第18話 森での日々。 #3
18.森での日々 #3
魔物が村を襲う騒動もひとまず落ち着き、村の真ん中の広場にみんなで集まって、また宴をしている。
「ケイ殿、改めて。助けていただきありがとうなのじゃ。ケイ殿にこの村の者が助けられるのはこれで2度目ですじゃ。」
「いえ、いいんですよ。困っていたら助けるのは当たり前ですから。」
「ありがとうなのじゃ。」
「ケイさん!助けてくれてありがとう!」
ティナちゃんがにこにこ笑ってる。尻尾もふりふりだ。
それにしてもこの村は柵もないし、そりゃ魔物に襲われるよな...ここに住むのは危険じゃないのかな。
そういえばティナちゃんはどうやって俺のとこまで来たんだ?
「ティナちゃん、どうやって俺のところがわかったの?」
「それだよ!」
ティナちゃんが俺の胸元を指さす。
「これ?」
そういって胸元から首飾りを取り出す。黒い毛でできた。ふさふさの首飾り。
「うん、そう!その首飾りの匂いを辿っていったの!」
ティナちゃんは、えへへと照れている。かわいい。
なるほど。匂いか...。獣人だもんな鼻がいいんだろう。
つまりティナちゃんには俺の居場所がわかるってことか......。このままつけてて平気なんだろうかこれ...。不安になってきた。
しかし、ここで暮らすのは危険なんじゃないのか...。
魔物に襲われるたびにティナちゃんが俺のところまでくるのか?
正直、どうにかする方法はある。だけど、それを勝手に俺が決めてはいけないものだ。
この世界に転生してきて、ずっと一人で過ごしてきた。街にいって顔見知り程度の人は増えたが。密接にかかわることはなかった。
基本俺は、一人が好きだ。誰かに左右されることのない人生、自由に使える時間。
食事にしたって俺一人だったら適当でもいい。
だけど、心のどこかで思ってたんだ。寂しいなって。
ティナちゃんを助けて、この村で料理をごちそうになって。関わってしまった。だから見て見ぬふりができないんだ。
きっとこれからも気になるだろう。村は平和かな?平気かな?何も起きてないかな?って。
だから勇気を出して村長に聞いてみよう。ダメならダメでいいんだ。
「あの、村長。」
「ん?どうかしたのかの、ケイ殿。」
「難しいことは分かってるんですが、考えていたんです。みなさん俺が住んでるとこに来ませんか?」
「む、ケイ殿のところに...?しかしそれは...。」
村長が難しい顔をしている。
「実は俺、少し行ったところに一人で住んでいるんです。今回ティナちゃんが俺に助けを求めに来て、この村の様子をみて思ったんです。俺が一緒に入ればもっと安全なんじゃないかって。俺に力があることは今回で分かってもらえたとおもうんです。どうです?一緒に来ませんか?」
「ふむぅ、しかしケイ殿がワシらを守るばかりで、ケイ殿が得する事がないのじゃ。」
いつのまにか村人達が静かになり、村長と俺の話しに耳を傾けているようだ。
「その......綺麗ごとかもしれませんが。見捨てられないんです。傲慢かもしれまんせが、助けたいと思ったんです。どんな事からも守れるとは言い切れません。ですが、俺の力の及ぶ限りは手を取り合ってみんなで生きていきたいと、思ったんです。」
「正直なんじゃな、ケイ殿は。少し村の者達と話しをしてもいいじゃろうか?」
そういって村長は村人達を集め話しあいを始めた。
ティナちゃんがこちらにやってくる。
「えへへ、ケイさん。私はケイさんについていくから!」
ティナちゃんは笑顔でそう言ってるが。大丈夫だろうか...。
「ケイ殿、お待たせしましたのじゃ。」
村長が話し合いから戻ってきた。その顔は難しい顔をしている。ダメだったかな?
