第39話 言語理解の力。
39.言語理解の力
ガラガラガラ
踏み固められた道を馬車が進む音が響く。空間拡張された馬車でも外の音はちゃんと聞こえるようになっているようだ。
今はもうお昼休憩も終わり。依頼で向かう村へと進んでる最中だ。
「なぁ? ルガード。」
御者を女性陣に代わり馬車内でのんびりしてるルガードに話しかける。
「あ? なんだ?」
「シューって言葉を理解してるってゆってたよな?」
「あぁ、こっちが話しかければちゃんとその通りに動いてくれるぞ?」
「シューが言葉を話す事ってあるか?」
「話すわけねえだろ?」
「まぁそうだよな...。」
あまり揺れない馬車に乗りながらさっきの事を考える。
さっきは勘違いでなければ確実にシューの言葉が聞こえていた。あの後すぐに出発になってしまってもう一度話しかける事は出来なかったが...。
そういえば、魔物についてはアキリスが詳しいんだったよな?聞いてみるか。
「アキリス、ちょっといいかな?」
「はい? 何でしょうか?」
「さっきお昼休憩の時にアキリスが魔物に詳しいって話しが出てただろ? さっそくだけど、魔物について聞きたい事が出来てさ。聞いてもいいかな?」
「なるほど。構いませんよ。」
「ありがとう...。 それで、聞きたい事なんだけど。魔物ってお互いに話せるほどの意味のある言語があるのか?ってことなんだけど。」
「ふむ、いい所に目を付けましたね。」
「お? とゆう事は何かあるのか?」
「えぇ、最近は研究も進んできてまして。魔物には声を出した時の高さや連続する音の繋がりなど。様々な声、音の出し方で意思疎通を取っている事が分かったのです。」
「へぇ、なるほど...。結構細かい会話とかしてるのかな?どこまで意思疎通できてるんだろう。それに、意思が通じてるのは同じ種族?だけなのかな?」
「ふふ、そうですね。細かい事に関してはあまり伝わってはいないようです。音の強さや。高さ。身振りなどで大体の事を伝えているようですね。それに意思が通じるのは同じ種族だけですが。異なる種族同士でもある程度は伝わってはいるようです。」
「じゃぁ俺たちが魔物の言葉を理解する事って......そうか、言語理解か...。」
「はい? どうしました?」
最後の方の言葉はぼそぼそ喋っていたので、アキリスには聞こえなかったようだ。
「いや、何でもないよ...。 魔物の言葉を理解するスキルを持った人とかはいないのかな?」
「いますよ?」
「いるの!?」
言語理解のスキルって結構持ってる人っているのかな?
「えぇ、言語理解のスキルですね。異界の渡り人と呼ばれる人が持っているスキルですね。」
「異界の渡り人?」
異世界人ってことか?
「私達が住むこの世界以外に世界があることは知っていますか? 神の住まう世界。悪魔が住まう世界。そして私達が住む世界。この3つの世界が私達の住む世界でした。それが1000年以上前に3つの世界のさらに異なる世界、4番目の世界から人が来たのです。」
話しが壮大になってきたな...。神の世界に、悪魔の世界か...。実際にいるってことかな?ってゆうか神の世界って。ここに転生する前にいた所か...?つまり悪魔の世界も実際にあるってことか...。
「神の世界も悪魔の世界もあることは知らなかったよ...。実際に神や悪魔っているのか?」
神様にも悪魔にも会いたくないな...。会ってもいいことなさそうだし...。
「そうですねぇ。ケイさんは勇者の物語ってゆう本を読んだ事はありませんか?」
「いや、読んだことは無いな...。どんな本なんだ?」
大体想像つくけど...。
「ある日突然魔王が現れ、世界征服を宣言し。世界は混沌とした物に変わり。魔物が爆発的に増え、人や動物がどんどんと死んでいきました。そんな絶望的な中、神が遣わした勇者が現れ。魔物を倒し。魔王も倒し。世界に平和をもたらしたとされています。簡単に説明するとこうゆう話しですね。」
「なるほど?」
まぁよく聞く本の内容だな?ありきたりとゆうか。
「その話しの中で出てくる、魔王とは悪魔で、神が遣わした勇者が第4の世界の住人だと言われています。そしてその理由が言語理解です。勇者は言葉が通じないはずの魔物や魔人にまで話しをして意思疎通をこなして説得したとの事です。ある程度知能のある魔物。ドラゴンなどですね。そうゆう魔物は勇者に説得され村や街を襲う事もなく。魔王に支配され。魔人へと進化した魔物もまた勇者に説得され今でも生き残りがいるそうですよ?」
「シューもそうだけど言葉が通じる魔物は結構いるんじゃないのか?それに魔物から進化した魔人......?」
