第46話 家へ帰る。

46.家へ帰る







「んがっ」


はっ! あー......?あ、宿か。


寝てたベッドを見てみると掛け布団が足元でごちゃっとなっていて寝相の悪さが出ている...。

枕元をみると俺が寝ていた所に枕は無く、横でクスラが枕を下敷きにして寝ていた。


いつもはもうちょい綺麗に寝てるんだけどな...?そういえば昨日はお酒いっぱい飲んだんだっけ...。

ワインに果実酒にビールみたいなエールに...。初依頼が終わった解放感からか、結構はっちゃけちゃったな。


「ん~......はぁ...。」

大きく伸びをして体が固まっているのをほぐす。

初依頼の報酬は一人金貨3枚だった。一つの村が出すには金額が多い気がしたので聞いたみたら依頼の報酬は国から出ているらしい。村が無くなると困るのは国だ。ちゃんと税を納めてもらった。その代わりなにかあれば国がお金を出す。

もっと適当かと思ってたが結構きっちりしてるんだな?って聞いてたら国が助けるのはちゃんと認知された村だけらしい。俺が作ったような誰も知らない村は当然助けはこないし。求めるのも無理だ。その代わり税は納めなくていい。

どっちがいいのか......。わからん。他にも何か税を納めていればいい事があるんだろうけど、話が長くなりそうだったので途中で辞めたんだ。


今日は......家に帰るか。何かあれば指輪で連絡とれるし。街でやることも特に思いつかない。

この世界についての知識が書いている本を買うぐらいかな?でも正直今は困ってないからなぁ...。


あー......取り合えず起きるか...。ボーっとした頭で考えてもいい事は思い付かない。









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『なぁなぁ!あれは何!?』


『んー?あー、あれも食事処かなー。』


『じゃぁあれは!?』


『あれは宿屋かなー。』


朝になり、起きてから準備をして宿屋を出発した。泊ってたのはセレナさんとこの『豊穣の宿』で、この街にきたら必ずここで泊まる感じになってきたな...。料理は美味しいしリーシャちゃんはかわいいし。部屋も清潔なんだよな。


昨日、街についたときは夕方だったので必要なとこだけいって一日が終わってしまって街をあまりちゃんと見れてなかったクスラが、今は朝で明るく街がよく見えるのではしゃいでいる。


『あれ?そういえば今日はどないするん?』


『ん?何が?』


『どっかいくん?』


『今日は......家に帰るよ。』


『家?ここじゃないん?』


『ここには住んでないよ。森の奥に家があるんだ...。街と違って退屈な場所かもしれないけど、ごめんね。』


『ふ~ん。でも、街にこおへんくなるわけじゃないんやろ?』


『うん、街にはそこそこの頻度でくるよ。』


『なら全然かまわへんよ~。ケイが住んでるって場所も気になるし!』



クスラにとって街は刺激的な物で溢れていて楽しいんだと思う、だから森の家に帰って退屈にならないかが心配だなぁ。

退屈なようだったらどっかでに出かけたりするか。


クスラをいつもの頭の上にのせたまま門の外へ向かう道を歩いていると通行人にちらちらと頭の上を見られる。

子供なんかはもろに指をさしているけど、気にしないでおこう...。


そのまま歩き門を出て街の外へ出る。


そういえば俺が初めて来たときは証明書もらってギルド証発行したらって流れだったけど。クスラのときは名前を控えられるだけで、特に何もなかったな...。既にギルド証を作ってたからかな?


まぁ、楽ならそれでいいかぁ。


『これから家に飛んで向かうよ。』


『飛ぶん...?』


『うん、結界でね。高い所は大丈夫?』

普段ふわふわと浮いてるし平気かな?


『んー。あんま高いとこ飛んだことないからわからへん。まぁ...多分いけるとおもうで?知らんけど。』


『知らんけどってなんやねん......。まぁいいや、んじゃいくよ。』


街から少し離れたので自分とクスラを結界で包み飛びあがる。後はこのまま家まで直行だ。




ん......?今、また関西弁うつってた...?










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「あれが住んでる所だよ。」

結界で空を飛んでいつもどおりぐらいの時間をかけて森の家に帰ってきた。

クスラは飛んですぐに、高度に驚いていたが1分もしないうちに慣れて空の旅を楽しんでいた。今は二人っきりなので念話は使わずに普通に声を出して会話しているんだが、そういえばクスラって耳ないよな...?どこから音を聞いてるんだ...?謎だな...。


灰色の外壁が覆う村は堅牢な要塞にも見えるが、壁の中の家はほとんどが藁っぽいので出来た家で。ちょうど今、木で出来た家を建築し始めている所だ。


『ふ~ん。なんか寂しい村だね?』


「言われてみればそうかも?」

畑と家があるだけでお店も無ければ遊ぶ所もない。唯一村の真ん中に水汲み場があるぐらいだ......。


遊具とか作ってみようかな?作れたらだけど...。


飛んだまま外壁を飛び越え村の中へ入る。村人か何人かこちらを見ているので、手をあげて挨拶をしておく。なんだかこっち見た村人が少し驚いてるな......?なんだろう?



村長は......いた。相変わらず家の前の椅子でのんびりしている。


「村長!ただいまです!」


「お?おぉ!お帰りなさいなのじゃケイ殿......?」


「ん?どうしました?」


「その頭の上のは何なのじゃ?」


「あぁ...。この子は従魔にした子でクスラって言います。」

途中で驚いた顔してた村人はクスラを見てたのか...。ちゃんと紹介しないとな......。


「ほほぉ。そうかそうか...。」

村長は孫を見るような...慈愛にみちた瞳をしている。少し恥ずかしいな...。


「そういえば、家を建て始めたんですね?」


「おぉ!そうじゃそうじゃ。外壁で使うはずだった木をの、使って建て始めたんじゃが...。」


「どうかしたんですか?」

何か問題でも起きたか?


