第42話 オークの巣。
42.オークの巣
「みんな、そろそろだよ。気配が多くなってきた。」
「おう、それじゃ準備するか。」
ルガードがそういって装備の最終確認をすると、他のメンバーも各自それぞれが装備の確認をし始めた。
俺も装備の確認しておくか......。
買った防具はよし、止めてある金具も問題なし...。腰には一応剣と、外套は脱いだほうがいいんだろうか?
他には...。結界はいつでも発動できる。MP残量も問題なし。
うん。準備はおっけいだな。
「全員、確認は終わったか?」
ルガードがそうゆうとみんなが頷く。
「それじゃ流れを説明するぞ。まずはネレが偵察する。その後行けそうならそのまま突入で殲滅だ。」
えっ?それだけ......?
ルガードの簡素な説明に俺以外のみんなは頷いてる。
「ん?どうしたケイ。分からないところでもあったか?」
戸惑っているのがわかったのかルガードが話しかけてくる。
「え、いや......。それって作戦なのか?説明が簡単すぎないか?」
「そうか...? んー。 ケイは作戦って聞くとどんなのを想像してたんだ?」
「そうだな...。まずは相手のいる場所の地形を確認して。どこから攻めて。危ないときはここから逃げて......。みたいに細かく決めておくものだと思ってたよ。」
「あー、そうだな。まぁ、その確認を今からネレにしてきてもらうんだが。それで問題なければ突入だな。そりゃ油断はしちゃいけねぇぞ?でもなぁオーク程度ならよっぽどの事がなければ危なくなる事はないんだよ。それを見越しての簡単な作戦ってのもある。臨機応変にってやつだな。」
「なるほどなぁ...。」
まぁあんまり難しい作戦たてられると覚えれないし、よかったと思うか。
「まぁ冒険者やってればそのうちちゃんとした作戦が組まれた依頼をすることもあるだろう。その時の楽しみにとっておくといいさ。」
「そうだな......。そうするよ。」
「それじゃぁネレ、頼めるか?」
「まかせてっ!それじゃいってくるねー。」
そういってネレが森の方へ振り向いた瞬間、姿が消えた。
「っ!?消えた......?」
「お? そうか初めて見るんだよな。あれはネレの持ってるスキルのひとつだな。自分の気配を薄くするってやつだ。」
へぇ...。やっぱそうゆうスキルもあるんだなぁ。隠密?に、気配察知?にこの二つは持ってそうだな。
ルガードなら怪力とか剛力とかかな? ありえそう。
ネレが偵察にいって5分ぐらい経ったがまだ戻らない。偵察って結構時間かかるんだな...?
他のみんなはそれぞれ自由に待機しているが、警戒だけはちゃんとしているようだ。なんだかんだ言ってオークの巣に近いし。会話も無く、微妙な緊張感がある。
何かむずむずするな。コンクールの演奏前の袖にいるような。わくわくと緊張が混じった気持ちだ。
「帰ってきたか。」
「ん?」
突然ルガードが呟いた。
「戻ったよー!」
「うおっ!?」
目の前に突然ネレが現れた...。めちゃくちゃびっくりした......。これがスキルの効果か、すごいな...。
「にひひ、びっくりした?」
ネレはいたずらが成功した子供の様に笑っている。その笑顔を見ていると怒る気も失せる......。
「あぁ...びっくりしたよ。もうやめてね?」
「にひっ」
問いかけには答えず含み笑いだけを返してくるネレ......不安だ...これ、またされそうだな。横ではフェイも苦笑いをしている。
「それで? どうだったんだ?ネレ。」
ルガードがネレに偵察の結果を聞くみたいだ。
「うんー。話しに聞いてた通り。崖にある洞窟前にオークが集まってたねー。崖前にいるのは全部普通のオークだったけど。洞窟内にオークの上位種が3体いる気配がしたよ。崖前の洞窟の入り口以外に入れるところは無さそうだったから逃げられる心配はないと思う。後、弱った動物の気配がひとつ。多分食料にするつもりなんだと思う。」
「人の気配は無かったか?」
「うん、無かったよー。」
「そうか、それじゃ準備していくか!」
「はーい。」
「なぁルガード。気になる事があるんだがいくつか聞いてもいいか?時間がないようなら後でもいいんだが。」
ここにずっといるのも危なさそうだしな。
「ん? 別に構わないぞ。今回はケイの経験のためにきてるからな。」
「そうか......それじゃ遠慮なく。人の気配がどうこうゆってたが、オークって人を襲うのか? 食料的な意味で?」
それとももう一つのほうの意味で......? でも魔物ってマナ溜まりから生まれるんだよな?
