第11話 街にて。 #2

11.街にて #2







「ふぁーあ」

日がちょうど上り始めたころ、目が覚める。

普通に眠れたな。

森の家にあるベッドのほうが柔らかいが、宿のベッドでも眠ることができた。

それに若い体になったからか、起きたときに体が硬くなって動きにくいってことがなくなってうれしい。

「とりあえず準備するか。」

今日はまず本を読める場所を探そう。



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剣を腰に差し、身だしなみを整えて。準備が終わり食堂へいく。

セレナさんにリーシャちゃんが食堂にいて、厨房のほうでは何か料理を作る音がする。

早起きだな......。


「おはようございます。」


「あぁ、おはよう。」


「おはよー!」


「朝ご飯はどうする? 宿泊代に含まれているからタダだよ。」


「では、お願いします。」


「あいよ、座ってまってな。」

セレナさんは厨房へ行った。リーシャちゃんは青色の髪のツインテールをちょこちょこ動かしお手伝いをしている。

周りをみると、4人ほど人がいたが、みんなリーシャちゃんをみてほっこりしている。

やはり将来は看板娘になるな...。かわいい




「ほら、朝ご飯はこれだよ。」

そういって出されたのは、パンにスクランブルエッグにウィンナーとシンプルな朝食だった。

メニューを聞いてなかったが、何も言われなかったことから、朝は固定メニューなんだろうな。

いただきます。


パンは昨日のと同じだな、どこかのパン屋さんから卸してもらっているのかな?

スクランブルエッグは綺麗な黄色だ。味つけは塩と胡椒のみのようだ。

ウィンナーは皮がパリっとしており、口の中にお肉の味が油と一緒にあふれる、とてもジューシーでおいしい。

ウィンナーは自家製なんだろうか? だとすると食べ比べとかそのうちしたいな。


「うまい。」

やっぱりこの宿の食事は普通のとこよりおいしいんじゃないだろうか?それぐらいおいしい。



「ふぅ、ごちそうさまでした。」

食べ終わるとちょうどセレナさんが通りかかったので、本を読める場所をきこう。

「あ、セレナさん。少しいいですか?」


「ん?なんだい?」


「昨日から聞いてばかりで、申し訳ないんですが。本を読める場所を教えてほしいんです。知りたいことがありまして。」


「気にしないでいいよ。 本を読める場所ねぇ。この宿をでて冒険者ギルドの方向へいってギルドを通り過ぎて、少し行ったところに本屋があるよ。そこなら欲しい物があるんじゃないかい?」


「なるほど、ありがとうございます。」

本屋か、図書館は無い感じかな?

「それじゃぁ出かけるので、これ。鍵渡しときます。」

そういってセレナさんに鍵を渡す。

「あいよ、いってらっしゃい。」


「行ってきます。」




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宿を出て冒険者ギルドのほうへ向かう。

昨日絡まれたから近寄りたくないので急いで通ろう......。


日が昇り始めたころだが。屋台は既に8割ほどが料理を作って売っている。

タレが炭に落ちる匂い、なにかのスープの匂い。

屋台で料理を買ってる冒険者達や一般の人達。人種も様々で見ているだけで楽しい。

人種によって好き嫌いとかやっぱりあるのかな? エルフだと野菜が好きだとか、獣人はお肉が好きだったり。ドワーフはお酒かな?

そんなことを考えながら歩いていく。


そろそろ冒険者ギルドか...いかつい見た目の人が増えてきた。

昨日絡んできた人がいないか周りを見渡しながら急いで通りすぎる。


「はぁ、よかった。いないみたいだな。」

冒険者ギルドを通りすぎ、本屋を目指す。メインの道はお店と屋台が連なっていたが、今いる道は民家が多いようだ。

しばらく歩いていると、本のマークの看板が掛けられている一軒家が見えてきた。外見は普通の家だ。ほんとにここが本屋なのか? なんだろうこのアンダーグラウンド的な雰囲気は。ヤクザとかマフィアが出てきたりしないよな?


