第10話 街にて。

10.街にて







「なんだぁ? おめぇはよぉ。」

やべぇ、めっちゃ絡まれてる。無視したほうがいいのかな? 対応しないとやばいのかな?

ど、どうしよう?てかでかすぎだろこの人なんで3メートルぐらいあるんだよ。


「あぁ?なんか言えよおい。」

ま、まわりの人に助けを求めよう!


周りを見渡すが、みんな様子をみるだけで何かをいってくる感じはしない。

なんだこれ、どうすればいいんだ。この人の立場がわからないっ!

この人は弱いものいじめが好きな人なのか、親切心で声をかけてる人なのか。

この人は冒険者としてどのぐらいの実力なんだ!?

何もかもわからない、どうすればいいんだ......。


「お待たせしました。こちらがギルドカードになります。」

受付嬢さんがきた!天使!

「はい!ありがとうございます!失礼します!」

ギルドカードを慌てて取り、ダッシュで逃げる。

「あっ、まておめぇ!」

なんか聞こえるが気にしない、俺はテンプレなんて、どうなるかわからないから関わりたくないんだ!




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「なんとか逃げられたか。」

素材とか売りたかったのに...これじゃぁ宿にも泊まれない。そのへんの屋台でどこか売るとこないか聞くか?

屋台をみて話しやすそうな人を探す。

お? あの人に聞いてみるか。30代ぐらいの少しふくよかな人族のお姉さんがいた。


「あの、すみません。」


「いらっしゃい。一つ銅貨2枚だよ。」

何かのお肉を串に刺して売っている。うまそうだ...タレっぽいのがかかっていてそれが炭におちていい香りがしている。

「食べたいんですが。今お金がなくて、魔物の素材を売りたいんですけど、どこか知りませんか?」


「おや?魔物の素材かい?冒険者ギルドで買い取りしてるはずだけど?」


「いえ、あの。実は、冒険者ギルドで絡まれまして。逃げてきました。」


「あははっ! 逃げてきたのかい、情けないねぇ。そうゆうことならこの道を少し行ったところにある教会を右に曲がると、ミルト商店ってゆうお店があるんだけどそこで買取してるから、そこにいくといいよ。」


「ありがとうございます。お金ができたら次は買いにきますね。」


「あぁ、期待しないで待ってるよ。」

そういってニヤリと笑った。



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「たしかここを曲がるんだよな。」

屋台から道なりにいくと教会があり。そこを右に曲がる。

この先にあるのかな? 日も完全に落ちて道に連なる街灯の明かりがつき始めたころ、お店が見えてきた。


大きな看板でミルト商店と書いてある。大きさは3階建てで、そこそこの大きさのコンビニぐらいのでかさがある。

なんだろう、こんなとこに入っても大丈夫かな?場違いじゃないかな?買い取ってもらえるだろうか。

しょうがない、いくか。


扉を開けて入る。

中は入ってすぐのところにレジがあり、オレンジ色の照明が淡く光っていて落ち着いている雰囲気だ。

ところ狭しと商品が並んでいて乱雑にみえるが、ちゃんと種類別に分かれているのがわかる。


「いらっしゃいませ、ご用件をお伺いします。」

レジのほうをみてたら声をかけられた、レジの人は猫耳の獣人だ。髪は赤く可愛らしい感じの人だ。

語尾に『にゃ』とかつけないんだな...。

「あの、魔物の素材を買い取ってほしいんですが、可能ですか?」


「はい、素材の買取ですね。なんの素材でしょう?」


「えっと、ゴブリンの魔石と爪と牙、それとホブゴブリンの魔石と爪と牙です。」


「わかりました。それではこちらにお出しください。」

そういって猫獣人のお姉さんは底が浅い葉かなにかで編まれたかごを6つ出してきた。

「分けて入れればいいですか?」


「はい。」


それぞれのかごに魔石と爪と牙を入れていく。

「これで全部です。」


「わかりました。少々お待ちください。」

そういってお姉さんはモノクルをかけて素材を調べ始めた。

もしかして。それは鑑定の魔道具なのか...?

魔道具屋にいったら調べてみよう。



「お待たせしました。」

待ってる間置かれている商品を見ていると、鑑定が終わったようだ。

「はい。」


「ゴブリンの魔石と爪と牙が42個づつ。ホブゴブリンの魔石と爪と牙がひとつづつ。すべて売却でよろしいですか?」


「はい。」


「では、すべて合わせて銀貨45枚になります。内訳を聞かれますか?」


「はい、一応教えてください。」


「わかりました、それでは。 ゴブリンの魔石、爪、牙の三つセットで銀貨1枚になります。42セットありましたので42銀貨。ホブゴブリンの素材はセットで3銀貨になりますので。あわせて銀貨45枚になります。ご質問はありますでしょうか?」


