第45話 街へ帰る。
45.街へ帰る
ん......?んん...?
何だか...頭がひんやりする...?濡れた布を頭にのせられてるような...冷えピタを張っているような...。
目を開けて体を起こすとおでこから何かが落ちる。落ちたものを見ると青い何かのようだ...。
んー?あ、クスラか。
枕元を見てみるといつの間にか箱から出てきていたクスラが俺の頭を触腕で抱いていたようだ。
安全だと分かって懐かれたのかな?そうだといいな。
取り合えずクスラはまだ寝ているようなので、そのまま放置して朝の準備をする。
張っていた防音の結界を解除して、寝具をアイテム袋に入れて。防具を着て浄化を使って、寝ていて乾いた喉を潤すために水を軽く飲む。
顔は......外で洗うか...。
その前にクスラを起こそう。
ぐちゃっとなって寝ているクスラをつつく。
「クスラ、おきろー。」
つついて、ぺちぺち軽く叩いて。もちもちすべすべ撫でる。
『ん~?なんやぁ?』
「朝だぞ、起きろー。」
『う~ん。』
クスラが触腕をうにょうにょしながら起きる。
「おはよう、クスラ。」
『おはよー、ケイ。』
「今日は街に帰る日だから、起きて準備...?が必要なのかわからないが出かける用意してくれるか?」
『はーい。』
クスラが体を起こして触腕をうにょうにょして不思議な踊りをし始めたのでこっちも外にでる準備を終わらせる。
クスラが入ってた木箱をアイテム袋に入れてテント内に他に何もないか確認する。まぁ...テントごとアイテム袋に入れるから何かあっても構わないんだけど、気分の問題だ。
「んじゃ外にでるぞ。」
『わかったー。』
そういってクスラは俺の頭の上まで飛んできて頭の上に着地する。
「何で頭の上...?」
『ん~?何となく?』
「まぁいいか...。」
クスラを頭にのせたまま外へ出るとアキリスとフェイとドリスが既に起きていたので挨拶をする。
「おはよう。」
「おはようござっ!?」
「お、おはよう?」
3人とも何か戸惑っているようだ...?何だ...?
「ケイ、その頭の上のはどうしたの...?」
あぁ...。
「昨日寝る前に目覚めてさ、それでまぁ、うん。」
「そう、危険はないのね?」
「うん、まぁ仲良くしていけそうだよ。」
そういって頭の上のクスラをつんつんつつく。するとクスラも触腕で頭をぺちぺちしてくる。
『何はなしてんの?』
おっと、クスラと話すときは念話にしないとな...。マナの糸を出してクスラと繋いでっと。
『クスラと仲良くなったよって話してるんだよ。』
『ふぅ~ん。』
ん...?そういえばクスラは人の言葉は分からないのか...?俺は言語理解のスキルがあるから、クスラともシューとも話せる。だけどスキルがないクスラは言葉が分からない、けどシューは言葉をある程度理解してる所がある...。ややこしいな。
まだルガードとネレが起きてきていないが今のうちにテント片づけておこう、アイテム袋に入れるだけだしな。
フェイは朝ご飯の準備中っぽい。アキリスは何か資料をドリスと一緒に読んでいる。
今日の朝ご飯はなんだろなぁ......。
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「よし、んじゃぁ帰るか!」
あの後少ししてから、ルガードとネレが起きてきてクスラの事を報告してから朝ご飯を食べた。
ご飯の内容はパンにお肉と野菜をサンドイッチにしたやつだ。
村の人にゆってパンを多めに焼いてもらい、それを買い取ったらしい。おいしいパンだった......異世界のパンと言えば黒パンで、カッチカチで保存食みたいなパンだと思っていたが。普通に柔らかいパンだった。
お肉は食べた後に気づいたが昨日ドロップしたオークのお肉だ。味は完全に豚肉そのまんまだった。
