第34話 ダンジョン。

34.ダンジョン







「お~? こんな感じなのか。」

冒険者ギルド内にある廊下を歩いていきダンジョン内へ入っていく。

ここはたしか0階だったかな? ダンジョンに入る前に準備するところだ。

後転移装置があるらしいのでマナ登録しておこう。


広さは体育館3つほどか? かなり広い。地面や壁は大理石みたいにつるつるですべすべな石タイルみたいだ。何だかダンジョンって感じがしないな、窓のない美術館みたいな感じだ。

中心に大きなクリスタルの何かがある。 あれが転移装置かな?

大きさは5メートルほどで。色は緑っぽい青。地面から生えるように飛び出してる。根本が太く、先端になるにつれて細くなっている。


表面はでこぼこしており。圧縮をかけたみたいな感じだ。

見学してる間も何人かの集団がまとまって消えたり、出てきたりしてる。

消える瞬間や出てくる瞬間は足元に人、一人分の肩幅ぐらいの円が出てそれがピコピコ光って点滅してる、5秒か10秒かそのあと出たり消えたりするみたいだ。


なるほどなぁ、ぶつかったりしないように出来てるんだな...。階層を選ぶときはどんな感じなのかなぁ、今から楽しみだな。


冒険者がそれぞれ集まって確認作業をしてる中、転移装置に歩いていく。

近づくとその大きさがよくわかる。


転移装置に手をそっとあてる。


うーん、ひんやり。


硬くてすべすべしててひんやりしてる。感触は普通の石みたいな感じ。遠くからじゃ高さしかわからなかったが近づくと根本の太さも大体わかってきた。

大人が両手を広げて5人ほど並べれるぐらいの幅があり、転移装置を囲もうと思えば大人が15人から20人ぐらいはいりそうだ。

それに、不思議な力を感じる、この感じは...マナかな? MPが枯渇したときに感じた物が流れているのを感じる。


マナを流すといいのかな?

手からマナを少し流すイメージで放つ。すると転移装置と自分のマナが繋がる感覚がした。

これでいいのかな? 繋がった感覚はしたが、これが正解なのかはわからない。

まぁいいか。とりあえず5階まで行ってみようそしたらどうなるかわかるだろう。


入口から反対側、転移装置の向こう側にダンジョン1階への入り口っぽい物がある。入口には鎧を着た人が立っており門番みたいな事をしてるみたいだ。

兵士なのかな? でもここ冒険者ギルド内だよな...?じゃぁあれは職員か?

立ってるのは二人で一人は若くもう一人は少し歳をとってるみたいだ。

新人とベテランってとこかな?


ほとんどの人は転移装置で移動してる中、見た目からはっきりわかるほど若い連中は1階へ続く入口に並んでるのでその後ろに一緒に並ぶ。

みんなギルドカードを見せて一言二言話して入っていくので時間はそんなにかかりそうにないな。



「よし、次!」


ボーっと周囲を見てると自分の番がきたようだ。

門番をしてるベテランっぽい人に近づいてギルドカードを見せる。


「ん? 金の冒険者か?珍しいな...初めてダンジョンに入るのか?」


「えぇ、まぁ今までくる機会が無くて。今回初めてきました。」


「そうか...。それはまぁいいんだが。そんな恰好で入るのか?」


「あっ、はい。大丈夫です。様子見で入るだけなので。」

またやってしまった...。普通のシャツにズボンに剣一本腰に下げた格好...。そりゃゆわれるよなぁ。いい加減装備揃えたほうがいいか。ダンジョンから出たらどっかで買うかなぁ?


結界で大体どうにかなるから装備の事気にしてなかったんだよなぁ、と心の中で言い訳をしとこう...。


「まぁ金の冒険者なら大丈夫か...? 一応ダンジョン内では自己責任なので気を付けるように。以上! いってよし。」


「はい、いってきます。」

門番の横を通り過ぎダンジョン1階への階段を下りていく。


階段は人が3人ほど並んで歩けるほどの幅があった。

等間隔で明かりがついており足を踏み外す心配はなさそうだ。

ギルドから0階へ下りるときも同じ照明がついてたけど、誰かが取り付けたのかな? それともダンジョンが付けてくれたとか...? どっちにしても便利だから気にしなくていいか。


