第17話 森での日々。 #2

17.森での日々 #2








村長が宴の準備をせぇ!と村人達に声をかけてから準備が終わるまでは早かった。

気が付けば料理が並び、村人達が集まり。残すは乾杯の音頭だけとなった。


「今回このお客人のケイ殿がティナをゴブリンから救ってくださった、感謝を込めて乾杯!」

乾杯!とあちこちから聞こえる。


どっか家に入ってご飯食べるだけかとおもったら村人全員いるんじゃないかってぐらいの宴になっていた。

料理は肉の塊を何かの香辛料をかけて焼いた物や、サラダがある。

コップには水が入っていて、お皿とコップは木で、できている。

机は木の板を何枚か並べて繋げた簡素な作りになっている。椅子も木の枝と蔓などを編み込んで作られた物だ。

みた感じ貧乏な村なんじゃないかと思う。


「すみませんな、ケイさん。この程度のもてなししかできなくてのう。」


「いえ、お気持ちだけで十分ですから。」


「あ、あの!」

ティナちゃんと女性が二人でこちらへやってきた。

確かこの人はティナちゃんのお母さんだったかな?先ほど抱き合ってたから多分そう。


「えっとティナちゃんのお母さんですか?」

ティナちゃんのお母さんは黒髪で、犬なのか狼なのか耳が生えている。尻尾もふさふさだ。


「あ、はい!そうです。ティリアといいます。この度は娘を救っていただき。ありがとうございます!」

「ケイさん、助けてくれてありがとう!」

そういってティリアさんとティナちゃんはお辞儀している。


「いえ、ティナちゃんが無事でよかったです。」

ティリアさんとティナちゃんはお礼を言い終わると、宴の席に戻っていった。


それにしても、どうしてこんなところに住んでるんだろう?この辺は危なくないのかな?



「あの山が見えますかな? ワシらはあの山向こうの村から来たもんでのう。」

疑問が顔に出ていたのか村長が話し始めた。


「えぇ、見えます。あの大きな山ですか?」

結構遠くにみえる、富士山より大きいんじゃないかと思われる、連なっている山。あの向こうには別の国があるのかな?


「そうですじゃ。山向こうの村で過ごしていたんじゃが、魔物に村をやられての。生き残った者たちでこちらに逃げてきたんじゃ。」

魔物に村をかぁ。やっぱりあるんだなぁそうゆうの。それにしてもどうして山を越えてこっちまで来たんだろう。

襲われたのはかわいそうだが。向こうの街か村へ逃げればいいのに。


「あの、向こうの街か村へなぜ逃げなかったんですか?」


「あぁ、そうじゃのう。ケイさんは知らんのじゃな。山向こうの国では獣人差別がひどくての。まともに暮らせんのじゃ。 ワシらはそんな国で隠れるように住んでいたんじゃ。だから助けを求めることもできなくてのう。命がけで山を越えてこちらに逃げてきたんじゃ。」

差別か...。こっちの街ではいろんな人種が過ごしていたから、平和な世界だと思っていたが。やっぱりあるんだな。


「それは、大変でしたね...。こちらの国では差別はないと思いますが。街か村へは行かないんですか?」

何かあるんだろうか?


「そうじゃのう。ワシらはずっと少数で暮らしてきておっての。この生活に慣れているのじゃ。街や村へいっても急に別の生活が出来なくての。文字を書ける者も少なくて、街や村へいって仕事に就くことが難しいんじゃ。街や村へいったほうが安全なのはわかっておるが、どうしてもそうできなくての。」


なるほどなぁ。分かっていても動けないか。こうして暮らしていくしかないんだな。

「いろいろあるんですね、軽率な発言でした。すいません。」


「いやいや、気にしなくていいんじゃよ。ワシらも理解しておるからの。こうして暮らしていくしかないんじゃ。」

村長と話してる間にも料理はどんどんなくなっていき、そろそろお開きな感じだ。


「村長、ごちそうさまでした。」


「これぐらいしかできる礼がなくての、満足していただけてるといいんじゃが。」


「十分ですよ。料理美味しかったです。」


「それは、よかったのじゃ。」


「では、そろそろ帰りますね。」

あまり長居すると情がうつってしまいそうだ。


「うむ。今回はうちの村の者を助けていただき感謝する。」

そういって村長は深くお辞儀した。


「ティナちゃんが無事でよかったです。」

それじゃ帰るか。


「あ、あの!」

帰ろうとしたらティナちゃんが声をかけてきた。


「どうかした?」


「これ!受け取ってください、助けてくれたお礼!」

ティナが渡してきたのは黒い毛でつくられた首に下げるネックレスのようだ。

地球で昔流行ったなんとかの尻尾系のアクセサリーみたいな見た目だ。


「ティナ!それは...いいんじゃな?」


「うん!」


 え、なにその意味深な会話。怖い。なんだ?なんなんだ?これは...。

すごくもらいたくなくなってしまった。

まぁいいか。もう会う事もないだろう。素直にもらって帰ろう。善意を無下にはできない。

「ありがとう、ティナちゃん。大事にするよ。」


「う、うん!」

ティナちゃんが照れてる尻尾もふりふりだ。かわいい。

「それじゃ、失礼しました。」

そういって自分を結界で囲み空へ上がっていく。

「ケイ殿ありがとうですじゃー!」

「ケイさんまたねー!」

村人達が口々にお礼を言ってくれる。



ただティナちゃんのまたねーが気になった。




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獣人達の村から帰ってきてゆっくりした日を過ごした。

ティナちゃんからもらったネックレスは首から下げている。貰い物だし、使わないとね?