「言葉が通じる魔物は居ますね。ただ一部の高位のドラゴンを除いて。ほとんどの場合、言葉が通じるとは。こちらかの一方通行なんです。こちらから話すことはある程度伝わりますが。相手からの言葉はこちらには通じません。シューがそうですね。こちらからの言葉は通じますが。シューから話しかけられてもだれも言葉は理解できません。ある程度お腹がすいただとか。疲れたなどを雰囲気で分かりますが。」
なるほど...。じゃぁやっぱりシューの言葉が理解できたのはスキルのおかげか...。しかも勇者と同じスキル...。ちょっと気分が上がるな。
「魔人ってゆうのはどうゆうやつらなんだ?」
「魔物から進化して。人型になったものですね。進化前の魔物と違い、力も強く。スキルも豊富に持っており。かなり強いらしいです。話しによると。魔人、一人で街を滅ぼす事が出来るらしいですね。」
そんな存在が今もなお生きているのか...。
「勇者以外に言語理解を持った人っていないのか?」
「いますよ。魔王が倒され。勇者が寿命で死に、暫くした後。ある日突然どこからともなく人が現れることがあるんです。その人はこの世界の知識が無く。だけど高等教育を受けた者の様に様々な事を知っていて。そして何より勇者と同じ、魔物と会話が出来たのです。それが先ほどの話しに戻る異界の渡り人ですね。今までに記録にあるだけで14人は確認されています。さらに、記録に残っていないだけで。異界の渡り人はもっといたとされていますね。」
「へぇ...。それってつまり異世界の知識を持ってるって事だよな?それに勇者と同じ存在...。そんな人がいたらすごい騒ぎになりそうだな?」
「えぇ。実際異界の渡り人が発見されたときは国に保護されますね。魔王が死んで1000年以上。いつまた魔王が現れるかわかりませんし。私達の知らない知識も持ってますしね。分かりやすいので言いますと。この紙なんてそうですね。異界の渡り人からもたらされた知識で出来たものです。これの他にも様々な物が異界の渡り人の知識により出来ています。」
「国からすれば有用な知識を持っていて、国を発展させる存在ってことか...。」
金のなる木ってことか。
「はい、それに異界の渡り人は強力なスキルを持っている事が多く。強い人が多いみたいですね。」
まじか...。俺も異界の渡り人って事になるんだよな...?ばれたら国に保護されるのか?
保護ってゆうか監禁か?ばれない様にしないとな...。
「今って異界の渡り人っているのか?」
神様が転生させてくれる時に話してたけど、世界に足りないマナを増やすために転生させるって。つまり異界の渡り人は世界にマナを満たすための器。
今、世界にどれぐらいマナが足りないか知らないが。他に転生してる人とかいるんだろうか?
「確か3人ほどいたはずです。私達が住むリーデン王国に一人いますね。たしか女性だったはずです。」
「へぇ...。残りの二人は?」
「残りはまた別の国ですね。ゲルツ帝国に一人、キリア連合国に一人ですね。」
キリア連合国...知らない国が出てきたな...。そのうち別の国にも行ってみたいなぁ。ゲルツ帝国には絶対に行かないが...。
「なるほどなぁ。ありがとう、色々聞けて楽しかったよ。」
「いえいえ、またいつでもどうぞ。」
アキリスとの会話を終えて、椅子に座りゆったりとする。
色々知らない事を聞けて楽しかったな...。国に保護されてるってゆう異界の渡り人は俺と同じ世界から来たんだろうか?もしかしたら全然違う世界から来た人かもなぁ。
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「ついたよ~」
お? 村に着いたのかな?
「お~。んじゃぁ降りるか。」
そういってルガードが降りて行ったので続いて降りていく。
「ん~!はぁ。」
馬車から降りて伸びをする。馬車内は快適だったが。少し体が凝る感じがした。
周りを見てみるとそこは村だった。
高さ3メートルぐらいの木の柵で囲われた村。RPGとかで初期に来る感じの村だ。
「ここが依頼のあった村か?」
隣にいるルガードに話しかける。
「おう、ここだな。とりあえず村長に話しを聞きにいくぞ。」
「了解。んじゃ行くかぁ。」
馬車は村のすぐ近くに止めた様なので。シューを見張りに残してみんなで村の中へ入っていく。
初めての依頼だからな...少し緊張してきたな...。
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