お? 1階か。


階段を下りきり一階へついた。


「おー? ダンジョンっぽくないな。想像してたのと違う...。」

0階の時からすでにダンジョンっぽくはなかったが1階に降りれば変わるだろうと思ってたが変わらなかった。


大理石っぽいつるつるすべすべの石が天井、地面、壁と全てにある。タイル状になっており大きさは1メートルほどの正方形だ。それが繋がって道になってる。

幅は人が10人ほど並んで歩けるほど広い。天井もかなり高く、ルガード3人分ぐらいはありそうだ。


「ダンジョンってゆうより、こうゆうアトラクションにきたみたいだ。」

俺より少し前に入った人がいるはずだが姿は見えない。後ろからは誰かが降りてくる足音がするので人はいるようだ。


ここで立ち止まっていても邪魔になりそうなので歩き始める。




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「んー? 何てゆうか思い付きで来るもんじゃないな...。」

暫く歩いても魔物もいないし。人とも出会わないし。わくわく感がどんどんしぼんでいく。

それに、今更だけど、ダンジョンの地図もないし、地図を作るのに必要な紙もペンもないし。食料は携帯食料だけだし。一応テントとかはアイテム袋にあるけど。準備不足感が否めない。

そしてもう2階への階段を見つけた。ここまでダンジョンに入ってから5分ぐらいかな?1階はどうやらかなり狭いみたいだ。


下りるほどに広くなっていくのかな?

取り合えず行けるとこまで行ってみよう。そのまま階段を下りて2階へいく。




「ふむ、2階も変わり無しっと。」

1階と変わらずの景色。すべすべつるつるの石しかない。

後やっぱり明かりが壁についてる。今度ルガードに色々ダンジョンの事について聞いてみるか。


さっきは魔物がいなかったが2階にはいるかもしれないし、今更ながら結界で自分を囲み不意打ちを防ぐ。

そのまま歩いていく。


「罠とか無いのかな?」

ルガードに聞く事がどんどん増えるな。


「お? あれは...。」

いくつかの分かれ道があったが全て右に曲がり歩いて暫くすると魔物の姿が見えてきた。

あれは...コボルトか...? 一匹だけの小さい犬がいる。中型犬ぐらいのサイズで見た目は完全に犬だ...。


グルルルルルゥ


「うわっこわっ。」

こちらに気づいたコボルトが牙を剥き出しにして唸る。近所の犬に吠えられたのを思い出すなぁ。


取り合えず結界で動きを止めて、氷の結界をぶつける。


パキパキパキィ


音を立ててコボルトが凍っていき、全身が凍ったコボルトが光りになって消えた。


「何かやだなぁ。」

犬をいじめてるみたいですっきりしない。けどまぁ...ここはダンジョン何だし割り切ろう。

コボルトのドロップ品を拾う。これは毛皮かな? ふさふさでもふもふしてる。大きさはハンカチほどだ。それと魔石。


さっき倒したコボルトの毛皮だと思うと少し嫌な気持ちになるが。手触りは気持ちいいのでついさわさわと撫でてしまう...。

ペット欲しくなるなぁ...。どっかに懐いてくる魔物とかいないかな...。できればもふもふのやつで...。


少しの間ドロップした毛皮を撫でて満足したのでアイテム袋に入れる。


「よし、次いくかー。」





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コボルトを倒しつつ適当に歩いてると3階への階段を見つけた。


「やっぱりそんなに広くないなぁ。」

結構すぐ次の階層への階段が見つかる。この調子なら今日で5階まで行けそうだな。


3階への階段を下りていく。0階から1階へ、1階から2階へ。階段を下りて気づいたけど、階段が結構長い。マンションとかなら2階分ぐらい一回で下りてる。

一応階段の終わりまで上から見えるんだけど。2階分もあるから怖い...。

高所恐怖症だときつそうだなぁこれ。


3階への階段を下りきりあたりを見渡す。

「変化無し...か。」


1階や2階と同じ景色だ。代り映えしないなぁ。

ここではどんな魔物が出るのかな? 2階ではコボルトが一匹づつしかでなかったしなぁ。


少し歩くとすぐに魔物が姿を現した。


「ほー。ここからは複数か。」


コボルトが3匹、角の向こうから出てきた。


氷のキューブの結界を作り3匹に当てる。


パキパキパキィ


3匹ともが音を立てて凍っていき、そのまま全身が凍ると光となり消える。後にはドロップ品であろう、ハンカチほどの大きさの毛皮が3枚に魔石が3つ。ドロップ品を拾いアイテム袋に入れる。


