはそのままソファに座った。


「あー、ケイです。金の冒険者です。」

なんかこう...改めて挨拶されると戸惑ってしまうな...。


「挨拶も済んだところで話しを続けるわよ。今回ケイに護衛してほしいのはこの子、ルーレリアよ。」


クラリエさんがちらっと横を見るので釣られて俺もルーレリアさんを見る。腰あたりまで伸びた金髪がふわっとしていてよく手入れされているのが分かる。薄ピンク色のドレスに高そうな宝石が付いたネックレス。

今は大人しくしているが、さっきの感じからするとお転婆な子なのかな...。


「ルーレリアさんの護衛は分かりましたけど......。もっと詳しい内容を聞いてもいいですか?」


「そうね、依頼内容はこの子が観光してる間の護衛よ。期間は今日を含めて3日間、3日目の夕方ルーレリアが家に帰ってくるまでが依頼よ。依頼中の宿泊はあなたが望むならこの屋敷の部屋を使ってもいいわ、それかどこか街の宿に泊まることも......そこは自由にしていいわ。そのかわり街の宿に泊まるなら、泊まる予定の宿を教えて頂戴。報酬は金貨30枚、依頼が終わった時に渡すわ。以上よ、何か聞きたいことはあるかしら?」


「少し考えさせてください。」

一言断ってから考える、ルーレリアさんの3日間の護衛か......。特に予定もないし依頼を受けるのは問題無い、ただ......なぜ俺なのかが分からない。けどそれを詳しく聞くのも怖い、クラリエさんの考えを教えてくれってゆうのは失礼にあたりそうだしな...。この世界の貴族の力がどの程度あるかわからないが、不用意な事をすると何が癇に障って問題になるかわからない。

けどまぁクラリエさんならちょっとぐらいなら平気かな?何となく今までの対応を受けた感じだと...。


うつむいていた顔を上げてチラッと前を見る、クラリエさんは優雅に紅茶を飲んでいてルーレリアさんはお菓子をもぐもぐしている...がどこかソワソワした様子だ。早く街にいきたいのかな?うーむ。

大人しく依頼を受けるしかないってことか......。まぁクラリエさんとは仲良くしたいしできるだけ依頼は受けたいってのもあるしな。


「それで?考えはまとまったかしら?」

考えがまとまったのが分かったのかクラリエさんが飲んでいた紅茶を机に置き、聞いてくる。


「えぇ、依頼を受けます。」

俺がそう答えるとクラリエさんが頷いた。


「それじゃぁ...「用意してくるわ!」」

クラリエさんが何かを言おうとした瞬間、ルーレリアさんが立ち上がり大きな声で発言してそのまま部屋を飛び出していった。護衛の人っぽい女性騎士も一礼してルーレリアさんの後を追って出ていった。


「はぁ......見ての通りよ。」

びっくりして扉の方を見ているとクラリエさんがため息をはいた...。


「あー、なんてゆうかお察しします。」

見た感じルーレリアさんはわがまま娘って感じでは無い、元気がありあまってる子供って感じだな。


「まぁいいわ......。何か聞きたいことはあって?」


聞きたい事......。


「その......言いにくいんですが、妹さんが誰かに狙われているとかはありますか?護衛をする上で何かあるなら聞いておきたいんですが。」


「特にそんな話しは聞いていないけれど...。どこか気になる所でもあったかしら?」


「いえ...クラリエさんの所なら護衛に出せる人は多いのにどうして俺に依頼が来たのかなって思いまして。」


「それは......。あなたもしかして知らないの?」


知らない?何をだろう...?


「明日から二日間この街で収穫祭があるのよ。それで私の屋敷も忙しくて人手が足りないのよ、それが分かったのが今日でね急いであなたを呼びだしたのよ。」


「なるほど...?」

それで呼び出しが急で雑な感じだったのか......。

それに明日から収穫祭か、街に人が多かった理由はそうゆうことか...。


お祭り、地球でしてたお祭りといえば出店がでて、たこ焼きや焼きそばカステラに焼きトウモロコシ、射的に輪投げにおみくじ。それに舞台があればそこでなにかしらやってたり。異世界ではどんな催しがあるのかなぁ?


ん...?明日から?


「明日から収穫祭なら護衛が今日からなのは何でですか?」


「そうねぇ、あの子は普段こことは違う街に住んでいるのよ。」


違う街...まぁこの街を観光するぐらいだし普段はここに居ないんだろうとは思われる。


「あの子はもうすぐ学校に通うのよ、学校に通うと寮に入っちゃうからなかなか家に帰れなくなるの。だからその前に行きたかった場所を観光したかったらしくてね、一日も無駄にできないのよ。だから今日からよ。」


学校...やっぱりあるのか、何を学ぶんだろう?魔法?歴史?国語とか数学とかなのかな?異世界特有の授業とかあるんだろうか。


異世界といえば識字率だ、平民は識字率が低いって話しはよく読んだが実際そうなんだろうか?

よくよく考えると街中で文字を見る事は少なかったな...冒険者ギルドぐらいか?依頼書などには文字が書かれていたが宿屋や食事処などでは何となくで注文していたし。今日のおすすめは?とか、メニューをみて注文はしてなかったな......。


「なるほどなぁ、それで今日からなんですね。」


「えぇ、そうよ。他に気になる事はある?聞くなら今の内よ。」


気になる事......山ほどあるな...。人手不足で俺に依頼したのは分かったが、なぜ俺なのかがまだわかってない。防御系のスキルを持っているからとの話しだったがよくわからない。別に防御系のスキルを持っていなくても護衛はできそうだしな。


思い付くとしたら......何かを試されているのかもしれないし、何かを試してるのかもしれない。

まぁ細かい事を考えても仕方ないか...。深く考えずにやっていこう、何とかなるだろうきっと...。


話しが終わってのんびりとした空気が流れる。紅茶を飲み、お菓子をつまんでゆっくりする。

今まで存在がほぼなかったクスラにもお菓子をちまちまと上げている。喜んでいるようだ...。クスラにとっては退屈な時間だったかもしれないなぁ。


のんびりとした空気が流れる中、さっきも聞いたどたどたと廊下を走る音が聞こえる。


クラリエさんはその音が聞こえるとまた、ため息を吐いている。


「用意できたわ!行くわよ!」


扉を勢いよく開けてルーレリアさんが入ってくる。クラリエさんの方をチラッと見ると頷いたのでソファから立ち上がる。


護衛依頼か......どうなることやら。







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