第41話 オークの巣までの道中。

41.オークの巣までの道中








ジジジジジジッ


テントの入り口のファスナーを開けて外に出る。地味にこのテント高性能なんだよな......流石神様が持たせてくれたアイテムだ...。ルガード達のテントにもファスナーってついてるのかな?後でチラッと見てみるか。



「ん~!っはぁ。」

日がまだ昇っていない時間の、空の向こうが少し明るくなってきている時間。

少し寒い風を受けながら大きく息を吸い伸びをする。マイナスイオンっぽい緑の空気が澄んだいい匂いが鼻を通る。


「ん?」

周りを見てみると既に起きていたフェイにアキリスがこっちを見ていた。


「おはようー」


「「おはよう。」」


「何か手伝う事はあるか?」


「私の方は大丈夫かなー」


「こちらも平気ですよ。」


「了解、んじゃのんびりしとくー」


手伝う事がないそうなので、テント前においた椅子に座る。

フェイは朝ご飯を作っているようで。アキリスは瞑想をしている。


ルガードとドリスとネレはまだ寝てるのかな?

起きてくるまでゆっくりしておくかぁ。






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「よし、んじゃいくぞ。」


「おー。」


テント前の椅子に座ってのんびりしていると他のみんなが起きてきてそのまま朝ご飯になり、食べ終わってからテントを片づけて出発する準備が出来た。

防具を着ていつでもいける状態だ。


シューの用意はこれからかな?って思ってるとルガードがそのまま歩きだした。


「ルガード!シューは連れて行かないのか?」


「ん? あぁ。今回は歩いてじゃないといけない道をいくからな。馬車は持っていけないしシューも特に強いわけでもないからな。お留守番だ。」


「シューって強くないのか...?そうは見えないんだが...。」

バスほどの大きさの馬車を引っ張れるぐらいだしな...。


「あーまぁ...な。」


ん...? 何か歯切れが悪いな...?


「ルガードってばね。シューを可愛がりすぎて危ないことはさせれないって。戦闘経験をあまりつませてないのよ。」


「えっ!?」

ルガードのほうをバッとみると『あー。』とそっぽを向いて頬をかいてる。


「逆に危険じゃないのか?あまり強くないってゆうのは。」


「まぁなんだ...。一応ゴブリンやオークぐらいなら倒せる実力があるからな...。」


「それ以上の強い魔物は全部ルガードが倒しちゃうもんねー。」

そういってネレはにひひと笑っている。


「うるせぇ!いいんだよ!俺が全部倒せば問題ないんだよ!」


「えぇ...。」

ルガードって意外と子煩悩ってゆうか過保護なんだな...?


「いいから行くぞ!」

そういってルガードは歩き出した。


慌てて俺たちもついていく。





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「はぁ...。」


「何だ?どうかしたか?」

前を歩いているルガードが心配そうに振り返る。


「いや......、何でもないよ。」


「そうか。」

そういってルガードは前を向き歩き出す。


はぁ......。歩くの疲れた...。普段結界で飛んでばかりだから長時間歩くのは今回が初めてだ。

レベルが上がったおかげなのか、体力的には全く問題ないんだが...。いつ魔物が来るかわからない状態が続くのは結構精神的にくる。



村にシューをお留守番させてから森にはいり3時間ほどがたっている。歩いてる並びは先頭にネレ、ルガード、俺、フェイ、アキリス、ドリスの順だ。


ネレが先頭で索敵、ルガードが盾になって。俺が足りない部分の防御となっているが。まだスキルは見せてないので一応の位置。後は守りやすいって理由で真ん中だ。フェイはルガードが止めた魔物に対しての遠距離の弓での攻撃。アキリスとドリスは後方支援でアキリスが回復、ドリスは魔道具を使ってもしもの時の控えと遊撃。ってゆうのが出発時に聞かされた話しだ。