朝起きてご飯食べて畑の水やりをして、結界で遊んで。たまに魔物を倒しにいったりして。夜になったら寝る。

そうやって10日以上を過ごしたかな? 神様が用意してくれてたパンはなくなった。買いに行かなくては...。


お肉はまだまだある。むしろこれ一人で消化しきれるかな?

高級肉の牛の味は、美味しかったが。地球にいた頃普通のスーパーのお肉しか食べたことがなく。スーパーのお肉よりはおいしいな?ぐらいの感想だった。

もしかしたらこの牛のお肉は地球でゆうところのA5ランクとかゆうお肉かもしれないが。食べたことないので比べることもできない。


後は畑だな。

畑が凄いことになってる、栽培をしたことがない俺でもわかるぐらい異常だ。

どう異常かって?

もう収穫できそうな感じで育ってる。おかしい。この世界ではこれが普通なのか?

まだ畑に種を植えて20日も経ってない。肥料の効果なのかな?


たしか初めての農業の本には種を作る方法も書いてたな?

たしか収穫時期がきても収穫せず、花ができるまで放置するんだったかな?

各野菜を二つほど残して、残りは収穫するか。


ナイフのような刃渡り20センチほどの切れる結界を作る。

後はこれを触らないように動かしながら野菜を収穫していく。

キャベツにレタス、白菜と収穫していき。

残りのじゃがいも。ニンジン。玉ねぎ。ネギ。大根は手で抜いていく。


めちゃめちゃ収穫できたな...。

この間隔で野菜が育つならもう、買う必要ないな...?

畑には各野菜が二つ残ってる、これで種が取れるといいなぁ。


お肉は十分ある、野菜も育てていくことができるのがわかった。

あとはパンとかか?小麦の種もかってくるか?


結局街にいかないとか...はぁ。

パンを食べるの我慢すればいいのか?


パンを食べたくなったら街にいくか...。

それまではゆっくりしよう。




ガサガサ


「ん?」

庭でゆっくりしてると、草むらから音が聞こえる。ゴブリンか?


「ケイさん!」

草むらから飛び出してきたのは黒い髪に黒い耳、黒い尻尾の幼い女の子。

ティナちゃんだった。

どうしてここにいるんだ!?

「ど、どうしたの?」


「助けて!」


!?

「何かあったのか!?」


「む、村がっ、魔物に襲われてるの!」

色々と聞きたいことはあるが、まずは助けにいくか。

「ティナちゃんこっちに、飛んでいくよ。」


「はい!」

ティナちゃんと自分を結界で包み空へ飛ぶ。

この間はゆっくり飛んだが、今回は急いでるので速度を上げて飛ぶ。





 ティナちゃんの村が見えてきた。火の手が上がってるわけではなさそうだ。

急いで近づくと魔物の姿が見えてきた。


ゴブリンだ、ゴブリンが30匹ほどで村を襲おうとしてる。

村にいる男性陣がゴブリンに槍や剣などを構えて膠着状態になっている。


大雑把になるが仕方ない。

ゴブリンと森を巻き込み結界を貼る。


ゴブリンと森を囲んだ結界内に氷の属性付与をした結界を作れるだけ作る。

そして一気に乱雑に氷の結界を動かし森ごとゴブリンを凍らせる。


「グギャァァ!?」

「-----!?」


「な、なんだ!?」

ゴブリンと森を結界で包んで氷の結界で攻撃するまで一瞬だったからか、村人達は混乱している。


村の襲われている場所まで結界で飛んでいき。少し上空で止まる。

そのまま他に魔物がいないか様子をみつつ、村人達に助けにきたことを報告する。

「助けにきました!」


「おぉ!ケイ殿!みんな!ケイ殿が来てくれたぞぉ!」

村人達が盛り上がってるが。まだ他に魔物がいないか気にしなくていいのか...?

とりあえずこれ以上来なさそうだし、降りるか。


集まっていた村人達に近づき、降りて結界を解除する。

「みなさん、大丈夫ですか?」

けが人はいなさそうだが。


「ケイ殿!ありがとうございますじゃ!」

村長が村人達をかき分けやってきた。

「村長、大丈夫でしたか?」


「えぇ、ケイ殿のおかげで誰一人怪我なく無事なのじゃ。」



そっか、誰も怪我がなくてよかった。






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