何もゆわれずに先に食べたからもう大丈夫だが、先にオークのお肉だって聞くと食べれなかったかもな......。どうしてもオークの顔が脳裏にちらつく...。
クスラの食事に関してはマナが含まれた水を浴びるのでいいらしいので、結界でマナが豊富な水を出してみるとクスラが喜んでいた。美味しいらしい。
ご飯を食べ終わった後、ネレとフェイにクスラは撫でまわされて。アキリスには観察されていた。
クスラも撫でられて満更でもなさそうだったので、これから仲良くできそうでよかった。
クスラの名前については食事中に話してあるのでばっちしだ。安直な名前だと少しからかわれたが...。
そんなわけで依頼でお世話になった村を馬車に乗って出発だ。
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「そろそろつくぞ~。」
気づいたらもう街に着くころのようだ...。
道中?何もなかったのでカットだ。精々クスラと話しながら遊んでたぐらいかな?後、馬車の御者もちょっとやらせてもらった。っていっても紐握ってるだけだったが...。シューが自分で考えて動いてくれるから何もすることがなかった。
そんな御者も今はルガードの番だ。
馬車はそのまま門で止まり、まずはクスラの報告だ。どんなに弱い魔物でも街中にはいるんだから確認はしておかないとな。
「んじゃ先に行っててくれ、クスラの事をしてくるよ。」
そういって俺は馬車を下りて後ろに並ぶ、頭の上にクスラを乗せて。
「おう、ギルドの酒場で待ってるぞ。」
ルガード達を乗せた馬車はそのまま門を通り街中へと進んでいった。
「次っ!」
呼ばれたので首からさげている冒険者タグを見せつつ前に進む。
「冒険者か、その魔物は?」
「依頼途中に出会いまして、従魔屋にいく予定です。」
「つまり野良の魔物だな?それなら書類を書いてもらうから詰所へ、それと冒険者タグをこちらに。情報を書き写す。」
「はい。」
門番の人に連れられ、少し横にそれた詰所へいく。そこで冒険者タグを渡しつつ書類を受け取る。
書類には、従魔が起こした問題は飼い主が責任を取る事になるから気を付けるように、それを理解したか~みたいな感じの事を書いていた。それに署名する感じだ。
門番の人は冒険者タグを見て何か情報を書類に書き込んでいる。
そうしてる間もクスラは頭の上で大人しくしている。クスラって呼吸が必要ないから起きてるのか寝てるのかわかりにくいな...。
「よし、いいだろう。すぐに従魔屋に行くように。」
そういって門番の人は冒険者タグを返してきた。
「はい...。あ、従魔屋ってどこにあるんですか?」
そういえば従魔屋の場所を知らなかった...。アキリスにどうやって登録するかは聞いていたが肝心の場所を聞いてなかった...。
「あ?なんだ?街の地図持ってないのか?」
「はい、持ってないです。地図とかあるんですか?」
どっかに売ってるのか?
「冒険者ギルドで貰わなかったのか?それに、地図が置いてる店もそこそこあるぞ?」
え...?ギルドで貰えたのか...。
「知りませんでした...。」
「まぁいいか、それじゃこれやるから。従魔屋はここだ。」
「ありがとうございます。」
そういって門番の人はがっさがさの紙をくれた。紙には簡易的な街の地図が書いてあって従魔屋らしき場所が丸で囲まれている。
すごく簡易的な地図だな...。道が線で描かれていて、お店の情報は看板の絵柄だけだ......が意外とわかるな。
従魔屋は犬みたいな絵が書いてある。
「それじゃぁいってよし!」
「はい、ありがとうございました。」
返してもらった冒険者タグを首からさげ、もらった地図をポケットに突っ込む。そのまま詰所の横を通り街の中へ入る。
街の中は相変わらずな賑わいだ...。
相変わらず...か。それぐらいこの街に慣れてきたって事かな?
お......?なんかクスラがぷるぷるしてる?