聞いてみれば確かに納得の配置だ、後は実際に魔物が出てきたらどうなるかだな...。




森は緑豊かで、木々が乱雑に生えており中々に歩きづらい。時々生えてるキノコや薬草らしき物を見かけるが採取はしないようだ。


「なぁ。」

気になったのでルガードに話しかける。


「何だ?」


「その辺に生えてるキノコとかって食べれないやつなのか?」


「あ? あー。どうなんだ?フェイ?」


「ん? なに?どうしたの?」


「ケイがこの辺に生えてるキノコは食えないのかって。」


「この辺のキノコ? 食べれるけど、どうして?」


「いや...採取とかしないのかなって気になってさ。キノコとか薬草っぽいのが見えてるから。」


「あ~。そうねぇ、ここって村からそんなに離れてないでしょ?」


「うん?...うん。」

歩いて3時間ってそんなに離れてない距離なのか.....。


「この辺には村の冒険者達が来るからね。私達がとっちゃうと村の人達の分がなくなっちゃうからね。私達のように別の街とかからきた冒険者はその村の周辺でとれる薬草やキノコ類、動物などは必要最低限しか採らない決まりになってるのよ。」


「へぇ。その必要最低限ってゆうのは野営するときとかの食事とかに使う場合ってことか?」


「えぇそうよ。自分達で使う分以上は採らないってゆう決まりなの。もし売りたい場合は地元のよく使う街や村のギルドじゃないと買取してくれないわ。それにどこで採取したかも確認されるわよ。 ねぇ。ケイはゴブリンの買取をしたことはある?」


「ん? ゴブリンの買取はあるけど...?」

どうゆう話しの繋がりだ?


「買取価格が高いと思ったことはない?」


「ん......? うーん。言われてみれば確かに...?」

ゴブリンの魔石と爪と牙セットで銀貨1枚で売れたっけ?んで宿屋が一泊銀貨5枚...。つまりゴブリン5匹倒せば泊まれる。そこに食事を合わせても毎日ゴブリン10匹ぐらい倒せば生活はしていける計算だ。


ゴブリンの強さは大体、一般人でも力仕事してる人なら倒せるぐらいの強さ...。そう考えると強さの割には買取価格が高い気がする。


「昔はね、依頼の途中で薬草とかを採取してついでに納品とかしてたのよ。でもね、そうすると近くの採取場所が無くなって遠くに行かないと薬草採取が出来なくなってね、薬草採取って駆け出しの冒険者がするってのは知ってる? 薬草採取は駆け出しがする依頼、だけどそれには森の奥深くまで行かないといけない。森の奥にいくと強い魔物が出てくる。駆け出しじゃ危なくて薬草採取できない。 そうやって悪循環になっちゃってね。 それを止める為に自分達の分以外は採らないようにして。その代わり魔物の素材の買取価格を高めに設定したのよ。そうすることで薬草類の数を調整してるの。そして薬草が欲しければ高くなった買取価格の分で買ってね?ってわけね。」


なるほどなぁ......。依頼に出かけたみんながそれぞれ薬草とかキノコとか採れるもん全部取ってきたらそりゃ採りつくされそうだしな...。

冒険者ってもっと適当に生きてて、そんな縛りなんて無いと思ってたが。意外としっかりしてるんだなぁ。



「シッ! ......みんな...魔物が近いよ。」


フェイと話してるとネレから警告が出た。どうやら魔物の存在を感知したようだ。


「お? 何が来るかな?」

ルガードは飄々としていて余裕そうだ。


「ん~、スンスン。この感じはオークかな?多分巣から離れた個体だと思う。」

ネレが鼻を鳴らし匂いを嗅ぎとったのか、どうやらオークのようだ。離れていても感じ取れるなんて。スキルの効果なのかな?


初対面だな...オーク。どんな見た目してるんだろう?