「あぁ。オークは何でも食べるからな。今回は村から被害の報告は来てないから誰も襲われていないはずだが。確認はしないとな。」
「そうなのか......。後、ネレが今偵察にいってくれてオークがいるのはわかったんだが。もっとこう、オーク達が寝静まるまで待つとか。出かけてるオークがいるかもしれないから待つとかはしないのか?」
「あー。そうする場合もあるが。今回はしないな。理由としては、する意味がないからだな。」
する意味がない...?
「オークがどうゆう生活習慣を取っているかなんてじっくり調べないとわからないしな。待って調べている間に被害が出るかもしれないし、調べ終わっても時期をみて作戦を練らないといけないからな。やりだすときりがないんだ。だから今ある程度まとまっていて、情報にあった上位種がいる今倒すんだ。」
首をひねって考えているとルガードが詳しく話してくれた。
なるほどな......。物語みたいにうまく全滅させる事なんてのは無理か。
「まぁまとまった数倒せば。倒せなかった数匹ぐらいなら村の冒険者でもどうにかなるだろう。」
「ふむ。なるほどな。後、作戦の事なんだが一つ案があるんだ。」
「お?なんだ?」
「洞窟前にオーク達は集まってるんだよな?その範囲を結界で閉じ込めてやろうかとおもってな。そうすれば漏れが出ないだろ?」
「結界でそんなことが出来るのか?」
「あぁ、オークが俺の結界を壊せないのはさっき見たろ?オークの巣がどれぐらいの広さかわからないが。よっぽどじゃなければいけるはずだ。無理だったら無理で見たときにゆうよ。」
「そうか。みんなも問題なければそれでいいか? よし。んじゃケイの結界でオークの巣を包んで漏れを無くす事にする。もし無理ならオークは倒せるだけでいい。逃げるのは追わなくていい。 陣形は俺がまず前衛で突入する。ネレは遊撃、アキリスは全員のサポート、ドリスとフェイでアキリスを守りつつ遊撃。ケイはフェイとアキリスとドリスと同じ位置にいて誰かが危なくなったら結界で守る役目だ。いけるな? 弱った動物ってのが一匹いるのが気になるが。危険じゃなければ放置しておこう。こっちを攻撃してくるなら倒してしまっていい。以上だが質問はあるか?」
ルガードがみんなを見回すが誰も何も質問はないようだ。
俺も特にないなぁ。危なくなったら全員をそれぞれ結界で包む事を意識しておこう。
「んじゃいくぞ。」
そういってルガードが歩きだしたので俺たちも続いて歩きだす。
まだ緊張感はあるが。さっきよりはだいぶましになってきたな。このまま問題なくさくっと終わらせたいなぁ......。
あっ。これフラグ立てちゃったか?
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「見えてきたな、ここで一旦止まるぞ。」
ルガードのその言葉に全員の動きが止まる。今はまだ森の中、少し先。10メートルほど先で森が終わっていてその後は広場になっている。オークがいる広場だ。
歩くオークの姿が遠目に見える。
「ケイ、結界で包めそうか?」
ルガードにそういわれてオークの巣を改めて見る。
少し離れていてわかりにくいが。オークの巣がある広場は野球かサッカーができそうなぐらいは広い。オークの家だろうか?なんか木の葉っぱが重なった家みたいなのも見える。
うーん。ちょっと予想より広かったな...。でもまぁ何とかいけるかな?
「やってみる。ちょっと集中するよ。」
「あぁ。」
オークの巣の広場をよく見てイメージする。
結界の底の部分は地中に少し埋めて。側面を広場と自分達を囲えるほどの大きさで。上は10メートルもあればいいかな?