恐る恐る本屋の扉を開ける。

「し、失礼します。」

中に入ると確かに本屋だった。

暗いランプの魔道具の光、本がぎっしり詰まった棚がいくつもある。部屋の奥にはカウンターがあり、よぼよぼの白髪のおじいちゃんが本を読みながら座っている。

「ん? お客さんかの?」

よかった、中は普通だった。おじいちゃんもいい人そうだ。

「はい、ほしい本がありまして。農業についての本なのですが。ありますか?」

自分で探すのもいいが、やっぱり餅は餅屋に任せよう。

「農業についてのぅ、ふむ。少し待っておれ。」

そういっておじいちゃんはカウンターからこちらへ出てきて本棚をあさりはじめた。

カウンターでまっとくか。


他に必要な本とかはあるかな? この世界にもラノベみたいな物はあるんだろうか? あとは地図が欲しいけど。地図とかってこうゆうとこだと、軍事的に利用されるから、入手できなかったりするんだよなぁ。簡易な物でもいいからほしいな。

あれこれ考えてる間にも、おじいちゃんは本を何冊かカウンターにおいていってる。


「ふむ、お主の希望にあう本だとこの辺りかの? これが農業の歴史についての本、これは農業の必要性と国との関係とゆう本。これは農業についての大まかな話が書かれている本。」

しまった、もうすこし詳しく話すべきだったか......申し訳ないことをしたな。

「すいません、もっと細かく話すべきでしたね。実は畑で野菜の栽培を始めたくて、それについて詳しく書かれている本があれば欲しいんです。」


「なるほどのぅ? まぁよいか。それならこの本じゃ。」

そういっておじいちゃんが出してきた本には『初めての農業』と書いてある。

ちゃんとあるんだな、本。農業とかって村とかでは当然に行われていて、知識とかは親から子に引き継がれるものだから、本にはなっていないと思っていたので期待はしてなかったんだけどな。

「この本はいくらですか?」


「銀貨20枚じゃ。」

やっぱり本は高いな。

「はい、ではこれで。」


「うむ、確かに銀貨20枚受け取ったのじゃ。他にはないかの?」

うーん。もっといろんな本が欲しかったが残りのお金がもうない。まだ野菜とか雑貨を買いたいしな。

「いえ、これだけでいいです。ありがとうございました。」


「ではの。」


「はい、失礼します。」

本は買えたがどうするか。

本屋を出てこれからどうするかを考える。魔道具屋にも行きたいが、本が思ったよりも高くてほんとに見に行くだけになりそうだ。

宿に戻って本を読んで、買う野菜を決めるか。




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「ただいま帰りました。」

宿に戻り受付にいたセレナさんに声をかける。

「おかえり。ほら、鍵だよ。」


「ありがとうございます、セレナさん無事本買えましたよ。」


「そうかい、そりゃよかったねぇ。今日はもうでかけないのかい?」


「はい、買った本を読もうかと思いまして。」


「なるほどね。もうすぐお昼だけど、食事はどうする?」

そういえばもうお昼か、どうしよう。そんなにお腹減ってないんだよな。

「そうですね。やめておきます。すいませんわざわざゆってくださったのに。」


「別にかまわないさ。」


「それじゃ部屋で本読むので失礼しますね。」


「あぁ。わかったよ。」

セレナさんに挨拶して、部屋へもどる。




「ふぅ、少し休憩してから本読むか。」

アイテム袋の中身の確認をしたり、残りのお金を数えたりして、少し休憩する。




「さて、本を読むか。」

そういってアイテム袋から本を取り出す。

『初めての農業』

この本には育てる野菜によりいろいろな育て方がのっていた。畑の基本、畝の作り方や、水をあげる頻度。肥料は何がいいか、魔物対策になにをするべきか。

一人当たりの食事で使う野菜を育てるための畑の大きさ。おいしい野菜をつくるためにするべき最低限のこと。

様々な事がのっていた。


「この本があれば森の家に戻っても平気そうだな。なんの野菜育てようかな?」

この世界でも朝市とかあるんだろうか? あるならそこにいってこれから旬になる野菜とか調べないとな。 それと一年中育てれる野菜も。 そもそもこの世界に季節ってあるんだろうか?


