第44話 クスラ。
44.クスラ
「そういえば従魔ってどうやってするんだ?」
今はオークの巣からの帰り道。フェイとネレが周りを見て回って異常がない事を確認できたので今回の依頼は完了だ。帰りは行きと同じ並びで帰ってる。ただ、いきと違い帰りにはクラゲスライムが一匹増えているが。
そんなクラゲスライムは今、俺の横で浮いている。結界で囲んで運んでるんだ。
「従魔ですか...。通常であれば従魔屋で既に登録された魔物がいるんですが。野良の魔物を連れて行く場合まずは門番の方に魔物を街にいれる許可書をもらったり。従魔屋にいってその魔物が安全か調べたりするので大変なんですよね。病気を持ってないか?とか、性格的に暴れるような子じゃないか?とか。そうゆうのを調べて、その後に従魔登録をして。届出をだせば完了ですね。」
「おー。」
ちょっと気楽に考えすぎてたかな...?思ったより大変そうだし、その場の勢いで決めるもんじゃないな...。
まぁでも、俺のわがままなんだし。頑張ろう。
「そろそろ村につくぞ。」
これからの事を考えているといつの間にかもうすぐ村に着く所まできていたようだ。
「村についてからはどうするんだ?」
「村長と村にいる冒険者に倒したことを話しておしまいだな。」
「そんな簡単でいいのか?もっとこう、なんか時間がかかる物だと思ってたよ。」
「ん? 話すだけだからすぐ終わるぞ?」
「いや...。そうじゃなくてさ。ちゃんとオークの巣を破壊出来たのかとか確認しなくていいのかな?って」
「あー。そこは信用と信頼だな。もしオークの巣が破壊できてなかったらどうせ後でばれるんだし、まずくなるのは自分自身だからな。」
なるほど......だから別に確認が必要じゃないってことか...。
「報告は任せてもいいかな?ちょっとこの子の様子を見たくて。」
そういって俺は横で結界で浮かせてたクラゲスライムを指さす。
「あぁ、いいぞ。報告は任せておけ!」
「ありがとう、助かる。シューの近くで待ってることにするよ。」
「分かったそれじゃぁ、今日もこの村に泊まって明日、朝になったら出発することにする。フェイとアキリスはさっき捕ったので晩御飯の用意をしてくれ。ネレとドリスもケイと一緒に休憩しててくれ。報告は俺だけでいい。」
「了解。」
「はーい。」
そうこう話してる間にもう目の前に村が見えてきた。そのまま特に会話もなく、門番に挨拶をして村の中にはいり各自の事をし始める。
ルガードはそのまま村長のところへ。フェイとアキリスは馬車の近くの炊事場で晩御飯の用意。ネレは欠伸をしつつ馬車内に入っていったのできっと寝るんだろう...。ドリスは少し離れた所で魔道具の点検をするのか道具を広げている。ちょっと気になるな...。
魔道具ってどうやって作るんだろう?そのうち調べてみたいな。やっぱりそうゆうのって一度は自分で作ってみたくなる。
異世界人ならではの発想で一攫千金みたいな......無いか!
俺はクラゲスライムの入った箱を結界で浮かべたまま馬車の近くで休んでいるシューの所まできていた。
気になった事があったのでシューと話してみようと思ったんだ。
「シューただいま、変わりはなかったかー?」
目を閉じて寝転がっているシューを撫でつつ声をかけると、シューが目を開けチラッとこちらをみる。
相変わらずいい毛並みだなぁ...。もっふもふだ。
『お帰り~。その箱はどないしたん?』
箱の中身が気になるのかシューが鼻で箱を突っついてくる。
「この子はオークの巣で拾ったんだ。弱ってたから治療して、今はその経過観察中なんだよ。」
クラゲスライムがはいった箱を地面に降ろして観察する。
『ふぅ~ん。ねぇケイってさ、やっぱ僕の言葉理解できてへん?』
「そうだな...。スキルのおかげで何を話してるかわかるよ。」
『やっぱり! なぁなぁ!今日はお肉が食べたいってゆうてくれへん!?』
「何となく伝えておくよ...。」
やっぱりそうだ...。クラゲスライムもそうだったけどやっぱり関西弁に聞こえる...。何でなんだ?言語理解壊れたか?