「いえ、丁寧な説明ありがとうございました。」


「ご利用ありがとうございました。」

そういってお姉さんはペコリとお辞儀をしてくれた。猫耳が揺れてすごく触りたい。

「それじゃぁ、ありがとうございました。」

そういって俺はお辞儀をし、お店から出る。


なにもなく普通に買取してもらえてよかった。きっとゴブリンとかって弱い魔物で素材が頻繁にはいるだろうに、なにか使い道があるのかな? 冒険者ギルドが素材買取独占してるとかも、ないんだな。

あ、さっきの人におすすめの宿とか聞けばよかった。また屋台の人にきくか。


来た道を戻り、歩いていく。

さきほどの屋台が見えてきたが、ちょうど店じまいの最中の用だ。


「あの、すいません。」


「おや? またあんたかい。買取はどうしたんだい?」


「さっきぶりです、無事買取はしていただきました、お店を教えてくれてありがとうございました。」


「そうかい、そりゃよかったねぇ。 それで、どうしたんだい?」


「はい、買取してもらってお金が出来たので買おうとおもって戻ってきたんですが......間に合わなかったみたいですね。」


「あぁ、そうだったんだね。そりゃすまなかったね、いつもだいたいこの時間に店じまいしちゃうのさ。」

晩御飯として買っていく人が落ち着けば、店じまいする感じか。

「あの、それで実はおすすめの宿があれば聞きたくて。何度もすいません。」


「宿ねぇ、構わないよ。ついてきな。」


「いえ、あの。場所を教えてくれるだけでいいんですが。」


「わかってるよ。私の宿に行くんだよ。」


「お姉さんの宿ですか?」


「そうだよ、それとお姉さんだなんて気をつかうなんてやめな。私の名前はセレナだよ。」


「セレナさんですか、わかりました。俺の名前はケイって言います。よろしくお願いします。」


「それじゃ、ついてきな。」

そういってセレナさんは屋台に布をかけて店じまいを終えた。





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「ここだよ。」

そこには3階建ての木造の宿があった。看板には『豊穣の宿』と書かれている。

「入りな。」


「はい。」

セレナさんが扉を開けて入る。

「帰ったよ。」

宿の中にはいると目の前に受付がありそこから右には食堂。左には階段と廊下が続いているようだ。

前から小さな女の子が走ってきて、セレナさんに飛びついた。

「お帰りなさい!ママ!」

「ただいま、リーシャ。」

そういってセレナさんは娘さんの頭を撫でている。


「こっちの人はお客さん?」

「そうだよ、宿泊名簿に記帳してもらいな。私は食堂のほうにいくからね。」

「はーい。」

小さな女の子がこちらにやってくる。歳は8才ぐらいだろうか?

「お客さん!受付まできて!こっちこっち!」

ピンクのワンピースを揺らしながら受付の向こうで手を振りぴょんぴょんジャンプしてる。

カワイイ。


「はい、これ!ここに名前を書いてね!」

宿泊名簿に名前を書く。

「お名前は、ケイさんってゆうのね!よろしくね!ケイさん!」


「はい、よろしくお願いします。」


「それで何拍泊まるんだい?」

食堂の奥からセレナさんがやってきた。

「一泊いくらですか?」


「一泊銀貨5枚だよ。」

5枚か、一泊ゴブリン5匹分だと思うと安いな。

「それじゃぁ3泊おねがいします。」

セレナさんに銀貨15枚渡す。

「ちゃんと15枚あるね。食事はどうする?日替わり定食なら銅貨6枚だよ。」

「じゃぁ、日替わり定食で。」

銀貨1枚を渡す。

「あいよ、これおつりね、銅貨4枚。それじゃ適当に座ってまってな。リーシャ、パパに注文言ってきな。」

「はーい。」

リーシャが返事をし、日替わり定食ひとつ~と言いながら厨房だと思われる場所へ入っていった。


食堂に入り適当なところに座る。丸テーブルは基本4人、詰めれば6人ぐらいは座れそうな大きさだ。周りには冒険者であろう人達が沢山いる。そんな中一人で座ってる俺。大丈夫かなこれ。


お酒っぽいものを飲みながら今日狩った魔物の話しや。愚痴を言いあってる。

地球にある居酒屋と変わらないな...。そんなことを考えていると厨房のほうからリーシャがご飯を乗せたお皿を運んできてくれた。少し危なっかしいけど、それがかわいい。


「はい!どうぞ!日替わり定食です!エールが欲しければ一杯銅貨3枚です!」

「運んでくれてありがとう。エールはいらないかな。」

定食には水が付いているようだ。

「はーい。水がなくなったら教えてね~。」

リーシャは元気に返事をして。戻っていった。

将来は看板娘になるのかな? 