『すごい!すごい!すごい!!すごいやん!これが街ってやつ!?見たことないもんがめっちゃあるやん!』
うおっ!?びっくりした、めっちゃ声でかいやん...。って思わず関西弁になってしまった......。
マナの糸を伸ばしてっと...。
『初めての街はどうだ?クスラ。」
興奮してるクスラは触腕で顔をぱちぱち叩いてくるが...なんか羊羹で顔叩かれてるみたいな感触だな......。
『想像してたよりめっちゃすごいやん!』
楽しそうだな...。俺は都会の町並みを前世で見てるからそこまで感動はなかったからなぁ...。
異世界だなー!って感動はあっても、都会だなー!って感動がない。これが大人になるってことか......。
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ここかな...?
貰った地図を見ながら歩いて従魔屋らしきところについた。お店の後ろが柵で囲まれた広場になっておりどこか牧場っぽい。遠くに厩舎っぽいのも見える。
とりあえず中に入るかー。
「お邪魔しまーす。」
「はいはいはいはい。いらっしゃいませー!」
中に入ると受付がある部屋があり、奥に抜ける廊下があるぐらいで割と殺風景な部屋だ。でてきた店員さんは高校生から大人になりかけぐらいの若い男性だ。
「なんのご用件でしょう?」
店員さんっぽい人は話しながらも目線はクスラに向いている。
「依頼で向かった場所で魔物を拾いまして。従魔登録をしたいんですが、どうすればいいですか?」
「あー、はいはい。それじゃぁこの書類に名前を書いてね?それと見た感じ冒険者だよね?タグを貸してもらえるかな?」
「はい。」
そういって街の入り口と同じように、書類をもらってタグを渡した。
それにしてもみんなタグを見て何か書いているが、内容読める人が結構いるんだな?
「それって何て書いてるんですか?」
気になったので聞いちゃおう。
「これですか?私も知りませんよ?」
「えっ!?知らないの!?」
分からないのに書いてるの...?
「えぇ、ここを書くみたいなのは知ってるんですが内容までは...。わかるのはギルドの人だけらしいですよ?」
「そうだったんだ...。」
門番の人もわかってなかったってことなのかなぁ...。
「書類かけましたか?」
「あ、あぁ。書けましたよ。」
危ない、ちょっとびっくりしてボーっとしてた。
「それじゃぁ次は、これですね。」
そういって店員の男性が取り出したのは。何かスタンプみたいな形のやつだ。
「それは何ですか?」
「これは従魔との魔法的な繋がりを作るハンコですね。これを契約主と魔物にぽんぽんっとすると終わりです。」
あれ...?思ったより簡単なんだな?時間がかかるって話しだったが...たしか...。
「登録する魔物が安全か調べなくていいんですか?」
「えぇ、その魔物の事はよく知ってますし。見た所とても懐いてるようですしね。」
なるほど?魔物によって見る所が変わってくるってことかな?
「それじゃ、ハンコ押してもいいですか?」
「えぇ、構いませんよ。」
一応クスラにも話しておかないとな。
『クスラ。これから俺とクスラを魔法的な繋がりを作るためにハンコを押すんだけど暴れないでね?』
『ん、ええでー。』
「どこに押す感じですか?」
手かな?
「どこでも構いませんよ。どこにしますか?」
「それって跡が残ったりします?」
「いえ、普段は見えませんが。街の入り口とかでは見せないといけないので。マナを通すと表に出てくる感じ...っていえばわかりますか?」
ほほー。便利だな。ただ見せないといけないなら手の甲とかでいいか。
「それじゃここにお願いします。」
そういって手の甲を差し出す。
「はい、ポンっと。そっちにもポンっと。」
店員さんはリズムよく、俺の手とクスラのおでこ?あたりにポンポンっとハンコを押した。
「これで終わりですか?」
「えぇ。おしまいです。あ、登録に銀貨5枚かかるんですが大丈夫ですか?」
おぅ...そりゃ無料じゃないか...。
「はい、どうぞ。」
アイテム袋から銀貨5枚を出して手渡す。
「どもー。ありがとうございましたー!」
終わった瞬間店員はもうどっかいっちゃった。仕事が溜まってたのかな?
「んじゃ、酒場にいきますかー。な、クスラ。」
そういって頭の上で多分周りを見てるクスラを撫でる。
うむ......いい手触りだ...。
『おー!楽しみやな!』
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