「はい。」
「是非ケイ殿のところへ、行かせてほしいのじゃ。」
「その...。俺がゆうのもなんですが、大丈夫ですか?」
「えぇ、ワシらも気づいておったのじゃ。このままここで暮らしてもよくなることはないだろうじゃと。」
村長は苦しそうにそう言った。
「そうと決まればさっそく移動の準備じゃ!皆の者荷物を纏めるぞぉ!」
俺が返答に困ってると村長はあえて明るく村人達に話し、せっついてる。
村長の気遣いに感謝しないとな...。
「村長、家や荷物、畑も俺のスキルで運びますよ。」
「おぉ!? そんなことが可能なのかの?」
「えぇ、俺のスキルは結界術ってゆうんですけど、それで家や荷物、畑を囲んで運ぶことができます。ここに来るとき飛んできたじゃないですか? それと同じように飛んで運ぶことができます。」
「なるほどのう、それじゃ少し待ってもらえるかの? みんなにその話しをしてくるのじゃ。」
「はい。」
そういって村長は村人達に話しにいった。
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「それでは、いきますね?」
俺は集まった村長やティナちゃんティリアさんに村人のみんなに。振り返り確認を取る。
家と荷物、畑は既に結界で包んでいる。これからみんなを結界で包み空へと飛びあがるところだ。
「うむ、まかせるのじゃ。」
村長がうなずくと他のみんなも同じようにうなずいていく。
「今から結界で包みますが慌てないようにしてください。大丈夫ですから。」
ではいきます。
そういってみんなを結界で包むイメージを念じる。
「飛びます。」
みんなを包んだ結界と、荷物と家、畑を包んだ結界を空へと上げていく。
おぉ。
村人達にどよめきが広がっているが、パニックになってる人はいないようだ。
そのまま俺が住んでいる森の家のほうへ飛んでいく。
しばらく飛んでいると景色を楽しんでる村人達が出てき始めた。
飛ぶ速度は自転車を軽く漕いでるぐらいだ。
森の家が見えてきた。
今更だけど、庭の広さが足りるかな?
足りなければ、結界で木を伐採するか。
森の家の庭に降りて村長や村人達と話し合いながら家や荷物、畑を置いていく。
「この辺でいいですか?」
「あぁ、そこで頼む。」
狐耳の獣人の男性はそういって頷く。
村人達は様々な種類の獣人達だ。
狼、猫、うさぎ、鹿、あとはわからない。動物の種類には詳しくないんだ。
家の庭はもう、村になってる。
「少し狭いかな...?」
家と畑など、けっこういっぱいいっぱいだ。
やっぱり木を伐採するか?
「ケイ殿。」
村長がこちらへやってきた。丁度いい、どうするか話し合いたかったんだ。
「村長、ちょうどよかったです。話したいことがありまして。」
「なんですかの?」
「実は木を伐採して村を拡張しようかと思いまして。どれぐらい広げましょうか?」
「そうじゃのう、たしかに今のままじゃ少し手狭じゃのう。余裕をもって広げるかの?」
「そうですね。今は奥行100の横が100メートルぐらいなので。これでも手狭となるといっそのこと300メートルぐらいまで広げますか?」
今の村は長方形に広がっている。これを円形に300メートルぐらいにするか?
この世界で見た村や街は今のところ円形ばかりだった。
長方形の街とかないのかな? 円形だとなにか得なことがあるんだろうか?
「そうじゃのう。余裕があることにはこしたことはないのじゃ。」
「村長はなにか気になることはありませんか?」
「ふむ、水は確か近くに川があったの? 畑もあるし、後はやはり外壁かの? 木を伐採して村を広げるなら、切った木を村の柵につかえるのじゃ。」
なるほど、俺の水は結界術で出せるが。みんなは川から汲んでくるしかないのか。
結界術でなんとかできないかな? まずは村を広げるのが先か?
なにからするべきか...。
自分の意志でみんなをここに連れてきたんだ。みんながちゃんと暮らせるように、できることはしよう。
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