第52話 護衛依頼 #3

52.護衛依頼 #3








ぺちぺち  ぺちぺち  べちべち!


「んぁ?」


『あ、やっと起きた。』


「んー?」


まだちゃんと開いてない瞼をこすりながら起きるとクスラが触腕でぺちぺちと頭を叩いていた。えーっと昨日はどうしたんだっけ......。

たしかクラリエさんに食事に誘われて案内された部屋で待っているとクラリエさんとルーがきて一緒に食事したんだっけかな?


段々おもいだしてきた......。コース料理みたいに一品づつ料理が出てきたんだっけ......。

幸いなことにマナーに関しては気にしないってゆってくれたからよかったけど、少しだけマナーを気を付けたからきっと大丈夫だっただろう......。

まぁ気を付けたと言っても食器の音を鳴らさないとかその程度だが。


それにしても昨日の料理は美味しかったなぁさすが貴族の料理って感じで。見たことないサラダによくわからないソースのかかったお肉にシチューっぽいスープに。

お肉はいつも狩っている牛みたいなやつだって聞いたときはびっくりしたな......。やっぱりちゃんと調理するってのは大事なんだなと痛感した。普段食べてるのとは全然味や触感が違った。


食事中は特に中身のない雑談をしつつ、俺の主観では和やかに進んでいたが......。

ご飯を食べて部屋に帰ってきてからお風呂に案内されてさっぱりしてから寝た。


クスラの食事はいつも通りマナが豊富な結界でだした水だ。毎回この水だけど......味とかあるんだろうか...?変えれるなら変えた方がいいのかな......。今度クスラに聞いてみようかな...?


取り合えずいつ呼びに来るかわからないし準備だけはしておこうかな。


収穫祭かーどんな感じ何だろう?





-----------------------------------------------------





「それじゃぁ行くわよ!」


「はいよー。」


「何よその気の抜けた返事は、もっと気合を入れなさい!行くわよ!」


「はい。」


お祭りだからなのか昨日に比べて明らかにルーのテンションが高い。まぁ楽しみなのはいいことか......。クスラもお祭りが楽しみなのかさっきから触腕がうにょうにょしているしな。


護衛依頼でルーと過ごす3日間の今は2日目だ。今日も護衛騎士の女性と一緒にルーと護衛騎士の女性、俺とクスラで街中をぶらぶらしている。



ルーと護衛騎士の女性の後ろを付いていきながら頭の中で考え事をする。


朝起きて準備を終わらせるとメイドさんが朝食を持ってきてくれたので食べた、朝食はパンとサラダに果物に卵を使ったスクランブルエッグっぽい何か。

この世界にも卵ちゃんとあるんだなぁ生んでくれる鶏でも飼っているんだろうか?どこかで買えない物か......。森の家にもほしい。

今日はお祭りで売ってないかもしれないがそれっぽい所を探しておこう。


朝食が終わって食器を片づけてもらっている時に護衛に出る時間は何時になるか聞いたらお昼前ぐらいに出ると言われたので少し時間が出来てしまった。

ルーの起きる時間がそれぐらいって事らしかった。


待ってる間に新しい結界の使い方でも考えようと思い色々試行錯誤していた。普段から色々と考えてはいるんだけれど、使う機会がない......。今度ダンジョンにでもいって試してみるべきなのかな?


いつも使っている氷の結界は5センチ四方のキューブ型で小さく使いやすい......が、その分範囲や火力面で不安があった。

ゴブリンや牛程度なら問題なかったがこの間戦ったドラゴンとなると氷の威力を最大まで上げないと効かなかった、それも5センチ四方のキューブ型でしたので範囲は狭かったしな......。


そこで考えていたのが結界の圧縮だ。今は結界レベルがなんか最大まで上がったおかげで表記が無くなりなんでも想像できる限りはできるようになったが。その前にあったスキルの技?なのか効果なのかよくわからないがレベル3で覚えていた結界を圧縮するスキルだ。たしか『圧』だったよな......。


今はもう想像だけで結界を作れるから詠唱っぽい事することは無いが、今思えばあれば想像の補助だったのかもしれない...。言葉にすることで効果を分かりやすくする......みたいな感じだ。


まぁそんな『圧』で何をするのかとゆうと、例えば火の属性付与をしたときだ。

基本は森で狩りをするので森林火災になったらシャレにならないので普段は使わない火だが、この先例えば火が弱点の魔物なんてのもいるかもしれない。その時にある程度技は考えておきたい。


そんな火を使った技、例えば結界内に空気を圧縮して入れておき、その周りに火の属性付与をして燃やす。

イメージ的には爆弾だ。実際に爆発するかどうかなんて使ってみないと分からないがその辺は何とかなると思っている。今までもそうだったがスキルの効果は割と想像通りの結果を残してくれるからだ。


