第43話 新スキルを使ってみる。

43.新スキルを使ってみる








「ちょ、ちょっと待った!」

気づけば口から言葉が出ていた。言語理解で聞こえる声を聞いたら堪えられなかった。


「ん? どうしたんだ?ケイ。」

ルガードがこちらに振り返る。


「その魔物......。どうしようもないのか?」


「うーん。どうなんだ?アキリス。」


「そうですね...。見た所食事もまともにできずに放置されていたようでかなり衰弱していますし。治療するには浄化された水と、この魔物にあった属性のマナを流す必要がありそうですね。一番いいのは、浄化された水に属性を付与した物があればいいんですが.......。」


「用意......は無理そうなのかな?」


「浄化された水は私が用意できますが......。この子にあった属性は...見た所、水と空間属性ですかね?属性を付与するには付与士がいなければ難しいですから...。」


現実的ではないってことか......。ホントにどうしようもないのか?浄化された水はアキリスが用意できるってゆってるから問題は属性を付与する事...。結界でどうにかできないかな...?結界で...?どうやって...。


箱に入ったクラゲスライムを見てみる。その姿はスライムの様にぷにぷにでつるつるだ。だけど元気がないのかしょぼんとして、心なしかしぼんでるように見える。

色は白い部分と青い部分がグラデーションの様になっていて綺麗だ。体からはクラゲの様に触手っぽいものが二つ生えている。

今も言語理解で声が聞こえる。


『こんな苦しい状態で生きてるのはいややぁ。誰か殺してぇ。』


もう、自分ではどうにもできないんだろう。意識も朦朧としていて、ただ思考が声に出ている状態なんだろう。

声が聞こえていなければ俺も殺してあげるのが正解だと思う。だけど、切ない声を聞くと助けてあげたいと思っちゃったんだ。


どうにか...どうにか......。何かないかステータスを見てみるか。





名前:ケイ   15歳

LV 36

HP98/98 MP180/180

体:76

力:69

魔:142

守:66

速:102



スキル 言語理解  結界術LvMAX  錬金Lv1






今回オークをそこそこ倒したがレベルは上がっていないようだ。経験値分配ってどうなってるんだろうな......?って今はそんな事考えてる場合じゃない。


スキル...言語理解。 結界術...錬金......錬金か!


錬金でどうにかできないかな?


「アキリス!浄化した水を用意してみてくれないか?」


「えぇ、わかりました。」

アキリスはそうゆうと腰のポーチから水が入った瓶を取り出し何か詠唱し始めた。


「お?やっと再起動したか?何か思いついたのか?」


「あぁ、ごめん。ちょっと考え込んでいた。 まぁ...うん。出来るかわからないけど。やってみるよ......。 あれ?フェイとネレは?」

ルガードに指摘されて気づいたが、そこそこの時間考え込んでいたようだ。

周りを見るとフェイとネレがいない。ドリスはなんか装備の点検をしている。


「あの二人ならオークの巣が別の魔物に利用されないように片づけにと、周りの索敵ついでに今日の晩御飯捕りに行ったぞ。」


「そうだったのか......悪いことしちゃったかな?」

自分のわがままでみんなを放置して、ここでかなりの時間を使ってしまっている。

ルガードにドリスとアキリスは見た所何とも無さそうだが。女性は何考えてるかわからなくて怖いからな...。


「まぁいいんじゃねぇか?後で一言謝っとけば。」


「そうだな...そうするよ。」




「出来ましたよ。」


アキリスが何か詠唱してるのを見る事5分ほど、詠唱が終わり一瞬ぴかっと光るとそこには薄く光る水がはいった瓶が出てきた。


「これが浄化された水...?」

何か水が光ってて綺麗だが。浄化ってこんな感じなんだな...。


「えぇ、聖職者が祈りを捧げ、浄化した水。分かりやすくゆうと聖水ですね。」


そういってアキリスは聖水を手渡してきたのでそれを受け取る。

なるほど...聖水か。


手渡された聖水をよく見てみる。少しひんやりしていて。薄く光る瓶。

間接照明によさそうだな、なんて考えてしまう。


「それで? どうするんだ?」


「あぁ。この間新しく覚えたスキルを使ってみようかと思ってね...。」


「ほー、いいのか?見られても。」


スキルは隠したほうがいいって話しか......。


「まぁいいさ。これから何度も一緒に依頼行くんだろ?なら構わないさ。」


「そうか。ならいいんだ。」

そういってルガードは黙る...がその顔は少しうれしそうだ。


「それじゃ、やるぞ。」


まずは属性付与した結界を作る。


水の結界。いつもは結界から水が溢れてくるが。今回は水が溢れるタイプではなくて、ただ結界に水の属性が付与された物を想像して作った。

いつも結界は白く透明だが。水の属性を直接結界に付与したからか結界は青い。


次は空間属性の結界だ。 空間属性の結界は作った事はないが。結界自体がそもそも空間に干渉するスキルなので多分行けるだろうってゆう楽観だ。

今までもイメージで大体行けたので今回も行けるんじゃないか?ってゆう。

それでも初めてなので。十分イメージする。


「出来たか...。」


何とか空間属性を付与した結界を作る事が出来た。いつもの結界と見た目は変わらないが、結界が薄く光っている。これが空間属性なのかな?