「そういえば。」

仮の証明書を門番の兵士に返すの忘れてた...。期限は1週間っていってたな?


......?そういえばそもそもこの世界って何日で1週間なんだ...?

この世界の常識についての本も買わないといけないのか...。

まぁ明日門番に返しにいこう。今日はもういいや。それに雑貨屋さんもいかないとな。ミルト商店だっけ、うーん。

なんにしろお金がもうないんだよなぁ。後銀貨9枚に銅貨が4枚か。

ゴブリンちょろっと倒したぐらいじゃ全然ダメなんだなぁ。

今度はもっといろいろ倒してから街に来るか。


あーだこーだ考えていると少し眠ってしまった。目が覚めると夜ごはんの時間になったのか一階から賑やかな声が聞こえる。

お腹もすいたし晩御飯たべるか。




一階に降りるとセレナさんが料理を運んでいるところだった。

「あ、セレナさん。俺にも日替わり定食お願いします。」


「あいよ、座ってまってな。」

丸テーブルは冒険者達でいっぱいだ、やっぱりこの宿人気なんだな? 

厨房に近い位置にカウンターがあるのでそこに座る。

今日の晩御飯はなにかなー、そういえば森の家には調味料がいっぱいあったけど。使い方を知らないんだよな......地球にいた頃はそれなりに料理していたが、この世界でも同じ調味料の使い方していいかわからないし。一度味見するべきか?

あー。思い出した。冷蔵庫そのままにしてきたけど、魔石切れたりしたら中のお肉腐っちゃうな...。そもそもお肉とかアイテム袋に入れればいいのか。冷蔵庫必要ないじゃん。

地球にいた頃とはなにもかも違いすぎて、細かいところでミスしてることが多いなぁ。気をつけないとな。

「ほら、日替わり定食だよ。銅貨6枚だよ。」

考え事をしてるとセレナさんが料理を持ってきてくれた。

「ありがとうございます。ではこれで。」

そういって銀貨1枚を渡す。

「あいよ、これおつりね。」

セレナさんはエプロンのポケットから銅貨4枚だして渡してきた。

これで残り銀貨8枚に銅貨8枚か。

とりあえずご飯を食べよう。


今日の料理はハンバーグだ、ニンジンのような野菜に芋が添えられている。

パンは相変わらず柔らかそうだ。

ハンバーグをフォークで割いてみる、肉汁がぶわっっとあふれてすごい。

うまい。

料理のレベルが高いなぁ。そういえば神様がいたあの部屋にたまに魂がきて転生か輪廻に戻るかって話しをしていたが。今までにきた転生者がこういったところで技術の進歩を促しているんだろうか?

今も俺の他にいるのかな?転生者。


料理を食べながら色々考えていると、いつの間にか残り一口だった。

「今回も美味しかったな。」

ごちそうさまでした。 このまま置いておけばいいんだったっけ? 一応セレナさんに声かけるか。

セレナさんはっと、いたいた。


「セレナさん。料理美味しかったです、ごちそうさまでした。」


「あぁ。わざわざありがとね。旦那が喜ぶよ。」

そういってセレナさんは少し照れてる。

「今日もお湯いるかい?」


「はい、お願いします。」


「あいよ、後で持ってくよ。」


「はい、それじゃぁ部屋に戻りますね。」

そういって部屋に戻る。



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「明日は朝市があれば行ってみて、そのあと仮の証明書を返しにいこう。」

部屋に戻り、照明代わりの結界を作り、セレナさんがお湯を持ってきてくれてから、体を拭き。お湯の処理が終わってベッドで寝転がっている。


街でやることが多すぎて、3泊じゃ全然足りないな。でもまた絡まれたくないからなぁ、軽くトラウマになっている。


今日はもう寝よう。照明結界を消し、目を閉じる。

おやすみなさい。明日も頑張れ俺。








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