何なら中に圧縮するのは空気ではなくて、可燃性のガスでもいいかもしれない。ガスが創造できるかは別として......。

それかそもそも。対象となる敵を結界で囲んでその中を火で満たすのもいいかもしれない。逃げ場の無い結界内での火災......想像したらかなりえげつないな...。


後はやったことないが結界を明かりとして光らせる事はできるのは確認しているし。その光を圧縮できるなら、フラッシュグレネードみたいな感じで目くらましにつかったり。


相手を無力化したいなら圧縮した水を解放して一気に押し流すとか......?いや、無力化したいならそもそも普通に結界で動きを止めればいいな......。


こうやっていろんな使い方を考えるのは楽しいな......。早くダンジョンとかに行って試したくなってきた......。



考え事をしている間も出店で食べ物を買ったり、アクセサリーを見たり。昨日とやってることは同じだが出てる店が違うので楽しそうにルーは見て回っている。


そんなルーの頭の上にはクスラが乗っている、昨日に自己紹介した後言葉は通じていないが何となくでコミュニケーションをとっていたのか今では仲良しだ。


幼女にクスラ......うむ、可愛いな...。


「次はあれを見るわよ!」


そう言ってルーが突撃していったのはケージに入れられた魔物?か動物か。

あれは......従魔屋か...?


木で作られたケージに入れられているのはどれも小さい魔物で見た目も愛らしいものばかりだ。


「いらっしゃいませ!何をお求めでしょうか?」


従魔屋の前で立っていると、ぽっちゃりした中年男性の店員がやってきた。

ルーはケージにかじりついて見ているし護衛騎士の女性は基本喋らないし......俺が相手するしかないのか...。


「いえ、別に何か目的があるわけじゃぁ無いんですが。ここは従魔屋ですか?」


「なるほど。ええ、ここは従魔屋ですが......お客さん、見るのは初めてですか?」


「はい、牧場みたいになっているところは見たことあるんですが...こうやってケージに入れられてるのは初めて見ましたね。」


「はははっ、なるほど。私も普段は牧場を経営しているんですが、今日は収穫祭ですからね。せっかくのお祭りですしこうして露店で売っているんですよ。まぁ売っていると言っても見えている通り小型の魔物だけですけどね。」


「へぇ、そうなんですか。」

普段は牧場を経営って、店員じゃなくて社長だったか......。まぁそりゃ扱い方とかもあるしバイトとかには任せれないか......。


「そういえば卵を使った料理がしたくて......。卵が欲しいんですが毎日のように卵を産むのとかいますか?」


「えぇ、ニワリーですね?今はここにはいませんが牧場の方に行けばいっぱいいますよ?」


ニワリーって......変な名前だな。


「収穫祭後に買いに行きたいんですが、牧場の場所を教えてくれませんか?」


「えぇ、もちろん!少しお待ちください。」

そういって店主は露店の裏へと回っていった。


「ケイ!この子が欲しいぞ!」


店主との会話が終わるのを見計らってか、ルーが話しかけてきた。


「この子って......その子か?」


「うむ!」


ルーが欲しがっているのはフェネック見たいな見た目の子だ......うっ...かわいいな。


「欲しければ買えばいいと思うが......。クラリエさんに怒られないのか?」


「うっ......。きっと大丈夫だもん!」


ルーは体をビクッとさせて答えるが...かなり不安そうだな......。

チラッと護衛騎士の女性の方を見ると目を瞑り首を横に振っている。あぁ......ダメなんだなこれは...。


「まぁ収穫祭はまだ明日もあるんだし、今日帰ってからクラリエさんに聞けばいいんじゃないか?」


「うー......。」


ルーがフェネックの様な魔物の入れられたケージの前で悩んでいる。


「お待たせしました!こちらをどうぞ。」


そう言って店主が渡してきたのは牧場までの道のりが書かれたこの街の地図だ。


「ありがとうございます。収穫祭が終わったらよらせてもらいますね。」

お礼を言いつつ地図を見る。

ここは......クスラの従魔登録したところじゃないか?多分。わりと適当な地図なので正確にはわからないが何となく位置がその辺りだった気がする。

あのあたりは他に牧場っぽい所もなかったしきっとそうなんだろう。


「えぇもちろん!お待ちしておまります。」



「むー......。」


店主との会話が再び終わりルーの方を見てみるとまだ悩んでた。


「ほら、そこで悩んでても時間が過ぎていくだけだぞ。ホントに欲しいなら相談するしかないんじゃないか?」


「はーい......。」


頭の上にぷるぷるのクスラを乗せたまましょんぼりしている金髪の幼女......罪悪感が凄いな......。


帰ったら飼えるようにクラリエさんに俺からも話してみるか......どれだけ効果があるかはわからないが...。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る