目の前に5センチほどの二つの結界のキューブがある。次だ。



2つの結界のキューブとアキリスが作ってくれた聖水が入るように少し大きめの結界を作る。その中に2つの結界と聖水を入れて準備は完了だ。

2つの結界と聖水を囲んでいる結界はマナを通さないようにイメージして作った。出来てるかわからないが、これからの結果次第だろう。


そしてここで使うのが錬金の分解と構築だ。スキルはイメージ次第な所があるので、強くイメージする。


結界2つと聖水をすべて分解するイメージで。




『分解』




スキル名と唱えると結界で包んでいた聖水と二つの結界が淡く光り分解されていく。細かいポリゴン状になって消えていく感じだ。


これで恐らくだが、この結界内には二つの属性と聖水が分解された状態で漂っているはずだ。すべてが初めてなので全部が憶測になるが。


そしてここで3つをつなぎ合わせる。




『構築』




聖水に先ほど作った属性が付与されるようにイメージして構築する。

スキルを唱えると分解の時とは逆に小さなポリゴンが集まって形になっていく。

結界内で少しづつ瓶が出来上がっていく。




「出来た。完成だ......多分。」

マナを通さない様に作っていた結界を解除して瓶を手にとる。

瓶は聖水のときはかすかに光ってる程度だったが。今ははっきりと明かりとして使えそうなほど光っている。

青と白のグラデーションになっており。それは偶然かクラゲスライムと似たような色だった。


「すごーい!どうなってるの?それ!」


「えぇ、綺麗ね。」



「!?帰ってきてたのか。」


突然声をかけられてびっくりしたが。フェイとネレが戻ってきていたようだ。集中していて全然気が付いてなかった。

フェイの手にはまたしても鳥があったのできっと狩りはうまくいったんだろう。




「アキリスどうかな?一応完成したんだけど。」

そういって俺はアキリスに完成した瓶を見せる。


「そうですね......。見た所出来てそうですが。せっかくですし鑑定しましょうか。ドリスさん。」

アキリスがドリスに声をかけると、ドリスは頷いてこちらに近づいてくる。

ドリスは瓶に顔を近づけるとモノクルをかけ何かを見ている。


少し待つとドリスが顔を上げ、こちらをみて親指をグッとしてくる。


「えーっと、どうなんだ?」

答えが分からないのでアキリスの方へ顔を向けて聞く。


「うまく出来ているようですね。」


あれは出来てるって事だったのか......。


「まぁ出来てるならいいか。んじゃこれをクラゲスライムにかけてみよう。」


「えぇ、そうですね。」


いつのまにか地面に置かれていた木箱に近づく。中にはぐったりとしたクラゲスライムがいる。


「それじゃかけるぞ?」


「えぇ。」


俺が声をかけるとみんなは黙ってその様子を見ている。


錬金スキルで作った瓶を傾けてクラゲスライムに少しづつかけていく。すると瓶の中身が当たった場所から少しづつクラゲスライムが光り、その光がクラゲスライムを包んでいく。


光が収まるとそこには心なしかつやつやとしたクラゲスライムがいた。さっきまで聞こえていた悲し気な声も聞こえなくなっており。耳をすませば寝息?のようなものも聞こえる。


「これで大丈夫かな?」


「そうですね。これで危機は脱したでしょう。」


「そっか。よかったよ...。」

とっさに出た言葉でみんなを待たせてしまったが。うまくいってよかった...。


「それで、そいつどうするんだ?」


「えっと......。どうしようか...?」

ルガードにゆわれて気が付いたが、助けた後の事を何も考えてなかった。


「元の場所に返すのは難しいですからね...。」


「そうだなぁ。どこに住んでたかもわかんねぇしな。オークの巣に居たって事はこの近く何だろうが。」


どうしよう...。俺のわがままでこの後もこいつを返すためにこのへんを探索するのは気がひける。かといってこのまま放置するわけにもいかないし...。


「クラゲスライムって危険な魔物なのかな?」


「あ? 全然危険じゃねぇぞ?すっげぇ弱い魔物だからな。」


「そうですね。なんといっても普通のスライムの亜種ですし。強さはそんなに変わりません。ただこの子は珍しい空間属性持ちなので。貴重な存在ではありますね。」


「普通は違うのか?」


「えぇ、普通は水属性のみだけのはずです。」


へぇ...。そうなのかぁ。


「たしか従魔にすることが可能って話しだったよな?」


「そうですね。クラゲスライムは珍しい魔物ですが、いないわけではないのでたまに飼っている人を見かけますよ。」


「じゃぁ俺が世話をするよ。俺のわがままで助けたんだし。面倒をみる責任は俺にあると思う。」

決して一人が寂しくてちょうど従魔が欲しかったんだとかじゃないぞ?珍しい空間属性だからいいなとか思ってないぞ? ホントだよ?


「まぁいいんじゃねぇか?ちゃんと面倒を見るんだぞ?」

ルガードがお母さんみたいなことを言い出した。


「いいんじゃないでしょうか?従魔を世話するとゆうことは心が豊かになりますから。」

アキリスはやはり優しい。


「たまに触らせてねー!」


「そうねぇ。いい手触りだわ。」


ネレとフェイは寝ているクラゲスライムを優しく撫でていて、ドリスは腕を組んでうむうむ頷いている。



地面に置いていた木箱を持ち上げ中を見るとクラゲスライムが静かに寝ている......様に見える。



「これからよろしくな。」

そういって俺はクラゲスライムを優しく撫でる。





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