「来たよ!」

そういってネレはフェイのいる位置まで下がる。予定通りルガードが前衛で止めるようだ。




ガサガサッ



「お?来たか。やっぱりオークだったな。」


森の奥からオークが出てきた...。見た目は完全に豚だ。肌色の皮膚。身長は2メートル近く。腕毛とすね毛がぼーぼーで...。腰に布を巻いているだけで上半身は裸で体はかなり脂肪ででかいが。筋肉も凄そうだ。

顔も豚。だけど牙が二本生えている。武器は持っていないようだ。



「ゴアッ!ブルルルッ!」



観察して考えているとオークが走り突っ込んできた。


「オラァッ!」


ルガードが斧でオークの体当たりを受け止めそのまま弾き飛ばす。

後ろではフェイが弓を構えており。ネレは短剣を構えて周囲を警戒している。

アキリスとドリスも一応は構えているが本気ではなさそうだ。


弾き飛ばされたオークは起き上がりこちらの様子を伺っている。


「どうするんだ?ルガード。」


「ん? そうだなぁ。いつもなら俺が弾き飛ばしてフェイが弓で仕留めにかかるって感じだ。だけど今回はケイがいるから...。そうだな......。ケイ。おめぇのスキルを使って何かしてみろよ。俺がオークを受け持つからどう連携とるか試してみよう。」


「お、おおう。いきなりだな? まぁいっちょやりますかー。」


「よし、かかってこいやぁ!」


ルガードがオークに向かって挑発すると、オークがまたしても体当たりで突っ込んでくる。

ルガードも斧を構えて突進の衝撃に備えている。


どうしようかなぁ。いつも通りでいいか?


オークがルガードに体当たりする直前に結界を発動させる。

膝から下を包むように一つ、両腕の肩を包むように一つづつ。

動くのは首から上だけの状態にして止める。


「お?どうなってるんだ?これ。」


「結界で動きを止めたんだよ。」


「結界?それがケイのスキルか?」


「あぁ。こうやって動きを止めたりすることが出来る。ドラゴンの時のは結界に属性付与をして凍らせたんだ。」


「ほー。なるほどなぁ。便利そうなスキルだな?」


「まぁね。それで、連携とるならこんな感じになると思うんだけどどうかな?」

オークは動きが止まったままうがうがいいながらもがいている。


「そうだなぁ。これは想像以上だったな。これじゃ、オーク一体ぐらいじゃ全然連携の練習にならないな。」

そういってルガードは斧でオークを切り裂き倒す。


オークが光りになって消えていく。光が消えた後には魔石と牙に......えっ!?

こ、これはもしかして......?


「な、なぁルガードそれってもしかして...。」

そういって俺はそれを指さす。


「あ? あぁこれか?オーク肉だが?」


ええええええええ!?まじで!?魔物からもお肉でるの!?


「それって食べても平気なのか...?」

オークのお肉は塊のバラ肉っぽい。5キロぐらいはありそうだ。脂身と赤身の部分の比率がちょうどよく。美味しそうだ。


「あー。ドラゴンの肉の話し聞いたから食えないと思ってるんだな?」


「あ、あぁ。」


「魔物から出る肉で食べれるのはこうやってドロップしたお肉だ。ドラゴン倒した時みたいに消える前に魔石を抜いた状態だと肉がマナで満たされていて食えないんだよ。」


「へぇ...そうなのか...。オーク肉っておいしいのか?」


「あぁ、オーク肉は人気だな。普通の豚肉もあるんだけどな。オーク肉は上位種になるほどおいしくなるんだよ。」


「ほぉ...なるほどなぁ。」

上位種になると美味しくなるってのは謎だが...。まぁ異世界あるあるなのか?


「そのお肉、そのままじゃ腐らないか?」


「お? そうだな。ドリス、いつもの頼む。」


コクリ


ドリスが頷いてルガードから手渡されたオークのお肉を葉っぱで包み何か紙を一緒に紐で巻いた。その後、アイテム袋っぽいのに入れる。


「何をしたんだ?」


「あれは冷蔵の魔法陣の紙だな。」


「何だ?その便利そうなやつは。」


「魔道具の一種だな。紙に魔法陣を書くとその後マナを流すと書いた効果が出るってやつだな。」


「へぇ、便利なんだね。」


「まぁな。ただ特殊な塗料を使ったりするから一般的ではないが。ドリスが自作できるから。俺たちは使い放題だ!」

ルガードは自信満々にいい笑顔で言い放つ。


「そうか......。」

大変そうだな......ドリス。







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