「それがのう...。建て始めたのはいいんじゃが。木で家を建てはできるんじゃが素人が作ったものじゃし不安でなぁ...。」


「ふむ?」

お父さんの日曜大工レベルの技術しかないってことかな?

たしかに家を建てるって普通はかなり大変だよな...?


「前は技術をもった者もいたんじゃが...。前は家を建てる余裕もなかったしのう。技術をもった者も狩りで亡くなってしもうて知識が途絶えたのじゃ。」


「そうだったんですか...。」

家.....か。俺は神様が用意していてくれた家があるから普通に暮らせているが村人達は最近ここに来たばかりでまだ生活基盤を築いてる最中だ。

前世での知識である程度家の構造は分かるが、それでちゃんと建つかも不安だ......。やるだけやるか?


「村長、家を建てるの俺も考えがあるので手伝いますよ。」

考えといってもいつも通りスキル頼りだが......。


「む?いいのかのう?ケイ殿にはお世話になってばかりじゃが...。」

そういって村長は申し訳なさそうな顔をした。


「いいんですよ、俺も一緒に住む仲間ですから。出来る事はしますよ。」


「すまんのうケイ殿、助かるのじゃ。」


「いえいえ、それでついでと言っては何ですが。この村の家の配置などを一度見直してちゃんと家を建てませんか?せっかくですし。」

村づくりするならきちんと整理したい派なんだよね...。今はみんなばらばらに家を作って建てているので隙間がすごいんだよね家の。畑があるってゆっても売りにいくわけでもなく、自分達で使う分しか作ってないので小さいし。

外壁は大き目につくったので余ってる部分が多い。


「ふむ?よくわからんがそうしたほうがいいのかの?」


「えぇ、今はみんなばらばらに建ててますけどこれじゃぁ何かあったときに近くの人に助けを求めれないと思うんですよね。だから家はある程度まとめてしまおうかと。」

顔見知りしかいないような村だが。万が一の事を考えると離れて暮らすのは何かあった時に怖い。気にしすぎだろうか?


「ふむふむ?ゆわれてみればそうかもしれんのう?」


「なので一度みんなを集めてそのことを話し合いませんか?っていってもまずは俺の考えで家が建てれないと何もはじまらないんですが...。」


「そうじゃのう。任せる形になってしまうが、いい報告を待っておるのじゃ。そういえば依頼はどうじゃったんじゃ?」


「それはもちろん、ばっちりでしたよ、初めての依頼でしたが楽しかったです。」


「ほうほう。それはよかったのう。」


ケイさ~~~ん。


「お?」

遠くから俺を呼ぶ声がする。


「ふむ?ティナじゃな。ほれ、あそこに。」

そういって村長が俺の後ろを指さすので後ろを振り返るとティナちゃんが少し離れた所から手を振りならがこちらに走ってきていた。


「ケイさん!お帰りなさい!」

そういってティナちゃんが飛びついてくるので慌てて受け止める。


「おっと...。ただいまティナちゃん。」


「お帰りなさい...。その子はどうしたの?」

ティナちゃんは早速クスラが気になっているようだ。


「この子は依頼の途中で出会ってね、従魔になったクスラってゆうんだよ。仲良くしてあげてね?」

基本クスラは俺が誰かと話しているときは静かで大人しいが、話題がクスラになったのでクスラを両手で持ちティナちゃんによく見えるようにする。


『ほら、クスラ。この子はティナちゃんってゆうんだ仲良くしてあげて?』


『ふ~ん。』

ふ~んって何だ...。

クスラは一応触腕を上げて挨拶している。


「わぁ。初めて見た!私はティナってゆうのよろしくね?」

そういってティナちゃんはクスラの上げた触腕をつかんで握手した。


『ちょ、ちょっといきなりなんなん!』


『ティナちゃんがよろしくだって。これは握手といって仲良くしようね?って事だよ。』


「ねぇ!ケイさん!私クスラと遊びたい!いい...?」

そういってティナちゃんは潤んだ上目遣いをしてくる。


む...。かわいい......。じゃなくて、どうしよう。クスラは言葉が分からないしな...。けど仲良くしてほしいし...。


『クスラ、ティナちゃんが一緒に遊びたいって。どうする?』

まぁ決めるのはクスラ自身か。


『うちと遊びたい...?ま、まぁええけど?』


お.....?意外と乗り気か?


「クスラもティナちゃんと遊びたいって。よろしくね?」


「やった!!それじゃぁ遊びにいこ?」

そういってティナちゃんはクスラに向かって両手を広げている。


クスラにそのジェスチャーが伝わったのか、クスラは俺の手から浮いてティナちゃんの広げた手に収まった。


「えへへ...。よろしくね?クスラちゃん?ほわぁすごい気持ちいい手触り...。」

ティナちゃんはうれしかったのかクスラを撫でてご満悦だ。


「それじゃ!遊びにに行ってきまーす!」


「はい、行ってらっしゃい。気を付けてね?後、夜までには帰ってくるようにね?」


「は~い!」

そういってティナちゃんはクスラを抱えたまま歩いて遊びに行った。何だか今のやり取り完全に親と子だったな...。



気恥ずかしくなって視線をそらすと村長と目があった。村長はすごいほほ笑んでた...。恥ずかしい...。








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