それか魔物は全部、関西弁でしゃべってる......?やだなぁ関西弁でしゃべるドラゴンとか。
クラゲスライムが入った箱を見てみるがまだ目を覚ましそうにない。
この子はどんな性格なのかなぁ?うまくやっていけるだろうか...。不安ばっかり出てくる。
もしこの子が目を覚まして住んでた場所に帰りたいと願うなら。どうにかして帰してあげたいな。後ろからシューが『ねぇってばー。お肉にしてってゆうてやー。』ってゆってきてるが気にしないでおこう...。背中をものすごく鼻で突っつかれてるが気にしないったら気にしない。
「おーい!報告終わったぞー!」
シューを撫で繰り回してあしらっていると。ルガードが報告から帰ってきた。
「晩御飯できたか?」
「えぇ、出来てるわよ。」
「んじゃ飯にすっかー。」
どうやらちょうど晩御飯もできたようだ。
「ケイ。ネレを起こしてきて?」
「わかったー。」
フェイにゆわれたので馬車内にまでネレを起こしに行く。
「ネレが来たら飯にするぞー。」
ルガードの声を聞きながら俺はネレを起こしに行った。
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晩御飯を食べ終え日も落ちてもうそろそろ寝る時間になってきた。昨日と同じように各自がテントを建てて後は寝るだけになり、みんなテントに入っていった。
晩御飯は鳥肉をピリッと辛くしたもので美味しかった。
結構いろいろ調味料があるんだよなぁ。自分でも料理やってみようかな?
テント内には昨日と違いクラゲスライムが入った箱が置かれている。もうそろそろ起きたりしないかな?一応防音の結界でもはっておこうかな?話し声が聞こえたりしたらみんな起きたりして迷惑かけそうだしな。
テント内に収まる大きさで防音の結界をイメージして作る。
テント内が結界のせいでさらに狭くなっちゃったな...。まぁ寝れるぐらいのスペースはあるからいいか...。
クラゲスライムをそっと持ち上げて毛皮の敷物の上に置く。
そのまま何となく優しく撫でる。
う~む、いい手触りだな......。ぷるぷるでつるつるで。ぽよんぽよん。
そのまま撫でているとクラゲスライムがぴくっと動いた。
お?目覚めたか...?
『うぅ~ん。よく寝たなぁ~。』
クラゲスライムがその二本ある触腕なのか触手なのかをもぞもぞうごかしながら起き上がる。
クラゲスライムって浮かべるのか......。
目の前には空中に浮かぶ、スライムから二本の触腕が生えたクラゲスライム。
『ん?ここどこや?たしかうちはオークに捕まって...。』
「目が覚めたか?」
目が覚めたクラゲスライムから少し離れて声をかける。
『っ!?だ、だれ!?』
クラゲスライムが慌ててその触腕をあたふたさせている。
「こっちだよ。」
そういって淡く光る様にイメージして作った照明の結界を灯す。
『あなたは誰?ここはどこなん?』
クラゲスライムがこちらを向く。ってゆうかそっちが前なんだ...。
「俺はケイってゆうんだ。ここは村の中にあるテント内、安全な所だよ。」
『そうなんや......。なんでうちはここに?』
「オークの巣で弱ってるところを見つけたから治療したんだよ。」
『そうなんや...。ありがとう、治療してくれて。 あれ......?そういえばなんでうちと意思疎通が出来てるん?』
「それは俺のスキルのおかげだよ。言語理解ってスキルがあってね、それで君の言葉がわかるんだ。」
『へぇ、便利なスキルがあるんやねぇ。』
「それで、どうしようか。」
『ん?どないしたん?』
クラゲスライムは安全だと理解したのか触腕をうにょうにょしながら浮かんでいる。
「君を治療してから、意識が戻らなかったからここまで連れてきたけど。君が望むなら元いた場所まで連れて行くけど?」
『えー、うーん。どうしよかなぁ。うーん。』
クラゲスライムは触腕を腕を組むようにクロスさせて悩んでいる。
「え、悩むとこなの?」
ってかその触腕そんな風に動くんだ......。
『だってさ~。うちが住んでたとこ水があるだけでなんもないんやでぇ?うーん、決めた!ケイについてく!その方が楽しそうやし!』
「適当に決めて大丈夫か...?」
『ええよええよ!ケイは恩人やしな!しっかり恩かえすでぇ!これでうちとケイは仲間やな!』
クラゲスライムは何が楽しいのか触腕をうにょうにょさせて踊って?いる。
「そうだね...。そういえば君に名前ってあるの?」
『名前? ううん、必要ないからなかったよ~。』
「そうなのか。これから一緒に連れ添っていくなら君の事をずっと君って呼ぶわけにもいかないから名前を付けてもいいかな?」
『名前つけてくれるの!?ええよ!』
「何だかそんなに喜ばれるとは思ってなかったな...。」
『ええやん!名前うれしいで!それで?どんな名前にしてくれるん!?』
「そうだなぁ。安直だけど、クラゲスライムだからクスラってのはどうかな?」
『う~ん。うん!ええとおもうで!これからうちはクスラやな!よろしくね!ケイ!』
「よろしくな、クスラ」
なんてゆうかちょっと気恥ずかしい雰囲気だ...。
『それでっ?この後はどうするの?』
クスラはテンションが上がってるのか触腕もわきわき激しく動いている。
「ん?もう夜も遅いし寝るだけだけど?」
『えぇ~もっとお話ししようやぁ。』
「そう言われてもなぁ。俺も眠いし.....ってかそうだ。会話どうしよう。」
『会話がどないしたん?』
「いやぁ外で話す時このままだと困るなって思ってさ。」
『何で?』
何で......言い方に困るな...。
「言語理解のスキルってさ珍しいらしくて。他の人にばれるとあんまりよくないんだってさ。」
これで伝わるかな?