後は空気は通るようにして。人や魔物や物は通らないようにイメージして。
右手を前にだして念じる。
「お? 出来たか?」
ルガードが何か感じ取ったようだ。
「ん、行けたみたいだ。結界が見えるのか?」
一応透明にしてるんだが。
「見えはしないが、何かあるってのは感じるな。」
へぇ、わかる人にはわかるって事か。使う時は気を付けないとな...。
「んじゃいくぞ!うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ルガードが雄たけびを上げながらオークの巣へ突っ込んでいく。何かのスキル効果なのか。ただでさえでかい筋肉がもりっとさらに膨れて、雄たけびで森がびりびり震えている。結界も震えているのが感じ取れる。
オークよりルガードに結界を壊される可能性を考えておくべきだったな......。
「それじゃ私達もいきましょ?」
フェイが声をかけてきた。気づくとネレが既にいない。もう行ったのか...。
フェイとドリスを先頭にアキリスと並んで、小走りで森を抜ける。
「おらぁぁぁぁっ!」
「ガァァァ!!」
「おおう、すごいなこれは......。」
ルガードとオークがぶつかりあってどっかんどっかん音が鳴り響いてる。ルガードが斧を振る度にオークが光りになって消えていく。
ネレはどこにいったんだ? と思っていたらルガードを後ろから襲おうとしてたオークが光りになって消える。一瞬ネレが見えたので。多分ネレがルガードのサポートしてるんだろう。
「これってルガードだけでいけそうだな...。」
もうすでに3分の1ぐらいのオークが光りになって消えている感じかな?
「まぁまぁ。やれることは色々あるわよ。ね?」
「えぇ、せめて防御力を上げる支援魔法でもルガードにかけておきましょう。」
アキリスはそうゆうと恐らく支援魔法と思われる呪文を詠唱し始めた。
フェイは弓を使って敵を射っているが、矢を使っていないようだ。手に何も持たず弓をつがえると矢がどこからともなく現れている。
「フェイのそれは実体のある矢じゃなくて魔法の矢なのか?」
「えぇ、そうよ。マナを消費するけど。矢がもったいないって相手にはちょうどいいのよね。」
「へぇ...。」
フェイはどんどん矢をうっていて。オークがどんどん光りになって消えていく。
属性付与した矢とかもありそうだな?実体のある矢と魔法の矢。どっちのほうが威力が高いんだろう?気になるな。
そうこうしてる間もどんどんオークは減っていくし。ドリスはアキリスの近くで回りを警戒している。この状況で、出来ることを考えてみるか...。
とりあえずこれからルガードへ突撃しそうなオークの足を結界で固める。
「グガァッ!?」
足を結界で止められたオークが戸惑っているとそのままフェイの矢が頭に刺さり光になって消えていく。
ふむ......。動き止めるのがやりやすいかな?どんどん止めて行こう。
あっちも。
「グガァッ!?」
そっちも。
「グガァッ!?」
むこうも。
「ガァッ!?」
ふふふ。ちょっと楽しくなってきた。
「ケイ、顔が悪いわよ......。」
フェイがこちらを見て苦笑いをしている。
おっといけない。フェイを呆れさせてしまった...。真面目にやろう...。
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「おーい! 終わったぞ。」
ルガードがこちらに歩いてきている。いつの間にかオークが全滅していたようだ。
「あれ? 上位種のオークは?」
「あ? そんなもんとっくに倒したぞ。」
「えぇ!? どんなのかちょっと見たかった...。」
「そりゃ悪かったな。だがそんなに見た目は変わらないぞ?ちょっと大きくなるぐらいだからな。」
「何だそうなんだ? じゃぁいいかなー。 あれ?ネレは?」
今この場にはフェイにアキリスにルガードにドリスに俺。ドリスはオークからドロップしたお肉に道中でも使ってた冷蔵の魔法陣の魔道具で腐らないようにしていっている。
「今、最後の確認をしているところだ。もうすぐ帰ってくるんじゃないか?」
ふむふむ。
「戻ったよー。」
「おう、帰ってきたか......。ってそりゃ何だ?」
ネレが帰ってきたが何か木箱を抱えている。
「洞窟内にあったオーク以外のもうひとつの気配の正体だよー。見たことないからアキリスに見てもらおうと思って持ってきたの。どう?アキリス。見たことある?」
「どれどれ...? おや。これは珍しい。クラゲスライムですね。」
「クラゲスライム?」
「えぇ。綺麗な水にしか生息していないスライムの一種ですね。森の奥深くか、海の深く、澄んだ水でしか生きれない珍しいスライムです。」
へぇ......変わったスライムがいるんだなぁ。
「どうするの? かなり弱ってるけど倒しちゃう?」
フェイも気になったのか木箱の中を覗き込んでいる。
「うーん。可哀想だけどそうするしかないかなぁ。」
「そうですね。一応従魔にする事は可能ですが綺麗な水がないといけませんからね。」
『誰ぇ?誰かおるんかぁ? 誰でもいいからうちを殺してくれんかぁ?』
っ!?この声はまさか...。このクラゲスライムか...?
「ちょ、ちょっと待った!」
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