結界術がレベルマックスになってから普通に使ってたけど、レベル4の時とはっきりとした違いを感じてきた。

今まで結界術を使うとき、結界を作るときの大きさ、厚さ、効果などひとつひとつ、1から10まで順番に行程を組み立てて使っていた。

よく使う氷の結界なら、結界の大きさ、厚さ、付与する氷の強さ。ひとつひとつ確認しつつ使っていた。

それがレベルマックスになった事で一瞬で作れるようになった。

1から10までの工程をスキップ出来るようになったのだ。


今ではもう氷の結界を出したいを考えてイメージした瞬間出すことが出来る。

レベルマックスになって結界術を理解するって説明に変わった時、頭では理解できていたが。実際に使うと実感がすごい。


森の家に帰ったら色々使い方考えよう...。思い付いたこともあるしなー。




よし、5階のボスまで代り映えしなさそうだし、サクッといっちゃうかー。




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キンッギンッ


『くそっそっちいったぞ!』

『分かってるよ!もっとしっかり押さえておけよな!』


「ん? 誰かが戦ってる音がするな...。」

3階をぷらぷら歩き4階への階段を見つけたのでそのまま下りていき、4階で暫く歩いていると音が聞こえてきた。

音の響き方からして少し遠くのようだ。


あの角の向こうか? 

30メートルほど先に曲がり角があり、その先から聞こえてるようだ。


角まで行き見つからないようにそっとのぞき込む。


「いてっ!何だよ!コボルトのくせに!」

「おい!もっとしっかり押さえろよ!」


「やってるよ!うるせえな!詠唱まだ終わんねえのかよ!早くしてくれよな!」


3人組の冒険者がいた。前衛二人、後衛で詠唱してるやつが一人。

3人とも男で、年齢は若い。


コボルトは3匹いて、さっきから叫んでる男の子が必死に盾を使って押さえようとしてるが横から1匹飛び出して、詠唱してる子に攻撃しようとしてもう一人の男の子が飛び出したコボルトと戦ってる。


「詠唱終わったよ!避けて!...ファイアボール!」

詠唱していた男の子が火の玉を手から飛ばすと盾を構えて戦っていた男の子の方に飛んでいく。


「あぶねっ!」

盾を構えていた男の子が慌てて飛びのくと、その後を火の玉が通り過ぎそのまま2匹のコボルトを巻き込むように火の玉が当たり爆発した。


「あぶねえじゃねえか!もっとうまく狙えよな!」


「そんなこと言ったってしょうがないじゃないか!君が射線にいたんだろ!」


「おい!喧嘩してないでこっち手伝えよ!」


片手剣だけでコボルトを押さえていた男の子が二人の喧嘩をみて声を荒げる。

盾を構えた男の子がコボルトに突撃していき、二人で挟む形になりすぐに決着がつく。

その後はドロップ品を拾い、何か言い合いながらも先を歩いていく。


「楽しそうだなぁ。」

言い合いながらも連携はしっかりしており危なげなくコボルトを倒してた。

一番危なかったのは後ろから飛んできた火の玉ぐらいじゃないだろうか...。


今度ルガード達とどっか行くのが楽しみになってきたな。あんな風に言い合って冒険できる仲間になれるといいな。




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途中で他の冒険者の戦闘を見学するとゆうイベントがあったがその後は問題なく進んでいき、今はもう5階へおりる階段の手前だ。

道中にでてきたコボルトは一応全部倒してきた。毛皮と魔石は全部20セットぐらいかな? 毛皮と魔石以外は出なかった。 罠もないし、隠し部屋もないし。

階層が低いとそんなもんなのかな?


考え事をしながらも5階へと下りていく。

階段を下りきりあたりを見まわすと何人か冒険者がいた。


目の前に大きな扉があり。それに列を作っているようだ。


5階はボスだけがいるのか。楽でいいな。

今までと変わらない幅の通路を歩き並んでる人達の後ろに並ぶ。


何人かこっちを見て訝し気になったがそれだけだ。


まぁこんな格好じゃそりゃ見られるか...。これが終わったら防具買いに行こう。


ゴゴゴゴゴゴォ


列に並んで待っていると、ボスへの大きな扉が音を立てて開いていく。

開いた扉へと冒険者が何人かはいっていき、少しすると扉が閉まっていく。


なるほど? 扉が閉まってる間は誰かが戦ってるってことなのか。んで扉が開いたら組んでる仲間同士で中に入っていくと...。


ふむふむ、なるほどなぁ。

そんなことを考えながら見てる間にもどんどん扉が開き冒険者達が入っていく。


少しすると次は自分の番みたいだ。


ゴゴゴゴゴゴォ


お、扉が開いた。俺の番か。

ルガード3人分はありそうな扉をくぐり中に入っていく。


ゴゴゴゴゴゴォ


後ろで扉が閉まる音が聞こえてくる。


ボス部屋は0階と同じぐらいの広さで、体育館3つ分ぐらいだ。

部屋の中にはまだ何もいない。


どっからボスが出てくるんだ?