『ふぅん。だったらケイも念話覚えれば?』
「念話...?念話って覚えれるのか?」
『うちらが会話するときはいつも念話やで?』
そういわれてみればそうだな...。口ないもんな...クスラ。
「念話ってどうやってやるんだ?」
『う~んと。マナの糸を出して相手に繋げるのが初歩やったかな?』
「マナの糸をだす...?どうやって...?」
『気合?』
「気合か~。」
まぁやるだけやってみるか...。いつも結界とか使ってるし少しはマナの扱いがうまくはなってるといいな?
まずは何となくいつも使っているマナの存在を認識してみる。クラリエさんとルガードにもらった通話ができる指輪。これも一種の念話なのかな?この魔道具を使う時はいつもマナを流しているから何となくマナは分かるはずだ。
目を閉じてマナだけを感じるようにすると何となくそれっぽいのがわかる。冷たい空気とゆうか。何かいつも感じてるけど。気にしてない空気みたいなのを感じる。
『どう?マナ感じれた?』
「う~ん?何となく?」
『そしたらそれをそのまま指の先から糸にして出すんや。』
ふむ...。なるほど?
人差し指をピンと伸ばして集中する。マナを人差し指から糸にして伸ばすのをイメージして...こう、にゅ~っと。
「お?でた?」
『出来た!?なんや適当にゆってみたけどできるもんなんやなぁ。』
「おい! 適当だったのかよ。」
『まぁまぁ、出来たんやからええやんか。』
「はぁ...。まぁいいか。それで?これをどうするんだ?」
『その糸を念話をつなげたい相手につけるんや。』
こんな感じか?
人差し指から伸びた糸をクスラの体に繋げる。
『キャッ!ちょっと!どこにつけてんや!』
クスラが触腕で自分の体を抱きしめる。
「どこって。どこなんだよ...?」
俺から見るとクスラの正面?の真ん中ぐらいに糸がついてるんだが...。
『そんなのうちの口からゆえるわけないやろ!ふんっ。』
「えぇ...。う~ん。なんかごめんね?」
『まぁええわ。今回は初めてやしな。許したるわ!』
「ありがとうよ...。それで?これからどうすればいいの?」
『後は伝えたい事を考えながら頭の中で話すだけでええはずやで。』
ふむ...。
『こうか?クスラ、聞こえてる?』
『聞こえてるで~。これで念話習得やな!』
『習得なのかな?なんかまだ糸が出しづらい気がする。』
『まぁまぁ。そのうち慣れるやろ~。』
『そうだな...。それじゃそろそろ寝るよ。明日、街に帰るからな。』
『えぇ~、しょうがないなぁ。眠くないけどうちも寝ることにするわぁ。』
『あぁ、そうしてくれ。』
そういって俺は念話の糸をクスラから離す。
「クスラ、悪いけど今日はここで寝てくれるか?」
木箱の中にふわふわな感じの毛皮を詰めつつクスラに話す。
『わかった~。んじゃまた明日ね~。』
「あぁ、お休み。」
クスラは木箱の中に納まったので俺も毛皮を引いてその上に寝る。
明日は街に帰って、従魔登録して...。あ、クスラに従魔登録すること話してなかったな。明日話すか...。
それじゃ、おやすみなさい。頑張れ明日の俺。
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