とりあえず食事だ。定食は何かの肉のステーキにチーズみたいな物がかけられていてジャガイモっぽい芋。葉っぱの野菜も添えられている。片手で持てるほどの大きさのパンが二つ、かごに入ってる。

うまそうだ。いただきます。

うん、うん。

今まで森の家で食べてたのはなんだったのか。ちゃんとした料理ってここまでおいしいのか...。

お肉はフォークで刺すとかたすぎず、柔らかすぎずちょうどいい触感が返ってくる。

口に含むとステーキの油が口の中に広がり臭みも全くない。味は豚肉に似ているだろうか? 味付けも塩だけではなく。少しピリッとする香辛料が含まれたソースがかかっている。チーズもいいアクセントになっている。


ジャガイモっぽいものはパサつかず、少ししっとりしていて。中まで十分火が通っている。味付けは塩のみだが芋本来の味がして、十分おいしい。


野菜はレタスっぽく、シャキシャキしていて。何かよくわからないドレッシングがかかっている。マヨネーズに味が近い。


パンはよくある硬いパンかとおもったが、白パンと呼ばれる柔らかいパンのようだ。ステーキと一緒に食べるとパンがステーキの油を吸っておいしい。


水は普通の水だな。うん。


「うまい。」

つい、呟いてしまう。

食べながら考える。


ステーキにかかってるチーズやソース、野菜のドレッシング。

食文化は進んでいるようだ。なんだろう料理大会とかあるのかな?


考え事をしながらも、食事を食べているとあっという間に食べ終わってしまった。

美味しかったな。明日もここで食べたいが。街にはここよりおいしいところがあるんだろうか? まさかセレナさんに聞くわけにもいかないしな。

あなたの宿の食事より、おいしいところを教えてください。

なんていった瞬間殴り飛ばされそうだ。


「ふぅ、ごちそうさまでした。」

食べ終わりセレナさんを探す。厨房のほうかな? お皿を持ち厨房のほうへ向かう。

「セレナさん。ごちそうさまでした!」


「ん? なんだいあんたここまで持ってきてくれたのかい? テーブルに置いておけば片づけたのに。」


「あー、そうだったんですね。すいません。宿で食事したことがなくて。」


「初めてなんて珍しいね。まぁわかったよ。それじゃ部屋へ案内しようか。ついてきな。」

セレナさんはそういってエプロンで手をふくと、階段のほうへ歩き出した。厨房の奥には男性がみえる。あれが旦那さんかな?

階段をあがり2階についた。セレナさんはそのまま奥へいき。扉の前にたつとこちらを振り返る。

「ここだよ、205号室。これが鍵だよ、宿をでるときは受付で鍵を返しておくれ。」


「はい。」


「体を拭くならお湯をもってくるけど、どうする?」


「じゃぁお湯下さい。」

さすがにお風呂まではないか。

「あいよ、少しまってな。ちなみにお湯はタダだからね。起きてるんだよ?」


「はい。」

読んだ漫画ではお湯は有料だったが、ここではタダか。いいサービスだ。それともあれかな?かまどの火がまだ落ちてないから、タダなのかな。

そんなことを考えていると、セレナさんは下に降りて行った。

部屋の中にはいると、6畳ほどの広さに一人用ベッドが壁際にあった。窓は一応あるみたいだが。ガラスではなくて木の扉になっている。

「寝るだけの部屋か。」

ベッドは少し硬く、シーツは少しざらっとしているが気にはならない程度だろう。


コンコン

「起きてるかい?お湯を持ってきたよ。」


「ありがとうございます。使ったお湯はどうすればいいですか?」


「窓の外に用水路があるから、そこへ捨てな。桶は外に出しておいてくれれば片づけるから。」

窓の外へ投げ捨てるのか...ワイルドだな...

「わかりました。」

それじゃぁね。といいセレナさんは去っていった。


桶の大きさはお風呂でつかう桶ぐらいのサイズだ。

あ、洗濯物はどうしよう?何も言われなかったってことは宿ではそうゆうサービスはやってないってことかな? 明日聞いてみよう。

ってゆうかタオルがなかった。森の家では備え付けのがあるから。なにも考えてなかった...シャツで代用するか...。買う物が増えたな...。


お湯で体を拭き、窓の外へ残ったお湯を捨てる。

ベッドに寝転がり明日の事を考える。

本が読めるとこを探して、魔道具屋もいきたい。タオルも必要だから雑貨屋にいこう。ミルト商店でいいかな?雑貨屋っぽかったし。ほかに店を知らない。

明日セレナさんに聞いてみよう。他に聞ける人いないし。




おやすみなさい。頑張れ明日の俺。








名前:ケイ   15歳

LV 7

HP41/41 MP66/66

体:21

力:14

魔:32

守:11

速:20



スキル 言語理解  結界術Lv3






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