あたりを見回していると部屋の中央に光が集まる。

光が収まるとそこには少し大きめのコボルトがいた。今までは中型犬ぐらいだったが。ボスのコボルトは二足歩行で身長2メートルぐらいある。


顔も犬、手足も犬。だけど二足歩行。

何か今までも色々不思議なことはあったが。2メートルの犬が立ってるのも中々不思議な光景だな...。


グルルルゥ ガアアァ!


眺めているとこちらに気づいたボスのコボルトが吠えて突撃してくる。

二足歩行で立ってたのに、突撃するときは4足歩行に変わるらしい。


2足歩行の意味とは...。


取り合えず近づかれるのは嫌なので氷の結界を飛ばす。


パキパキパキィ


今までと同様に当たった個所からボスコボルトの体が凍っていく。


グギャアアァ!


ボスコボルトは大きいからか、凍っていく箇所が多いので叫ぶ余裕があるようだ。

凍った場所を手で叩き壊そうとしているが、そんなんじゃ氷は割れない。


そのままボスコボルトは凍っていき、全身が凍ると光になって消える。

光が消えるとボスコボルトがいた場所に木の箱が落ちている。


「お...? 宝箱か!?」

今日一番テンションが上がる。


やっぱダンジョンと言えば宝箱だよなー!


うっきうきわくわくで宝箱に近づき、箱を見る。

木で出来た宝箱、ゲームとかでもよく見る宝箱だ。大きさは両手で抱えて持ち上げるぐらい。

引っ越しで使う段ボールぐらいの大きさだ。


早速開けるか...罠とか無いよな?

一応少し離れて結界を使って箱を開ける。


箱の上部に結界を引っ掛けて、結界を動かして開ける。


「ふむ、罠は無しっと。」

特になにも起きなかったので箱に近づいて中を見る。


これは...? 大き目のコボルトの毛皮に、何かの瓶?

異世界で瓶に入った何か...。ポーションかな?初めて見たな...。


今まで見なかったけどやっぱりあるんだなぁポーション。5階で出たやつだしこれは初級ポーションってところかな?


コボルトの毛皮はボスの毛皮なのか。バスタオルぐらいの大きさがある。

後なんかちょっともふもふ具合がすごい気がする。


ポーションらしき物と毛皮をアイテム袋に入れる。


ゴゴゴゴゴゴォ


入ってきた入口の反対側の扉が開く。


あっちが6階かな? そういえば転移装置どこにあるんだろう?この先かな?


開いた扉の方へ歩いていきボス部屋から出る。


ゴゴゴゴゴゴォ


後ろで扉が閉まる。ボス部屋から出ると普通のダンジョンの通路になってる。

少し先に右への曲がり角があるのでそちらへ行くと、壁から転移装置と同じ色のクリスタルが飛び出してる。


「ここにあったのか。」

転移装置に近づき手を触れるとマナの流れを感じる。そのままマナを流す。


うむ、繋がったな。これでどうやって0階に行くんだ?


0階の事を考えると頭の中で0階と5階がイメージとして出てくる。

なるほど、これで0階に行きたいと思えば行けるのかな?


頭の中に出てきているイメージの0階に行きたいと念じてマナを流す。すると自分を光が包み込む。


「お、おおう。不安になるなこれ。」

このまま消えたりしないよな?


光はそのまま全身を包み込み視界が真っ白になって10秒ほどすると視界が開ける。


「ここは0階か?」

今朝みた冒険者が確認作業をしてる風景。横を見れば今朝とおった門番がいる入口がみえる。


「帰ってこれたか...。」

初めての経験だったので不安だったが何とか問題なく戻れたようだ。


今の時間が分からないけど。余裕があるなら防具買いに行こう...。

コスプレみたいになるからちょっと抵抗あったけど、ここは異世界なんだ。鎧着てるのが普通なんだし買おう。



よし、そうと決まればさっき手に入れたドロップ品を売ってお店にいくかー!




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